文庫を買った。白い、表紙の文庫。

以前は、変速の、一番重くしたペダルを前へ前へと押し込むようにして、通り過ぎていた本屋に、立ち寄る気になったのだ。品揃えの悪い本屋。娯楽本ばかりを置く本屋。
なんとなく思い出した作家の、薄い短編集を手にとってレジにぽんと乗せる。
本を買うのは久しぶりだ。音楽を聴くのも久しぶりだ。耳に収まっているイヤフォンを片耳外して、レジのバイトのぼそぼそとした声を拾う。

二年ぶり、透明の時間。なんにもない、時間。




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