Endless Love




「ええか、絶対喋ったらあかんで」


そういう白石にコクコクと首を上下に振る千歳。


「何があっても喋るんはなしやで」


またコクコクと頷く千歳。
そう言っても何かのはずみで声を出すのではないかと疑っているのか
白石は新品のマスクを箱から取り出し、千歳に装着させた。


「これでまあええやろ。ほんまはガムテかなんかで口塞ぎたいねんけど……、流石にそれは可哀想やからマスクで我慢や」


その言葉に返す相手はいるが、喋ってはいけないと言いつけられているため、完全に白石のひとり言になっている。
頷く白石に千歳も同じくそれがいいと全力で頷く。


「それから、どうしてもなんか言いたいことがあったら」


すっと千歳に紙とペンを差し出した白石は、にこりと笑って


「これで伝えること。ちなみに一回しか受け付けません」


と、言いはなった。
それに少し絶望を覚えながらも千歳はまたコクリと頷いた。
そんな千歳を見て白石は内心「しゃあないねん!これ罰ゲームやからしゃあないねん!」と自分に言い聞かせ、心が痛むのを抑えた。
そう、これは白石が千歳に与えた罰ゲームなのだ。
白石がテニスで先にポイントを取った方が勝ちとし、勝った方が負けた方を好きにしていい、というなんとも双方が燃える条件を出したのが始まりだった。
本当に燃えるんじゃないかと思うぐらいラリーは続き、見ていたレギュラーメンバーは呆れかえり、忍足は財前と、一氏は金色と、その他は以下略として帰って行った。
周りに誰もいないことも気付かないままラリーは夜中、警備員に止められるまで続いた。
警備員の声に千歳は一瞬隙を作ってしまい、その瞬間を見逃すはずがない白石にポイントととられてしまったのだ。
もちろん、ポイントを取ったときの第一声は、


『んんーっ、エクスタシー!』


近所迷惑も甚だしい。
そして、今に至る。


「よっしゃ。じゃあ始めんで」


その言葉を合図に、白石から千歳への愛の言葉は綴られ始めた。


「千歳、お前にはほんま感謝しとんねん。千歳が四天宝寺に転校してきて、テニス部に入ってくれたおかげで不協和音の度がもっと増してん!」


褒められているのか貶されているのか、千歳は頭を悩ませたが白石の口から次から次へと綴られる言葉に耳を集中させた。


「ほんでな、小春が『千歳くん、白石くんのことずっと見てんのよー!』なんて言うから俺も意識しだしてもてな、その数日後に千歳に告白されて、ほんまに天に召される勢いやったわぁ。あ、その数日の間に俺めっちゃ千歳のこと好きになっててん」


きゃっきゃと頬を染めて一人で騒ぐ白石を見て、千歳から苦笑しか出てこないのはきっと仕方ないのだろう。
まだまだ白石の愛の言葉は続く。


「それでな、千歳が『おべんとほっぺに付いてるよ』って言われて、指で取ってそれを食べるとかほんま昇天しそうになったわ!もう千歳のたらしー!大好き!」


一人恋バナになってテンションが上がっているのか、勢いよく千歳に抱き着く白石。
あまりにも勢いがよすぎて声が出そうになった千歳だが、きっと今声を出せばたちまち白石は不機嫌になるだろうと予想し、必死に我慢した。
抱き着いてから少し落ち着いたのか、先程までの饒舌さはなくなった。


「あんな、千歳。ほんまに俺、千歳のこと好きやねんで?せやからいつも不安やねん」


何が?と問いたいがマスクが喋るなというような雰囲気を出している。
しかし、白石には千歳の心の言葉を読み取ったようだ。


「何がって?そんなん、千歳がかっこええからに決まってるやろ。いっつもふらふらどっかいって、滅多に学校にこんけど、そのせいで学校では『今日千歳君見れたー!』とか、『千歳くんまだ見たことないから見て見たいー』とか、そんなんばっかで、人気者やねんで?見たことない子が千歳見て惚れたらどないすんの?いや、別に惚れてもええねん。ええねんけどな、その子が千歳にとっては俺よりも魅力的で惹かれる子やったら……、正直、いややなぁって……」


千歳の肩にもたれ掛り、頭を肩にすりつける。
寂しがる猫のようだと、千歳は思った。


「せやからな、今のうちにできる限りの愛を伝えとこかなって思って、」
「喋るなって言ったと?」
「!、千歳っ」
「もう限界ばい。今のうちにってなに?いつかは離れるって思ってるんか?そんなことなか。絶対離れん。離れさせん」


意志の強い瞳で見つめられる白石は不安そうな瞳で見つめ返した。


「ほんまに?絶対?絶対俺から離れん?」
「離れんよ。約束するから、そんな不安そうな顔やめて。白石のそんな顔見たくなか」
「……うん、ごめん。ごめんな千歳。俺も約束する。絶対千歳を離れさすような男にはならん。千歳にとってずっと魅力的な白石蔵ノ介でおるよ」


「愛してんで、千歳」
「俺も、白石を愛しとるよ」



二人は微笑み合い、口づけを交わした。


Endless Love


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お誕生日おめでとう!千歳!

20121231





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