ログ2011〜2013 | ナノ







長編、罪人達の愛讐12、13話の番外編(長い補足)です。不佐久。



















佐久間と付き合うようになって暫くが経ったが、俺たちは順調だった。


お互いが遠慮していたのもあり、昨日漸くキスをした。


手が早いといえば早いのかもしれないが、このチームの中ではまだマシだと思う。


どこで嗅ぎ付けたのかは知らないが(まぁ多分風丸辺りだ)付き合った翌日から噂好きの立向居やヒロトが俺に根掘り葉掘り聞いてくるのである。


昨日だって練習が終わった矢先、立向居やヒロト、豪炎寺が俺を囲み、ちらりと遠くにいる佐久間を見れば綱海や風丸や吹雪に囲まれていた。

アイツも俺もあまりメンバーとは親しくしていなかったから、割りと一人でいることが多かったのだが付き合い始めてからというものの、俺たちの周りには誰かしらいるようになってしまっている。

今までほとんど話していなかった奴だってこれを切っ掛けに話すようになった。


恋愛は恐ろしい



昨日だって



「不動、お前らどこまでいったんだ?」


「どこまでって」


「キスはしたんですか?」


「はぁ!?んな事聞くな!」


「もしかしてまだ?」



コイツらは関係ないと言って引く奴じゃない。
俺はそれをこの短期間で嫌というほど知った。



「…まだに決まってんだろ」


「えー、不動君ならもうしたと思ってたのに」


「告白した日に抱き締めたもんな」



おい、お前らそんなキャラだったか…?

いつもクールな豪炎寺でさえ俺たちに興味があるようだ。


恋愛ってすげぇな



「流石にそれは気を遣うだろ。アイツの事は大事にしてぇから」


「不動さんって見掛けによらず紳士なんですね」


「見掛けによらずってなんだ」


「でも佐久間だってお前の事好きなんだからいいんじゃないか?」


「俺なんて付き合って2日でしましたよ?」


「それは早くないか…?」


「俺は正直早いとかよくわかんねぇな」


まさか自分が恋愛をするとは夢にも思わなかった。
そういった感情は今までなかったものだから、付き合うとかも何をすればよいのか俺は知らない。


「大丈夫です不動さん。自分がしたいようにすればいいんです」


「そうだよ、本能的に動けばいいって」


「男だろ?なら頑張れ」



訳の分からない応援をされる。
結局、今時キスは普通だという知識を吹き込まれ、何も知らない俺はあっさりと納得してしまった。


その時ヒロト達がニヤリと口角を上げたのに俺は気付けなかった。




―――――





そして今に至る。
したいようにすればいいということだったから言葉通りしたいようにした。


佐久間もそれを受け入れてくれたしこれ以上望む事はない。


それにしても昨日の事を思い返すだけで体温が一気に上昇するように体が熱くなる。


昨日はそのせいでよく眠れなかった…なんて絶対言わねぇ。


だけどアイツの戸惑った顔は本当に可愛かったな


『俺も不動とがいいから』とか反則だろ


ただ俺も俺で結構恥ずかしい台詞を吐いた記憶があったりして


やっぱり恋愛は恐ろしい



佐久間に会うのが気まずくて自室でぼんやりとしていたが、そろそろミーティングの時間だ。

みんないるだろうから俺も行くか。




――――






若干始まっていたかと思ったが、まだガヤガヤと騒がしかった。


「まだ始まってなかったのかよ」


と俺が言えば声で気がついたのか佐久間が振り向き、目が思い切り合ってしまった。


(やべー…気まず…)



佐久間は真っ赤な顔のまま下を向き、俺も顔ごとアイツから逸らした。恐らく俺の顔も真っ赤だろう。


なんとか平常を保って座ると隣にいたヒロトがにやにやしながら俺を見ていた。


「朝っぱらからうぜぇな」


「いや〜、不動君やるね」


「何がだよ」


「昨日、佐久間君と何かあったでしょ」


周りに聞こえないような小さな声で囁かれると、さっきまで取り繕っていた冷静さが失われる。


「な、何言ってんだよ」


「だって今二人で目、合ってたじゃん?すぐ逸らしちゃってさ、付き合いたてのカップルみたいで初々しいね」


「…ったくお前は」


以前聞いた話によればヒロトは遠距離恋愛中らしい。

だからなのかは知らないが、人の恋愛事情にはかなり敏感だ。


女子みたいに恋ばなはするしあちらこちらに首突っ込むし。


そして今、ヒロトのターゲットになったのが俺達なのであった。


鬱陶しくないといえば嘘になるが、もう既に相談に乗ってもらってしまった以上俺に疎ましく思う権利などない。


「もしかしてヤッて――」


「ない」


「えっ、ないの?」


「あるか」


「じゃあキスまでか」


「…」


「図星だね」


「にやにやしながら言うな」


完全にヒロトのペースになってしまった。
恐らくこの話もあっという間に広がるだろう。

やれやれと深い溜め息を吐けばそれと同時に監督がやってきた。



――――



「佐久間――」


「風丸、一緒に練習やろう」


ミーティングが終わり、練習の時間になったのだが、佐久間は俺を避けるようにして風丸と行ってしまった。



「不動さん嫌われたんですか?」


「キスがしつこかったとか」


「不動君ってビッチだったんだね」


いつからいたのか知らないが、真後ろでいつもの三人が騒いでいた。


「うるせーな、さっさと練習始めろ」


「と言っても、佐久間君に振られた不動君には練習相手がいないんじゃないかな」


「振られてねぇよ!!」


「仕方ない、俺とヒロトが一緒に練習してやろう」


「何で上から目線なんだ…それより立向居はどうした」

「綱海のところだ。相変わらずの自由人」


なんだかんだで三人で練習することになった。




―――




結局、佐久間は休憩時間も俺のところには来なかった。
ミーティングも夕飯も例外ではなく俺のストレスも限界がきていた。



「まぁ今日の事をまとめると、不動君はビッチなせいで佐久間君に振られた訳だ」


仕方なく一人で夕飯を食べようとしたらヒロトがそう言いながら隣に座った。
豪炎寺もその反対に座る。


「勝手に決めてんじゃねぇよ。つーかお前にビッチとか言われたくねぇ」


「ただ佐久間の避け方も問題あるな。俺がやられたら死ぬ」


「お前そんなキャラだっけ?」


「ヒロト、なんか良いアドバイスとかないのか?」


「取りあえず不動君がこのあと佐久間君を捕まえれば良いんじゃない?それで――」


「それで何だ」


「…やっぱり内緒」


「おい!」


「アドバイスしてあげるのもいいけど今回は不動君たちのウブカップルを暖かく見守ることにするよ」


「ふざけんな、待てヒロト」


ご馳走さまと言うと同時にヒロトは去っていった。


「じゃあ、頑張れよ」


豪炎寺も肩をポンと叩いて去っていった。


どうやら自分で解決しろということのようだ。

ここまできたら覚悟を決めるしかない。




―――――








「佐久間」

廊下を歩いていた佐久間を呼び止め、逃げないように手首を掴んで壁に押し付けた。


「不動…」


佐久間は罰が悪そうに目を逸らすが、俺はそんなの構わない。
今は自分の想いをぶつけるだけだから。


「昨日のことが嫌だったなら謝る。あの事でお前と口聞けなくなるの、嫌なんだよ」


「…俺だってお前と一緒にいたい」


「じゃあ何で避けたんだよ」


「それはっ…だから…昨日あんなことあって…お前が…か、カッコいいから…目が合ったら恥ずかしくて」


って言うのも恥ずかしいんだよ!と自棄になりながら佐久間はそう言った。


なんだよそれ…

コイツ可愛過ぎるだろ…



「それに…お前だって休憩の時来てくれなかったから……っ不動?」


気がついたら俺は佐久間を抱き締めていた。
しどろもどろになりながら恥ずかしそうに話す目の前のコイツを見ていたら我慢なんかできない。


「お前その顔は反則だからな…」


「は!?意味分かんない」


「分かれ」


佐久間は困惑したような態度を見せつつも俺の背中に腕を回した。


「俺、不動が好きだからな」


見たこともない表情に心拍数が上がっているのが分かる。

コイツ、こんな顔もできるのか…

駄目だ…理性飛ぶかもしれねぇ

しかしここは廊下。

いつもの場所と違って他の奴だって通る。


落ち着け俺、ここは廊下だ

ここは――




「理性飛ばしたお前のせいだからな」


抑えも効かず、俺は佐久間にキスをしていた。

誰かが来るかもしれないというスリルが一層この状況を盛り上げている。

俺たちは何度も何度も互いを求め合った。


暫くして唇を離せば、目が合って、同時に笑ってしまった。


「明日は普通に顔合わせられるかな」


「だといいな」



明日は朝一番に話そう、なんて思いながら俺たちは別れた。



――




だが


「おはよう不動君、昨日はどうだった?」


朝部屋を出ようとドアを開けた瞬間ヒロトと豪炎寺と立向居が現れた。


「お前らストーカーか!!豪炎寺と立向居は恋人のとこにでも行ってろよ」


「取りあえず昨日どうなったか気になってな」


「ほら行きましょう不動さん」


文句を言う暇もなくミーティングルームに行くと既にちらほらメンバーが集まっていた。
その中には佐久間もいたが、風丸と吹雪に包囲されている。


「佐久間」


名前を呼べば今度は笑顔で手を振ってくれた。


「おお、やりましたね不動さん」


「振られなくてよかったね」


「さて、話を聞こうか」


まるで刑事の取り調べのようだ。
それでも今俺は機嫌がいいから良しとしておこう。



「佐久間、一緒に練習しようぜ」


「ああ」


「朝から熱いね〜」


「うるせっ」


「照れるなって」



コイツら本気で騒がしい。

けれど不思議な事に悪い気はしない。

友達と呼べるのかは分からないが、何だかんだで笑い合える奴がいる。
そして佐久間がいる。

俺は幸せ者なのかもしれないと、最近よく思うようになったのであった。



それは…

この日常が

これからも続くと思っていたから







prev next