▼ 言葉を紡げ

「あれ?跡部は?」


生徒会室にひょこりと顔を出したのは跡部の恋人である須藤縁。
いつもの定位置に目的の人物がいないためか部屋の中をキョロキョロと見回す。
視界に入る人物は跡部の側に常に付いている樺地だけだった。

「ねえ樺地、跡部は?」
「……ウス」
「んー?なになにー?ってわかんないよっ」


須藤は腕を組んでウンウン唸りながら樺地語を理解しようとするが、全く分からず、床に寝転がった。
すると、すぐに樺地が須藤の脇の下に手を入れ、ひょいっと立たせる。
やっぱりかーと須藤は苦笑いをしながら頭をかいた。


「汚いよねー……」
「ウス」
「はあ……、跡部何処にいるんだろ……」


不意に視線を窓にやり、外を見た。


「あ、いた」


片手をズボンのポケットに入れ中庭を歩く跡部を発見した。
すぐに須藤も中庭へ向かおうとするが、樺地に脇の下に次は腕を入れられ羽織るように止められた。


「何すんだよ樺地ー。離してよ」
「……ダメ……です」
「むー、なんでー」
「……跡部さんからの……言いつけ……です」
「なるほどー。って納得するわけないじゃん。はーなーしーてー!」
「……行っては……だめ……です」
「……」
「今は……「わーかったよー」……」
「いつものでしょー」


ぷくんと頬を膨らませ、怒ったように言う須藤は、悲しげな目をしていた。
跡部が樺地を使ってまで須藤を止める理由は一つ。


「また告白かー……。跡部ってばもってもてー……」
「………」
「なんか言えよ樺地ー……」
「……ウス」
「もー。ウスだけじゃわかんないってばぁ」


立ったまま体の力をなくした須藤は、体全体を完全に樺地に預ける体勢になった。
腕も首も脚もだらんとしていて、まるで樺地が須藤の死体を持っているかのようだ。
そうして暫くすると、ガチャリと扉が開く音がした。


「………何してんだ?」
「死体ごっこ」
「……ウス」
「おかえり跡部。今日ももてもてですなー」
「チッ」
「舌打ちしちゃいけませんー!お母さん怒るわよ!」
「はぁ……。樺地、ご苦労だった。もう下がっていいぞ」
「……ウス」
「ばいばーい樺地ー」


樺地は須藤を床にうつ伏せに寝かせると、のそりのそりと生徒会室から出ていった。


「ねえ跡部」


須藤は顔だけ跡部に向けて、小さな声で呼ぶ。
それを跡部は手を腰にやって見下ろす。


「離れちゃうの?」
「言ってるだろ。俺様はお前から離れない。離れる気はない」
「でも、だって、」
「でももだってもねえ。縁から離れる理由がどこにある」
「……嫉妬深いとこ」
「アーン?それのどこが理由だよ」


意味が分からないと言った風に跡部は首を傾げると、フッと笑い、しゃがんで須藤の頭を撫でると、今度は須藤が意味が分からないという顔をした。


「嫉妬深いってことは、それだけ俺様が好きってことだろ?」
「う、まあ、そうだけど……」
「それならいいじゃねえか。お前の恋人は跡部景吾だぞ?それぐらい受け止められなくてどうするよ」
「跡部……っ、大好き!」


体を起き上がらせ跡部に飛びつく須藤は、心底安心した表情だったそうな。



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跡部より樺地の方が出番が多いっていうね。

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