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03

休憩時間が終わり、各教室で授業が始まった。
麻谷はというと階段の踊り場で悩んでいた。


「ど、どうしよう…」


悩んでいるのはどこで作業を進めるか。全く考えていなかったそうだ。


「(どこかの空いてる教室は無理だし、てかまず空いてるとこないし。音楽室もだめだしトイレで書くのもなぁ…保健室にいったら即先生にばれるし……)」


うんうん悩む麻谷は自分に近づいてくる影に気付かなかった。
ぽんと肩に手を置かれたときの麻谷の顔はこの世の終わりを見たという風な表情だった。


「びびびびびっくりしたぁ…」
「あはは、焦り過ぎだよちこちゃん」
「え、いや、焦るでしょ…今授業時間だし…。なんでいんの?」
「それはぁ、ちこちゃんと同じリユー」
「…へ?」







がちゃっと扉が開かれた。


「ここならいいんじゃない?」
「はー、ここがあったかぁ」


サボりの定番。屋上に二人は場所を移した。
麻谷は大きく息を吸い込み及川の方へ向いた。


「ありがとう!ここならいいもの書けそうだよ!」
「それはよかった」


にこっと笑う及川。それはいつもの愛想を振りまく笑顔と少し違ったように見えたが特に気にしないというようにくるりと回る。
どこで書こうかときょろきょろ周りを見るがいい位置がない。
すると、後ろにいる及川から声がかかった。
振り向くと及川は梯子をのぼった上にある給水タンクの横の少しスペースがある場所にいた。


「こことかどう?」
「及川くん、君のことをこれから神川くんと呼ばせていただこう」
「そんなたいしたことしてないんだけど…」


困り笑顔で頬をかく。十分してくれたなんて言ったら調子に乗るだろうから何も言わず梯子をのぼる。
この屋上は最近整備されたばかりで梯子も綺麗だ。
上あたりまでのぼると、及川が手を差し出した。


「ありがと」
「気にしないで。にしてもここいいねぇ〜。サボりにはもってこいだ」
「私はサボりだけどサボりじゃないからね」
「へえ…?なんかするの?」
「文化祭の準備だよ」
「ああ、昨日ようやく決まったあれね」
「そっ。私もそろそろ腹括らないとって思ってね」
「…戻るの?」
「まだそこまでは決めてない。けど、皆が頑張るなら私も頑張らなきゃなって」
「そっか…」


そのあと二人は一言も交わさないまま、時間だけが過ぎていった。



この一分一秒。どれだけの時間を私は無駄にしているのだろう。
周りに迷惑ばかりかけたまま、このまま消えてしまってもいいのだろうか。
いいわけがない。恩返しがしたい。それだけで私は動ける。


踏み出した二歩目

――――――
20140910

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