次の日の朝、一年D組はHRを始めようとしていたが、不動、佐久間、源田の三人がまだ来ていないことに気が付いた河西は話をするのを彼らが来るまで待っていたが、突然あっ、と叫んだ。

「先生どうしたんですか」

一番前に座っていた女子が声をかける。

「忘れてた、今日サッカー部の一軍にいる子は朝のホームルーム出られないって顧問の先生に言われてたわ……」

「えー!」

ちょっとちょっと先生、しっかりしてくださいよ、なんて生徒に言われてしまい河西は苦笑いで誤魔化すしかなかった。

「ごめんねー、えっと連絡は特にないんだけど、昨日指揮者と伴奏者が決まりました。指揮者は不動君、伴奏者は佐久間君です」

河西の言葉に、決まった事を喜ぶ生徒もいれば犬猿中である二人で大丈夫なのかと心配する生徒もいた。

「不動君も佐久間君もサッカー部だし、三人とももう知ってるわよね。じゃあみんな講堂に行ってー」

河西はHRを切り上げて生徒に終業式を行う場である講堂へ向かうよう指示した。

退屈な終業式が好きな生徒などいない。一年D組の生徒たちも退屈そうにお喋りをしながら式場へ向かう。話題は先程の合唱コンクールの話。

「不動と佐久間なんてあのペアで本当に大丈夫なのかよ」

「体育祭の時みたいに喧嘩にならないといいけどさ」

「でもお互いパートナー知ってて引き受けてるんだから問題ないだろ」

「だよねー」

式場に入れば私語をしている者など一人もいない。こうしてお喋りをしていた彼らも、式場へ足を入れた瞬間、しっかりと口を閉じていた。




サッカー部の一軍メンバーは影山に呼ばれていたため終業式を免除となった。息の詰まるあの式に出なくて済むのはラッキーだと皆、心の中では胸を撫で下ろしていた。

そのまま部活となり、始めに影山から話があると言われ、今度は二軍含めて部員全員が集まる。

「今日から夏期休暇期間だな。今年もFFで優勝を目指してくれ」

「はい!」

皆配られた予定表に目をやる。完全な部活漬けだ。だがこの部活に入った者は皆このようなスケジュールを覚悟で入部する。むしろ影山の指導を沢山受けられるのは光栄なことでもあった。二軍メンバーもここで一軍入りすることも可能だ。それは逆に、今一軍にいても大会前に二軍送りになる可能性もあるということと同じである。
気の休まらない部活であるものの、中等部でサッカーをやることを夢見ていた一年生たちはやる気に満ちていた。









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