ログ2011〜2013 | ナノ










時期は93話あたりです


イタリア代表決定戦に巻き込まれた俺たちは漸く宿舎に帰って来ることができた。

あの試合をする前と後で大きく変わった事がある。

それは俺に対する佐久間の態度であった。


「今までお前を疑っていた。すまなかったな」


あれだけ俺に敵意を向けておいてこんなにもあっさり謝れるあいつの切り替えの良さに正直驚く。

そういえば…

俺は謝ったか?

真帝国であいつにした事をちゃんと謝罪したか?


否、俺は謝ってなんかいない



俺があいつにした事を考えてみれば佐久間が俺に敵意を向けたのは当たり前な事でもある。
それなのに佐久間は自分から謝罪した。
こんな謝りもしない俺に。

だからと言って今から謝りに行くのも気まずい。
それに俺は他人に謝った事など一度もないものだからどう言えばいいか分からねぇ…

どうするか色々考えを巡らせていると自室のドアを叩く音がした。

「不動、入るぞ」


声の主は佐久間であった。

「お、おう」

さっきまで本人の事を考えていたせいか少し動揺しつつドアを開ける。

「悪いな、いきなり来ちゃって」

「いや…別に気にすんなよ。ほらそこ座れ」


なんか俺おかしくね?
何で急に来たこいつをもてなしてんだよ

悪いと思うなら来んなくらい普段だったら言っていたはずだが…


ちょこんと座った佐久間の顔をまじまじと見る
長い髪と睫毛に中性的な顔立ち
確かにこれなら女にしか見えない(鬼道も初めは女だと思っていたらしい)
淡い水色の髪は艶を帯びていて、なんか触りてぇなと思いそこで我に返った。


そうだ、こいつは男だ


「不動?どうかしたか?」


怪訝そうに見られ思わずドキッとした。
キョトンとした顔で俺を見る顔はどこか幼げで、可愛いとか思ったり…


ちょっと待て!!
俺はさっきから何を考えてんだ!?

今までは佐久間を見てもなんとも思わなかった。
寧ろ鬼道のことになるとキャンキャン煩いから鬱陶しいとすら思っていた。

それが今、どうしたことかこいつの前で緊張している。
佐久間を可愛いとか思っている。

何でだ…

思い当たるとしたらあのときか


俺と鬼道の必殺技の弱点を一瞬で見抜き、技を完成させたあの瞬間的な判断力と行動力でチームを勝利に導かせた佐久間。

司令塔をやっている俺にとってはそんな能力に強く惹かれたのかもしれねぇ。

あれにはこの俺も驚くしかなかくて、思わず佐久間を褒めてしまった。
人を認めても口に出して褒めるなんて初めてだったせいで佐久間は怒っていたがそこは気にしていない。

今俺がすべき事は褒める事じゃない

謝る事だ


「あ、俺が用件を言うべきだったな。実はさっき鬼道が―――」


佐久間は言葉を失った。無理もない。突然俺が抱き締めたのだから。

「……不動?」

「悪かった…今まで謝りもしないでさ…これからはお前を守るから」


人一倍他人思いで
人一倍頑張り屋で

人一倍傷付きやすい

そんな佐久間だからこそ今度は傷付けるのではなく守りたいと思った

それと同時に俺は佐久間に惚れているんだと思い知らされたのだった。


遅いなんて事はないだろうから
今からでも償いたい


惚れた者負け






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