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佐久間が練習しようと言ってきた時は一瞬驚いたが、佐久間がなぜ誘ってきたかなんて不動には簡単に分かってしまった。

(アイツ、俺らが一緒にいるのが嫌なんだな)

不動ははっきり言って下らないと思った。鬼道は必殺技を完成させるのに必要なだけであり恋愛感情などない。勿論鬼道は優秀な選手だと思っているし実力も認めている。だからこそ協力してもらっているのだ。その気持ちを恋愛として見て嫉妬する佐久間があまりにも馬鹿馬鹿しかった。自分が誰がを好きになるはずなんかないのだから。そう確信している不動は当然誘いを断るつもりでいた。ところが鬼道が来たのだ。

「佐久間…悪いが今日も不動と練習させてほしいんだ」

お前もか。
不動は今日こそ必殺技を完成させようと思っていたが、完全に冷めてしまった。なにせすれ違いカップルの下らない嫉妬に巻き込まれたのだからやる気なんて起きるはずもない。けれど、ただ巻き込まれるのはごめんなので今日はこのカップルに軽くひびでも入れてやろうなんて思い佐久間の誘いを受けた。

もう暗くなってしまったグラウンドに二人で残ったものの、お互い練習する気持ちもないのでそのまま時間だけが過ぎる。
するとベンチに座っていた佐久間が気まずそうに口を開いた。

「不動…練習しないのか?」
「お前だって練習する気ないんだろ?俺と鬼道クンが一緒に練習するのが気に入らない事くらいわかってんだよ」

「………。」

言い返す言葉が見つからず、佐久間は黙って俯いてしまう。不動は沈黙に耐えきれなくなり、以前から気になっていた事を聞いた。

「お前さぁ、俺のこと許した訳?」

佐久間は不動からそんなことを聞かれるなんて思いもしなかったので一瞬言葉に詰まった。

「…もしかして昔のこと気にしてるのか?」

「ばーか。んなわけねぇだろ。ただ聞いてみたくなっただけだ」

「そうか……」

「で、どうなんだよ」

「負傷したのは自業自得だと思ってる……。だから不動のせいじゃない」

ずっと恨まれていると思っていた不動には意外な言葉だった。

「ヘー、てっきりそれでずーっと恨んでんのかと思った」

「確かに酷い目にはあったけど、あったからこそ気付いたこともたくさんあったんだ。だから俺はむしろ通るべき道だったと思ってる」

まぁ信用してなかったのは事実だけどな。そう言って佐久間は笑った。
変わったな。不動はそう思った。今の佐久間からは以前のような弱さを全く感じないのだ。きっとあれからたくさんの事を学び、努力し成長してきたのだろう。そんなことを考えていると、佐久間が再び口を開いた。

「不動って思ってたよりいいやつなのかもな。これを機に信じてみるよ」

「おいおい、そんな簡単に信じちゃっていいのかよ」

「今話をしたら分かったからいい。前に鬼道に言われたんだ。『苦手だと思ってたやつも、話すことで意外に仲良くなれたりする』って」

鬼道が言ったことには従順なんだな。そう思うと何故か苦しくなった。

「お前さ、そんなに鬼道クンが好きなのか?」

「ああ、好きだ」

予想通りの答え。すると今度は佐久間から質問がきた。

「不動も…その、鬼道のことが好きなんだろ?」

「バーカ、俺は恋愛なんてものには興味ないんでね」

「そうか…良かった。鬼道、最近不動と仲良いから心配してたんだ。まぁどうであれ鬼道は俺のことなんてもうなんとも思ってないだろうけど」

佐久間が少し寂しげに言う。ついで言うと鬼道クン、お前の事好きだぜ。そう言ってやれば佐久間は喜ぶだろう。だが言いたくなかった。理由は自分でも分からない。

「でも、いつかもう一度振り向いてもらいたい。俺はサッカーも恋愛も諦めたくないんだ」

そう言って遠くの一点を見つめる佐久間はとても綺麗だった。そんな佐久間を見て、不動は今までに感じたことのない気持ちに戸惑いを感じた。
この状況で緊張するのだ。もともとあまり緊張するということが少なく、大事な試合の時にたまになるくらいなのに、今佐久間と会話をしていただけで緊張している。前に鬼道にペンダントの話をされた時の緊張とも感じ方が違う。これがなんなのかまったく分からない。考えているうちに佐久間に戻ろうと言われ宿舎に戻ったが、佐久間と別れた後も緊張が続き、ますます不動を悩ませた。




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