再発



チームKとの戦いはオルフェウスの勝利で幕を閉じ、不動たちは新しい必殺技を完成させた。それにしてもずっと二人で試行錯誤していた技の欠点を一瞬で見抜いた佐久間は流石としか言いようがなかった。やはり鬼道の参謀として、帝国の主力選手として活躍していただけの事はある。

頭良いよな〜なんて思いながら佐久間を見ていると、試合中とは別人のようにあどけない顔をして喜んでいた。


「この三人で連携技できるなんて思ってもみなかったな。しかもペンギンだぞ、ペンギン。…って不動聞いてんのか?」


「は?鬼道クンと喋ってんじゃねぇのかよ」


「お前とも喋ってた」


いつの間にか話の輪に入れられていたが悪い気はしなかった。不動も実際佐久間との連携技ができて嬉しく思っていたのだ。

オルフェウスのメンバーにはお礼を言われ、デモーニオも昨日の行いを謝罪しにきた。こうしてこの件は無事解決するはずだった。



「君たち、こんなところにいて良いのかね?」


そう言って影山は用意されたモニター画面を指差した。そこには日本代表vsアルゼンチン代表の試合が行われようとしていた。


「試合は明日だろ?…まさか影山!またお前の仕業か!!」


「果たしてお前ら抜きでどこまで戦えるか」


時間を見るとギリギリ間に合いそうな気もする。三人は走り出した。







――――――――






「船…行っちゃったな」


「ああ」


あれだけ走ったのに、と三人は落胆した。恐らく先程の渋滞がまずかったのだろう。落ち込む三人の横でついてきたフィディオが肩をポンと叩く。


「大丈夫だよ!日本代表には守がいるから」


いつから名前を呼ぶような仲になったんだよと突っ込みをいれる。


「元はと言えばてめえらの手助けしてたせいじゃねぇか!!」


「いいじゃないか。不動も仲間を助けられたし、バスをただ乗りせずに済んだし」


「まだそのネタを引きずるのか…」


これ以上言っても無駄な事を悟った不動は何も言わなかった。すると横で豪炎寺に事情を話していた鬼道が声を上げた。


「どうした鬼道」


「豪炎寺の話しによると円堂が急に高熱出して寝込んでいて監督も不在らしい」


「それ、かなりまずいよな」


「なんでこんな時に災難が続くんだよ」


「守が熱!?それは大変だ」


「うるせーお前は黙ってろ!!」


そんなこんなで四人は試合を見ているしかなかった。



―――――――




「すまなかった」


「仕方ないよ。俺たちの方こそ勝てなくてごめん」


合流して早々に謝り、明日からまた頑張ることを皆誓ったのであった。




―――――




「鬼道」


豪炎寺の声がして、廊下を歩いていた佐久間は反射的に隠れてしまった。


「どうした豪炎寺」


「あ、いやお前が影山の事で悩んでると思ったからさ。いつでも相談に乗るから溜めるなよ」


「ありがとな、豪炎寺」


何気ない会話だった。それなのに佐久間の中で何かが変わってしまった。抑えたはずの感情が再び表れる。


(止めろ)


豪炎寺が憎い。


(鬼道に近づくな)


「佐久間?お前こんなとこで何やってんだ?」


いきなり声を掛けられ振り返ってみると不動がいた。


「別に何も…」


「なんかすっげー怖ぇ顔してたけどなんかあったか?」


「何でもない。大丈夫だ」


佐久間は精一杯の笑顔を作り、その場から去った。


自室に入った頃には気持ちが落ち着いていて、さっきまでの不安定さが不思議に思えてしまう。


(気のせいみたいだな。なら大丈夫だ)

佐久間はほっと胸を撫で下ろし、眠りについた。

しかし、眠っていた感情が徐々に目醒めていることは本人にも分からなかった。





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