ふられた。あれは完全な拒否だ。
10歳くらいの子供の顔には似合わない、眉間の皺。拒絶を含んだ瞳。怯えた表情。
どれもこれも俺が原因なのに、胸が痛い。
こんな感情、俺にあったのかと乾いた笑いが静かな森の中に響く。
誰もいないこの場所でなら"傷"を癒せるはずだ。
森の中を進んでいくと、お伽噺にでも出てきそうな湖が姿を現した。
湖の水を凍らせて道を作り、また進む。中心にきたところで氷が途絶え、道はなくなったが構わず足を進める。
そうすると当然湖の中に落ちるわけで…。
耳元で水が騒ぐ。しかしそれは一瞬であって、あとは静かな囁きが聞こえるだけ。
目を瞑り"傷"を癒すことに集中する。
だんだん底に近づいていく。が、"傷"は癒えない。
どうしたらいい。どうしたら治る。どうしたら……。


「アラジン…」


こぽりと音をたてて地上へのぼっていく。
うっすらと目を開けた。水面でキラキラ輝く光が眩しくて仕方ない。
ちらりと首だけ後ろに回すと光のない、暗闇が目に入った。


「(やっぱ俺にはこっちがお似合いなのか…)」


光に憧れて、好きになって…。
それに対しては悔やみはしない。憎みもしない。
今でもあいつのことが好きだから。拒絶されても怯えられても、好きなんだ。けどそれを見てまで側にいたいとは思わない。
これ嫌な思いをさせたくない……だから、



(この"傷"と共に…)


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20120918
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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