ログ2011〜2013 | ナノ







10年後設定です








今日も帝国学園に笛の音か響きわたる。

鬼道はその音を聴きながら総帥室に設置されたモニターを眺めていた。

同じリズムで鳴るそれは、まるでメトロノームのよう。

選手達の基礎的なトレーニングは現在笛を吹いている彼に全て委ねている。

モニターに彼が映れば思わず見ていた資料からは目を逸らしてしまう。
笛を吹く姿が、笛を咥えている唇がこう言っては何だがなんとも色っぽい。

鬼道は雷門中のデータを手にし、総帥室を後にした。




―――――





「やめっ!!一軍メンバーのみ集合!」


鬼道の姿を発見した佐久間は集合をかけた。
鬼道がわざわざここに来るときは何か話があるときなのである。


やがてミーティングが終わり、選手達は練習に戻る。
佐久間も合図を出そうと笛を手にしたが、それは鬼道によって制された。


「雷門の事でな、話がある」




――





「円堂が監督に就任したようだ」



選手達の練習を監察しながら2人は資料を読んでいた。


「円堂が監督に……それは厄介ですね」


「雷門中はフィフスセクターの命令を無視してここまで勝ち上がってきている」


「それで今回うちを雷門とぶつけた訳ですか」


「ああ」



鬼道は総帥、佐久間は参謀。それは大人の仕事であるからして上下関係というものが生じる。
それによりかつてタメ口で話していた仲でもここでは敬語が必須。
鬼道はそこまで上下関係を求めるつもりはなかったのだが、佐久間がそれを許さなかった。

あくまで仕事は仕事、プライベートはプライベートと公私混同させるのが嫌いなのだ。



「雷門の選手で注目されているのがキャプテンの神童です」


「コイツ用の対策を考えないとな」


「帝国のあのタクティクスを使えば撹乱できるかと」


「確かにその手もある」




基礎的なものは佐久間に任せているが試合となれば鬼道も対策を練る。
だがその時にも佐久間の力を借り、2人で作戦を立てるのであった。

「なら神童のゲームメイクを無効化させるような更なるタクティクスを考えておいてくれ」

「はっ」







―――――――







「佐久間、お疲れ様」


生徒を見送った後、佐久間を総帥室に呼んだ鬼道はコーヒーを淹れた。


「ありがとうございます鬼道総帥」


「佐久間、敬語」


「あ、すみません――じゃなくてえっと…」



あたふたと焦る佐久間の姿は10年前と何も変わらず可愛らしい。

鬼道は佐久間を帝国に呼んだとき、敬語は仕事以外で使うのは禁止した。
やはり、あの頃の関係を変えたくはなかったのだ。




鬼道が総帥になってから取り付けたソファーに腰を掛け、佐久間は淹れられたコーヒーに口を付けた。砂糖とミルクが沢山入った甘いコーヒーは佐久間の好物の一つである。



「美味しい…」


「ちゃんとお前の好きなように淹れたからな」


「ありがとう、鬼道」



佐久間は苦笑いで鬼道を見た。
いまだにコーヒーをブラックで飲めない佐久間は接待でコーヒーが出た時には毎回顔をしかめてしまう。
あの帝国の人間が甘くしないとコーヒーが飲めませんなんて恥ずかしくて言えるはずがない。
だからこそ鬼道の淹れたコーヒーが好きだったりする。

コーヒーは中学時代からブラックで飲んでいた鬼道にとっては絶対飲みたくない一品であるが、それを飲んでいる彼は好きなので度々淹れているのだった。




「佐久間…」


コーヒーを飲み終わると鬼道が後ろから佐久間を抱き締めた。

背後から伝わる温もりを感じると更なる熱を求めてしまう、彼らの悪い癖である。

拘束が少し弱まれば佐久間は鬼道の方を向き、鬼道はそれを合図にするように彼の唇にキスをした。

咥内を堪能するように舌を入れ、中で絡める。
佐久間がさっき飲んでいたコーヒーのせいだろう。
舌の付け根まで甘くなるような甘みが広がる。



「佐久間……甘い」


あのコーヒーよく飲めるな、と言えば


「何も入れてないのを飲めるお前がおかしい」


と生意気な口調で返される。

そうなればお互い笑ってしまう。

変わらない

10年前と何1つ変わらない関係。これが2人にとって何よりも幸せな事であった。


鬼道は佐久間の隣に座ると再び唇を重ねた。今度は激しく犯すようなキス。
苦しいのかまたは感じてしまったのか佐久間の身体からはくたりと力が抜け、そんな彼を鬼道は優しく抱き締めた。
凭れ掛かるように鬼道に身体を預け、しんとしたこの空間の心地好さを享受する。


「生徒の前ではあんなに厳しいのに俺の前だと随分甘えんぼなんだな」


鬼道にクスリと笑われると佐久間は子供のようにムッとした表情になり、


「お前だってそうじゃん」


と返した。


確かにそうだと鬼道は笑った。


「いいのか?帝国の総帥が此所をこんな風に使ってさ」


「職権乱用ではあるよな」




総帥室は仕事をする場所、そして生徒の管理する場所である。
それ以外の用途で使う必要はない。
だが鬼道と佐久間は生徒のいないこの部屋で2人だけの空間を楽しんでいた。

以前PTAの間で噂になってしまったのだ。


鬼道は佐久間と付き合っているのではないかと


型からはみ出る事を嫌う帝国学園のPTAは当然同性愛を嫌った。
そもそも部活の監督である人間がその参謀と付き合うなんておかしい、全国を狙うような部活の監督あるまじき姿だ、そんな理由を掲げ、鬼道たちに詰め寄った。
だからいくら恋人同士でも一緒に帰れないし家になど呼べるはずもない。
そこでひらめいたのがここ、総帥室であった。

ここは監視カメラもないし誰の邪魔もない。
2人が昔のようにのびのび過ごす事のできる最高の場所だ。



「ここに住めたらいいのに…」


「そうすれば佐久間とずっと一緒にいられるな」


「騒ぎが治まったら絶対一緒に暮らそう」


「当たり前だ。もう部屋は探している」


「早っ」


「取りあえず今はこうやって仕事とプライベートさえ分けれていばバレないさ」

「そうだな」


また怖い怖い鬼道総帥に戻るのか〜、何て言う佐久間の唇を鬼道は塞いでやった。



「オフの時はお前にしか見せない」



だからお前も
そんな可愛い顔は
誰にも見せるなよ?





俺たちのオンオフ







「鬼道…それって」


「総帥命令だ」


「お前狡い…」


「これも職権乱用だ」








10年後鬼佐久でキリ番2000を踏んだとーあ様のみお持ち帰り可能です。

なんか書いているうちによく分からない話になってすみません。2人ともギャップがあればいいななんて思ってたら萌えました←遅くなってしまいましたが良かったらもらってやって下さい。
素敵なリクエストをありがとうございました。






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