はじまり




アジア大会が終わり世界進出が決まった時、佐久間は代表に選ばれた。色々トラブルのあった帝国が漸く落ち着いてきたところだったので、少し戸惑いはあったものの、仲間が背中を押してくれたので決心が着いたのだった。

「行ってこい佐久間!」

「お前ならできる」

「先輩、俺らの分まで頑張って下さいよ」

そう言って快く送り出してくれた。
それでも佐久間は帝国の仲間には迷惑かけてばっかりだなと思ってしまう。
二度とサッカーはできないと告げられ絶望していた時も、辛いリハビリの最中も支えてくれたのは帝国の仲間だった。みんなの思いを無駄にしないことを誓い、メンバーと共にライオコット島へ向かった。

宿舎に着くと早速ケータイを開き、電話をかける。源田に旅立つ前日言われたのだ。

お前は独りで抱えすぎだ。なんかあったら連絡しろ、勿論元気なときも暇なら電話くれよ、と。

「もしも〜し?源田、辺見たちもいるか?」

「ああいるぞ。佐久間は今着いたところか?」

「そう、今宿舎。思ったより広かった」

「おっ!?もしもし佐久間元気か?鬼道さんとは仲良くやってんのか〜」

「デコ見の声聞いてたら元気なくなった」

「おいこら!」

「まぁまぁ辺見。そうだ、チームのメンバーとは上手くいってるか?」

「ん……まぁちゃんとやってけそうかな」

「そうかそうか、お前は人見知りなんだから早くチームに馴染めよ。んじゃ、そろそろ切るな。またなんかあったら連絡しろよ〜」

佐久間は分かったと答えてケータイを切った。

佐久間は源田たちに嘘をついてしまった。一つは帝国にいた時恋人だった鬼道の事。鬼道とはどうしても距離ができてしまい、以前のようには付き合えなくなってしまった。佐久間はまだ好きではあるが、『付き合ってます』なんて否定された時の事を考えると口が裂けても言えない。源田たちはまだ付き合ってると思っているので、言わなくちゃとは思うのだが、心のどこかでそれを認めたくない自分がいてどうしても言い出せない。
もう一つはチームの事。
勿論チームのメンバーは鬼道や円堂や風丸などいい人ばかりで、人見知りな自分でも上手くやっていけそうだと思った。あの男、つまり不動明王ただひとりを除いては…………。




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