▼ マタタビ

時間は5月頃



何処だ。あいつは何処だ。



昼休み。俺は校内を徘徊していた。

探しているやつがいるんだ。
最近急に余所余所しくなって避けられて…。
一年から今の三年に上がるまでクラスも離れずにずっと一緒にいた。
何回か互いの家にも泊まりにいったぐらい仲が良かったはずなのに…

どうして避ける…?


『何処にいるんだよあいつ…』


行きそうなところは全部探した。
屋上、裏庭、中庭、他のクラスも全部見に行った。
けど、いない…何処にもいない…。


『あ、部室……はないな』

なんたって鍵を持ってるのがあのお方だもんなぁ…

『ほんと、怖い怖い…』
「何が怖いんだい?」
『あー?あいつだよ。テニス部部長のゆきむ…らあああ!?』


不意に後ろから声をかけられたので振り向いてみるとあら不思議
噂のお方がにっこりと笑みを浮かべて立っているではないか。
俺の背後を取るなんて中々やるなぁ…


「たやすいことだよ。隙だらけだし」
『そーかそーか凄いな部長様は。そして心を読むのはやめてくれ』
「読んでなんかいないよ。よく言うだろ?
顔に出るって。須藤は判りやすい」
『さいでっか…』


俺結構何考えてるか判らんって言われるんだけどな…
ま、幸村だからな。なんでもありだよな。


「ところで、最近昼休みになるとずっと
校内をぐるぐる這いずり回ってるって聞いたんだけど…何かあったの?」
『別に這いずってねえよ。
…ちょっとさがしものがあってな』
「どんなもの?」
『…お前がよく知ってるもの』
「ふふっ、やっぱりあいつかぁ」


知ってるんだったら聞くなよな…
ん?まてよ…幸村だったらあいつのいる場所知ってるんじゃ…


「おしえなーい」
『まだなんも言ってねえよ!つかなんで判った!』
「だからー、顔に出てるんだよお前は。
特にあいつ関係になるとよく判る」


それはまじですか、幸村さん。
まぁ、まずいって訳じゃねえけど…
俺あいつのことどんだけ好きなんだよ、恥ずかしい…


「いやー、青春だねぇ。若いってのはいいねぇ」
『同い年だっての。で、教えないってことは知ってるんだよな
あいつがいる場所』
「んー、まぁ知ってるちゃあ知ってるかなー」
『頼む幸村…教えてくれないか』
「口止めされてるから無理」


楽しそうににこりと笑む。
やっぱ口止めしてたか…。
そんなに俺と会いたくないのか…
お前は会いたくないだろうけど、俺は会いたいよ
理由も話してほしい。

一方的は好きじゃない。


「…そんなにあいつが大事かい?」


真剣な顔で問われた。


大事?


『当たり前だろ。大事で、大切で…大好きだ』


そう答えると溜息を一つはいて、苦笑した。
しょうがないとでもいうような表情だ。


「知ってるか須藤
猫はね、今日みたいな晴れて暑い日は涼しいところに行くんだ」


いきなりなんだ
猫?今はそんなの関係ないだろ


「この学校の中に一箇所少し木が生い茂ってる場所がある。
その中に旧校舎があってね。暑いときは大抵いるんだよ。それから…

隠れるときも、そこにいる」


隠れる…?
まさか…

『口止めされてんじゃねえの?』
「何言ってるんだい?そこに猫がいるって言っただけじゃないか」
『……この前話してた画集、譲ってやる』
「いいよ、あれは自分で探す」
『…判った。でも礼はさせてくれ』
「ふふっ、楽しみにまってるとしよう。
早く行きなよ、昼休みが終わるぞ」
『ありがとさん』


俺は走り出した。

昼休みが終わる…そうだな
終わったらあいつが戻ってくる
そうしたら入れ違いでまた会えなくなる。
よく判ってらっしゃいますことで…ねぇ

少し走るスピードを早くしようか。
早く会いたい…早く、早く…






『はっ…はっ…』


あった、旧校舎…。
こんなもんこの学校にあったとか全然知らなかった。
よく知ってたな幸村も、あいつも…

中に入ると埃っぽくて咳が出そうだ。
こんなとこに昼休みになる度来てたら体に悪いだろう…。
体壊してねえよな、あいつ…
来たのはいいが何処にいるか判らん。
とりあえず、涼しいとこ探すか。
2階は…ないな。奥の方が涼しいか…
大分古いのか、所々なくなっている廊下を歩く。
幾つもの教室を過ぎると保健室を見付けた。

『(いそう…だな)』

なるべく音をたてないように開ける。勢いよく開けて壊れちゃ困る。
錆びたパイプ椅子に机、カーテンに隠れて見えないけど脚が見えるからきっとベッドがあるんだろう。

なんとなく…本当になんとなくだけど
このカーテンの中にいそうな気がする。
そっと割れ目を開いて中を覗いてみた。

いた…。
そこには銀色がいた。丸くなって自分のブレザーを被って、ベッドに寝ていた。




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