消えない過去




世宇子に破れ、鬼道には見捨てられ、精神的にボロボロになっていた佐久間は不動に誘われて真帝国学園に入り、あの必殺技の特訓に励んだ。しかし、凄まじい疲労と激痛を伴う練習は想像を絶する苦しみで完成には時間がかかった。

「ほら早く立てよ。そんなんでへばってたらいつまでたっても完成しねぇじゃねぇか」

倒れてしまった佐久間を乱暴に起こす。しかし立つこすら困難になってしまっていた佐久間は再び倒れてしまう。

「お前いい加減にしろよ」

不動はそう言うと倒れた佐久間を思い切り蹴った。

「うっ…やめろ…不動」

「なに弱者が偉そうな口叩いてんだ。強くなりてぇならさっさと必殺技を完成させるんだな」

なにか言いたげな目をした佐久間を見ると、首になにか着けているのが見えた。
「お前なに着けてんだよ」

聞くと同時に不動は倒れている佐久間の上に乗っかった。

「やめろ!不動!!」

佐久間は必死に抵抗しようとするが、練習で疲れが蓄積された身体には、抵抗する力なんて残っていなかった。
そして不動は佐久間の首に下げてあったペンダントを取り出した。

「触るな!!」

「別にただ見てるだけだろ〜そんなに怖ぇ顔すんなよ………?なんだこれ?」

ペンダントには長方形でシルバーの飾りがついていて、そしてそれには英語で書かれたメッセージと、鬼道の名前が彫ってあった。メッセージは難しい英文で書いてあったので読めなかったが、どうみても恋人からもらうような品だった。

「返せ…返せ不動!それは特別なものなんだ」

鬼道からもらったペンダント。それは佐久間の宝物だった。





まだ帝国が平和だった頃



「鬼道、今日は何の日か知ってるか?」

「今日?今日は数学の小テストがあるな」

「えっ…」

「ハハハ、冗談だ、今日はお前の誕生日だろ?プレゼントもちゃんと用意してある。佐久間、少し目を閉じろ」
言われた通りにすると、首に違和感を感じた。

「よしっ、目を開けてもいいぞ」

目を開けると、ペンダントが着けてあるのが分かった。

「ハッピーバースデー佐久間。これからもよろしくな」

「鬼道ー!」

佐久間は鬼道に抱きついた。

「先輩〜また鬼道先輩と佐久間先輩がいちゃついてます〜」

「二人とも朝練からいちゃつくな、やめろ」

成神と寺門に突っ込まれたが、佐久間は全く気にならないくらい幸せだった。

それからというものの、佐久間はそのペンダントを肌身離さず持っていた。練習中は勿論、アクセサリー類の装着が禁止という校則を破って、制服のしたに隠すように着けていた。
それくらい大事だった。




――――――――





「ヘー…特別なものね〜。まぁそれをくれた鬼道はお前を捨てたけどな」

「黙れっ!鬼道は俺を捨てたんじゃない。」

「お前この期に及んでまだそんなこと言ってんのか?じゃあなんでお前はここにいて必殺技練習してんだよ」

「そ、それは………」

「こんなもん着けてたってどうしよもねぇんだよ」

そういうと不動はペンダントを放り投げた。

「なにするんだ不動!!」

佐久間は取りに行こうと体を起こすが、不動に再び押し倒される。

「お前にはこっちの方がお似合いだぜ」

そういうと不動はポケットからエイリア石のついたペンダントを取り出した。

「これやるからよ、鬼道なんかさっさと忘れちまえ」

エイリア石の光によって佐久間は意識を失った。

意識が戻った時には、もう鬼道の事なんてどうでもよくなってしまい、あのペンダントもどうなったのかなんて知る気もなかった。
そして今も有りかは分からない。
不動とは代表入りしてから一言も喋っていない。どうしても昔の事を思い出してしまうのだ。チームのためにも苦手意識くらいはなくしたいと思う。それでも近づくと警戒してしまうし、話しかけられたら敵意を向けてしまう気がしてならない。せめてなにか切っ掛けがあればななんて思ったりしていた。


そうしていくうちに時は過ぎていった。




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