太陽が傾き始めた放課後。今日は部活がオフだったようで、ブンちゃんと赤也に遊びに誘われた。けど断った。やって柳生が行かんから。
柳生が行かんのやったら俺も行かん。柳生が行くんやったら俺も行く。
俺の世界は柳生が中心に動いとる。そうなったんはつい最近。自分も気付かんうちに柳生が中心になっとった。
今もそう。柳生が教室におるから俺も教室におる。周りは誰もおらんくて静かな教室。お互い喋りもせんから静かやけど、俺はこの空間がなによりも好きじゃ。
柳生は小説読んで、俺は誰かの椅子借りて柳生の机に上半身を預けている。柳生の席は窓側やから夕日が眩しい。眩しいけどじっと見つめる。


「なあやーぎゅ」
「柳生です。……なんでしょう」
「やーぎゅは好きなやつとかおるんか?」
「そういう仁王くんはいるのですか?」
「質問してるのは俺じゃ」


口をへの字にして未だに小説を読み続けている柳生に目をやる。もう夕日なんて見てる暇はない。
柳生は一瞬チラリと俺を見るが、本当に一瞬ですぐに目を小説に戻した。
興味なんてないと言われているような気がして、少し心がチクリと痛んだ。


「仁王くんが話してくださったら私も話します」
「嘘じゃなか?」
「貴方じゃあるまいし」
「……俺は、おるよ」
「そうですか。どのようなお方で?」
「………」
「おや、こういう質問はなしでしたか」
「分かっとんのじゃろ……?」


声が震える。怖くてじゃない、今にもあふれ出しそうな涙のせいで。俯いて必死にこらえるが、涙はいうことを聞いてくれず、ぽたりぽたりと机に落下していく。
柳生がぱたりと小説を閉じた。


「泣くのであれば言わない方がよろしかったのでは?」
「そんなの、もう遅いぜよっ……」
「そうですねぇ。ならば私が泣き止ませてさしあげましょう」


どうやって、と言いかけたとき、なにかに唇をふさがれた。
目の前には目を瞑った柳生。柔らかな感触。


「(キス……されとる?)」


ちゅっとリップ音をたてると、柳生は離れていった。


「泣き止みましたね。それでは、私はそろそろ帰りますね」


まだ頭が理解していなく、ぼーっとしている俺に柳生は声をかけた。それにハッとして急いで追いかけようとするが、ドアの手前で振り返って俺を見つめる柳生に、足が止まった。


「一つ言い忘れていました。私の好きな方ですが」


私の目の前にいる顔の赤い人ですかね。

何時もは逆光で見えない瞳に見つめられ、顔が赤くなった俺は、その言葉にもっと顔を赤くしたのだった。


「明日からは今まで以上にべったりひっついてやるナリ」


真っ赤な顔に手を当てて、そう誓った。





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におの色気ってどこから出てるんだろうか。
私には出せない。

20130207
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