親友はライバル



「駄目だ……もう一度!」



必殺技を完成させるため、鬼道と不動は今日も自主練に励んでいた。だがさっきから上手くいかず、キラーフィールズの応用形なのにそれすらも失敗が続いていた。


「ここまでずっといい調子だったじゃねぇかよ………」


「それどころか完成から遠ざかっているな」


(くそっ、早く完成させてぇのに)


不動はすぐにでも実践で使ってみたいのだ。しかし理由はもうひとつある。



昨日の夜…


「俺の思い込みも誤解だったみたいだし、これからは二人の練習を陰ながら見守ってるからな。それにしてもお前たちの必殺技、早く見たいな〜」


そう言って佐久間はキラキラと目を輝かせた。そんな顔されたら一秒でも早く完成させる他ない。好きな奴にはこうも甘い自分に複雑な気持ちになりながらも練習を続けた。


だが全然上手くいかないのだ。鬼道と息があわない原因もさっぱり分からない。


「何がいけねぇんだよ!!」


「それはお前がよく分かってるんじゃないか」


鬼道はそう言い放った。


「分かんねぇから困ってんだろ!!」


上手くいかないストレスもあり、不動は思わず怒鳴ってしまう。


「いいか不動。連携技は相手と心を合わせないとできない。プレーヤーの心が乱れていてはできるものもできなくなる」


「何が言いたいんだよ鬼道クン……」


「お前、俺に隠してることあるだろ」


「べ、別に何にもねえよ」


鬼道はあくまでもシラを切るつもりの不動に苛立ち、単刀直入に言うことにした。


「佐久間が、好きなんだろ?」


流石にここまで図星だともう隠せない。不動は覚悟を決めた。



「ああそうだよ、俺はアイツが好きだ。勿論お前の気持ちは知ってる。けど諦められねぇんだよ」


「何故言わなかった」


「言わなかったって…別にお前に言う義理なんかねえだろ」


「じゃあ俺にお前のバレバレな態度を黙って見過ごせというのか?」


「うっ………」


思いがけない返答に黙ってしまう。そんな不動がおかしくて鬼道は笑ってしまった。


「笑うなよ鬼道クン…」


「まぁいいじゃないか。お前がライバルとは随分と厄介じゃないか。だが不動なら後悔はしなさそうだな」


不動も同じ事を思っていた。


「俺さ、アイツの事好きだけど………鬼道クンの事も好きだぜ」


勿論チームメートとしてな、と付け足した。


「俺も不動の事は好きだぞ」


「……………。なんか俺たちが告白しあってるみたいになっちまったじゃねえか!!」


そう言って二人で笑った。こんなところ他のメンバーがみたら驚くだろうななんて思いながら。
不動も鬼道もお互いを認め合っていた。そして最高のライバルだとも思っていた。


「それにしても佐久間はすげーって。なにせ世界最強の司令塔を両方とも惚れさせたんだからな。一体どこのお姫様だよ」


「全くだ。まぁ勝つのは俺だがな。もう遠慮はしないから覚悟しておけ」


「覚悟するのはどっちだよ。お前がボヤボヤしてるうちに奪うからな。俺だって鬼道クン相手なら手加減しねえぞ」


正々堂々といこうじゃないか。鬼道はそう言って不動と握手をした。そして二人はグラウンドを出た。

今のところは鬼道が圧倒的に有利だ。それも分かっている上で不動は勝負を受けた。ただ、正々堂々と言われた時、例のペンダントが脳裏をよぎった。鬼道が積極的になれないのはあれのせい。しかし事実を言ってしまえば全くといって不動に勝ち目はなくなる。
不動は前を歩いている鬼道の背中をぼんやりと眺めながら心の中で謝る。


(ごめんな…鬼道クン。正々堂々は無理だわ)



いつかこの事を話す時が来るのだろうか…


そんな事を考えながら不動は宿舎へと戻ったのであった。




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