■ 天使か悪魔か

ある日の部活終わり。いつものように可愛い女の子たちをナンパするために、街に繰り出そうとしていた。
そんな俺を止めたのは数人の男。どうやら亜久津の流れ弾がこちらにきたらしい。
学校の前で喧嘩なんかするわけにいかないと思案していたとき、向こうから場所を変えると言いだした。
ちょうどいいか、なんて思って着いていってみると、定番中の定番。逃げ道のない路地裏に追いやられた。
 流石にまずいなぁ……。
冷や汗をかきながらいつ襲いかかってきてもいいように、構えの姿勢にした。
喧嘩はこれが初めてではない。今までに何度もこういう面倒事に遭遇してきた。
だからといって強いわけでもない。こいつらがもしこいつだったのなら勝ち目はあった。
けれど相手は10人ほどいる。きっと、いや絶対どこかの骨に傷がつくだろう。覚悟を決めて右腕を振りかぶった。


決着がついた。もちろん俺の勝ち。
勝ち目がないような言い草だったって?やだなぁ、俺一言も負けるだなんて言ってないよ?
勝つのは当然。傷つく可能性のあった骨も無事だ。俺ってばラッキー。
でも動くのはちょっときつい。息を切らしながらずりばいで少し開けた場所に移ったら、今度は仰向けになり呼吸を整える。


「明日の練習出られるかなー……」
「ま、無理でしょうね」


ひとり言のはずが、返事が上から降ってきた。
目の上に置いていた腕を退かすと、見知った顔が俺を覗きこんでいた。
まさかこいつに見つかるなんてなー……。アンラッキーとしか言いようがない。
溜息を吐くと、覗き込む顔がムッとしかめっ面になった。


「なんですか。人の顔を見て溜息だなんて。失礼ですよ、千石くん」
「だぁってさぁ、須藤くん。君、絶対南に言うだろ?」
「当然でしょう。部員の不道徳な行為を部長に報告して何が悪いんです?」
「まあ、そりゃそうだけどー……」


いくらマネージャーだからといって厳しすぎではないか。と、言いたいのは山々なのだが、須藤からの目力がものすごくて言うに言えなかった。
そんな須藤はかけている眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、呆れたように軽く息を吐いた。


「……仕方ないですね。今回は見逃して差し上げましょう」
「え、ほんとに?」
「ええ。そのかわり……。今夜は寝かせません」


実はと言うと、俺は、俺達は付き合っている。もう3年になるかな。
山吹に入学したてのころ、3年の不良グループと今日のような喧嘩をしていた。
理由は須藤から金を巻き上げようとしてたから。
結果は俺の勝ち。……今思えば俺って案外強いのかも。
で、3年共はさっさとどっかに行って俺だけその場に残ったのね。
目も伏せたいぐらいの傷があちらこちらに出来ていて、今みたいに動けなくて、しょうがないからうつ伏せでじっとしてたら、誰かが俺のことを転がして仰向きに変えたんだ。誰ってその場には須藤しかいないんだけど。
仰向きにして何をするかと思えば、ちっちゃい救急箱を鞄から取り出して俺を手当てしだした。
その顔があまりにも真剣でね。でも、治療する手は震えてた。
思わずその手を握って言ったんだ。


『これから何があってもすぐ助けれるように、ずっと俺の側にいてくれない?』


今だから気付いたけど、俺この時既に須藤に惚れてた。
だからこんなこと言ったんだと思う。
須藤は一瞬呆けた顔をしてたけど、すぐに俺と少し間を開いてお願いしますって頭を下げた。
数日経つと相性が良かったのかだいぶ仲良くなった。害がこなくて安心できるとこって言ったら俺の家だった。特に話すことなくお互い自由にくつろいでいるとき俺が不意に、なんかこうずっと一緒にいると付き合ってるみたいだよね。なんて言ってたら


『それでも、いいです。清純くんと一緒にいられるなら、なんでも……』


デレて俺のこと名前呼びで可愛いのなんのって。それで思わずキスしちゃってことに及んじゃって……みたいな、ね?
当たり前だけど相手の了承は取ったよ。俺だって無理矢理とか嫌だし……。
今となっては少しの反省と、かなりの後悔に襲われています。
何故って?リードするのって普通は攻めの俺だよね?それなのに受けの須藤くんに主導権握られちゃってるんだなこれが!


「ま、まじで?」
「はい、まじです。大まじです」


にこりと笑う須藤くんが、悪魔にしか見えないのは俺の目が悪いからであってほしいと、切に願った。


使


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曖昧模糊のろーるちゃんに捧げます。
ようやく相互記念小説が出来上がりました。遅くなり申し訳ないです。
千石は初めて書いたので、似ていない部分が多々あると思いますが受け取ってくださると嬉しいです。

わさび醤油ともに今後とも宜しくお願いします。
相互:20130105

20130111

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