sanction



初めてこの症状が出たのは鬼道が雷門に転校したときだった。

源田からそれを聞かされ、無力な自分を毎日ように責め続けた。やがて眠れなくなり、辛い時間だけが増えていく。そんな苦しみから逃れたくて、衝動的に手首を切った。すると不思議なくらい気分が楽になる。自分に嫌気が指していた佐久間にとっては自傷行為が最適な制裁となっていた。それからというものの、自分を責める度に手首を切り、自分に罰を与えた。

真帝国に入った時には切らなくなったものの、腕は痛々しい程に傷だらけだった。けれど佐久間はこの傷の数は、自分の罪の数だと思い、強くなりたいという気持ちを高めていった。


源田はこの傷を見ても、佐久間の心情を察し何も言わなかった……というより言えなかった。
彼にはやめさせる術はなかったし、何より源田自身精神的に参っていた。

不動は特に興味もないようで、事情は聞いてこなかった。




そして悪夢から醒めた時…



相変わらず傷は残っていて、退院したあとも長袖の服は手放せなかったが、帝国のみんなも事情は分かったようで、さりげなく気遣ってくれた。

傷も早く治したくて病院でちゃんと治療し、やがて普通にしていれば分からない程に傷は薄くなっていた。そんな時、代表に選ばれたのだ。ライオコット島にはその時使ったカッターナイフを持っていった。それは昔の愚かな自分を忘れないようにと、戒めの意味で。

その時はまさか、また使うなんて思いもしなかった。それなのに再びしてしまったのだった。


朝起きて自分の手首を見ると赤い筋が一本入っていた。この程度なら誰にも分からないが、やはり馬鹿なことをしたと思う。


(もうやめよう)



佐久間は今日だけにしておこうと心に決めたのだった。




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