give&take!



佐久間を助けるため、イタリアエリアに向かった不動と鬼道は、発車寸前のバスを見つけて慌てて飛び乗った。乗ったところまでは良かったが、鬼道は重要なことに気が付いた。


「なぁ不動。バス代持ってるよな?」


「そんなもの持ってるわけねぇじゃん。鬼道クンが持ってんだろ?」


「いや、俺も持ってない…」


「……………じゃあこれってただ乗りだよな」


「そうだな」


「俺たちかなりまずいよな」

「ああ」


「…………………。」


どうするんだよとバスの中で言い争っていると終点のイタリアエリアに着いてしまった。二人は覚悟を決めた。


「あの、運転手さん」


「はい?」


「すいません、俺たちお金ないんです」


そう言うと運転手はかなり困惑していた。


「困りますよお客さん!お金はちゃんと払ってもらわないと」


払うお金がないと言ったが当然納得してくれない。こんなところで時間を取られてる場合じゃないのにと二人は焦っていた。すると


「どうしたんですか?」


とバス停の前で不思議そうにこちらを見ていた男がいた。


「アイツは確か……」


「フィディオだ!!」


流石にオルフェウスのキャプテンのことくらいは知っている。その声に反応してフィディオは二人の方を見た。


「君たちは確か日本代表だよね。どうしたんだい?」


「ちょっとイタリアエリアに用があってな、それでバスに乗ったんだがお金を持ってなくて…」


後々戦う相手にこんなところを見られ、あまりにも情けなくて二人とも俯いてしまった。


「バス代がないのか。俺、少しだったら持ってるから代わりに払うよ。」


そう言ってフィディオは運転手にお金を払った。どうやら無事に足りたようでバスは去っていった。


「ありがとう。お陰で助かった」


「それにしてもよくお前金なんか持ってたよな…」


鬼道が礼を言うと、不動が感心と呆れを足して2で割ったような顔をして突っ込んだ。


「何かあった時便利だからね。あ!そうだった!!」


「どうした?」


「二人とも、協力してくれないか?」


「何を?」


「実は…」


フィディオは自分たちの身に起こった出来事を話した。いきなり監督が変わり、オルフェウスがクビになりそうなこと。代表決定戦の前に怪我人が続出したこと。


「……と言うわけで助っ人を探していたんだ。だから君たちに一緒に戦ってほしい。」


「俺たちは人捜ししてんだ。悪いがそんな時間はねぇ」


「えー!そんな」


「せいぜい他の人に頼むんだな」


「バス代出したのに」


「…………………。」


不動は完全に弱みを握られたなと思った。助太刀を頼むように鬼道を見ると、さっきから難しい顔をしていた鬼道が口を開いた。


「今考えていたんだが、もしかしたら俺たちが追ってる奴らとフィディオの話に出てきた奴らは何か関係があるのかもしれない。さっきの礼もあるし、ここは協力しよう」


「ありがとう。えーっと」


「鬼道。鬼道有人だ。でこいつが不動明王」


「よろしく。鬼道、不動」


そして三人で事情を話しながらグラウンドに向かった。その中で佐久間のことも話した。


「グラウンドまで乗っ取られるなんてよ、随分傲慢な監督だよな」


「フィディオは今そいつらがいるグラウンドに入っても大丈夫なのか?」


「入るくらいなら監督も文句言わないと思う。」


「それなら大丈夫だな。そうだ、どのポジションが足りないんだ?俺と不動はMFなんだが…」


「丁度良かった。MFが足りないんだ。後はFWがいれば」


「優秀なFWならいるんだがな…生憎現在は誘拐されている」


「だからさっさとグラウンド行って佐久間を取り戻してアイツにも協力してもらおうぜ」


「その前に彼がグラウンドにいるかは分からないけどな」


「手掛かりなかったら手伝わねえぞ」


「そういう事言うな不動。とにかく行けば何かわかるはずだ」


色々話しているうちにイタリア代表が使用しているグラウンドに着いた。



「よし、行こう」



こうして新たな戦いが始まった。





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