入学式当日、俺と鬼道は送迎車に乗り、校門前までやって来た。

二人でクラス表が貼り出されている前庭まで向かう。

「俺ら、また同じクラスか?」

「さあな、中等部からは分からない」

鬼道の父親の配慮か、俺と鬼道は6年間は同じクラスだった。それが果たして良かったのかは誰にも分からない。ただ、進級するごとに口うるさくなる鬼道とまた同じクラスは出来ればごめんだとも思う。
やがて前庭に着き、掲示板の前で自分の名前を探す。

「俺、A組だ」

「マジ?鬼道Aか。俺はD。そこそこ離れたな」

「俺がいなくても友達作れよ。後、問題は起こすな」

「へいへい」

鬼道はまだ何か言いたそうだったが俺は気にせず一年D組の教室へ向かった。

廊下を歩いていると後ろから肩を叩かれ、振り向くと源田がいた。

「よう、不動もD組だろ?よろしくな」

「ああ、ってお前何で知ってんの?」

「いや、掲示板に貼ってあっただろ」

「自分の名前しか見てねぇや」

「マジかよ。鬼道と辺見はA組、寺門はE組だったかな」

「お前マメだな」

そんな事を話ながら教室へ入り、指定された席に鞄を置いた。すると、今度教室へ入ってきたのは―――

「「あー!」」

思わず二人で声を上げた。

「高飛車女!」

「誰が女だ!馬鹿」

佐久間は自分の履いている男子制服のスボンを指差した。
そう言えばパーティーの時もスボンだった事を思い出す。ということはまさか……

「お前、もしかして男か?」

「当たり前だ!馬鹿にするな」

佐久間は声変わりのしていない、ガキのような声でそう言うと、俺をキッと睨んだ。
まさか男だったとは。
しかし男だろうが女だろうが、どのみち質が悪いのは変わらない。こんな奴と同じクラスと考えただけで気が重くなってしまう。

「最悪だ」

「それはこっちの台詞だ。何でお前なんかと同じクラスに」

「んだと、やんのか?」

「はいはい、ストップストップ。入学早々喧嘩なんかするなよ」

佐久間の胸ぐらを掴もうとした矢先に源田に止められた。源田は初等部時代から喧嘩や揉め事の仲介役をしていた。そんな面倒なポジションなんぞ死んでもなりたくないが、同じクラスになった年には源田がいたからこそクラスが平和だった、なんてことも多々あったので、感謝はしている。それでもこんなムカつく奴は一度くらいひっぱたいてやりたいものだ。
苛つく俺を他所に、当の源田は佐久間と自己紹介をしていた。

「へー、じゃああの佐久間グループの後継ぎか。すげぇな」

「まぁな」

謙遜ひとつせず、得意気に返事をする佐久間。そう、この辺りが気に食わない。

「けど初等部にいなかったし外部生だよな、どこの小学校だったんだ」

「あ……えっと」

今まで源田の質問に対して得意気に語っていた佐久間が突然しどろもどろになっていた。

するとタイミングよく教師が入ってきたことにより、会話は中断された。佐久間が少しほっとしたような表情を浮かべたのは見逃さない。

そりゃそうだ、ああいう変にプライドの高い奴には弱味にもなるだろう。





結局、それから佐久間とは特に会話もしなかったし目も合わせなかった。
同じクラスになってしまったのなら仕方ない。極力距離を置いて、最低限の付き合いにとどめておくしかなかった。
校舎を出たところで鬼道と会い、二人で送迎車に乗り込む。


「あー……ようやく終わった。ったく勘弁してくれよ、俺の学園生活が早速幕を閉じた。」

「入学早々何言ってるんだ。D組って言ったら源田がいるだろ?後佐久間」

「……その名前出すなよ」

ふて腐れたように言うと、鬼道はやれやれとため息をついた。

「お前な……昨日言ったことを忘れたのか」

「分かってる」

「だったら」

「はいはい、仲良くしますとも」

「不動」


これ以上説教を食らうのはごめんだと言わんばかりに俺は外の景色を眺めていた。今日は疲れた。もう何も聞きたくない。


家に着くと、俺はすぐに自室へ戻った。
何年間も使用している部屋なのに、いまだに他人の部屋のような気がして落ち着かない。
それでもリビングよりはマシだ。一人になれる空間があるだけ恵まれている。

(明日からめんどくせぇな)

あの佐久間とかいう奴とは恐らく対立するだろう。何となくそんな気がした。






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