▼ 瑠璃に染まる

時間軸はアラジン達と会う2、3年前あたり


俺には幼馴染というやつがいる。
そいつは俺と同じ黒髪で、俺とは違う青色…いや、綺麗な瑠璃色の瞳をしていた。
そう…していた。


「なあ、まだ痛むのか?」
「少しだけね。前よりかはマシになったよ」
「ふーん…」


同じジン持ちとして、互角…とまではいかないが中々の腕前を持っているエニシと手合せをしていた。
俺には必要ねえことだが、エニシがどうしてもって言うから付き合ってやった。
やるんだったら本気でやる。もちろん向こうだってそれは分かってるから本気でかかってきた。
エニシは前手合せした時よりも強くなっていた。当然だ。影でだが、必死に鍛練していたんだから。
そして、その強さに俺は少し焦っていたんだと思う。そうでなければ、こんなことにはならなかった……。


「ま、しょうがない。今じゃなくてもいつかはきっとやられてたよ」
「んなこと言うなよ。…本当になんも見えねえのか?」
「そうだね。今僕の視界にはなにもないかな」


へらりと笑う。
そんな顔すんじゃねえよ。無理してんの丸分かりなんだよ。
俺の顔は今、泣きそうになってるいるだろう。でも、そんな顔も見られることはない。
もうこいつは、何も見えないのだから。


手合せの途中、気が付くとエニシはピクリとも動かず、横になって倒れていた。どうしてだ?どうして倒れているんだ?なあエニシ、なんか言えよ。そう問うが返事は返ってこなかった。
エニシがメガネの治療部屋に入れられるまで何がどうなったのか、全く分からなかった。
そして、部屋に入っていく瞬間、目の前が真っ白になって、俺も倒れた。

数時間後、目が覚めた俺は周りを見回したが、自然と瞳は左隣に向く。そこには目を痛々しく包帯で巻かれて、死んだように眠っているエニシがいた。
もうその目は、開きはしない。綺麗な瑠璃色の瞳も、二度と見ることはできない。


ああ、俺がやったんだと気付くには遅かった。

原因は俺だ。俺しかいない。
エニシの強さに焦った俺は、何時もより強めに攻撃を返した。
一瞬だった。目の前に血が舞った。
そのときは誰の血か、分からなかった。だが、今ははっきりと分かる。

攻撃を返したとき、同時に焦って放った力の加減を知らない氷の結晶があいつの武器をすり抜けて運悪く瞳へと直撃したんだ。
運悪く…なんて言い訳にしか聞こえない。故意的にやった可能性もあるんだから。
昔から俺とあいつの力の差は歴然だった。何をしても俺が勝ち、上まり、差はどんどん開いていった。
次第に俺の心の中には、こいつよりも俺の方が優れてる。ま、マギなんだから当然っちゃあ当然だな。と、エニシを下に見ている蟠りが出来ていた。
しかし最近は、日々の鍛錬のおかげかその差が縮まってきていた。
この俺が焦るぐらいなのだから、きっと紅炎よりも強いはずだ。


「そんな顔しないでよ、ジュダル。僕は君を責めたりなんかしないから」
「そんな顔ってどんな顔だよ…」
「んー、そうだな。泣きそうな顔…かな」
「お前、本当は見えてんじゃねえの」
「まさか」
「じゃあなんで分かんだよ…」


ジュダルだからかな。
そう言われて嬉しくなるのはきっと気のせいじゃない。


「お前、これからどうすんだ。何も見えねえだろ」
「そうだなぁ…。誰の邪魔にもならないように何処か森の中にもでいるかな」
「馬鹿言うんじゃねえ。俺から離れるのは許さない」
「じゃあ、どうしろっていうのさ」


むすっと片方の頬を膨らませ不機嫌になる。
俺がお前の目の代わりになると言ったら…こいつは了承してくれるだろうか?
瞳を潰された奴の隣になんか居たくないだろうが、これしか思いつかねえ。


「良いよ。はっきりいいな」


どうして言えないことが分かった。
そう聞いたらまたジュダルだから、と返ってくるだろう。


「……俺と住め。俺の側にいろ。俺がお前の目の代わりになってやる」
「はぁ…何を言い出すかと思えば…。ジュダル、君は馬鹿なのかい?」
「っやっぱり…いや、だよな」
「そうだね、ジュダルの邪魔になるのは、僕は嫌かな……」
「…お前こそ馬鹿か」
「へ…?」
「普通は目を潰した奴の相手に邪魔になるから嫌だなんて言わねえよ。言うのはお前くらいだバカ。つーか邪魔だと思うんなら最初から言わねえ。なんだお前。俺がそんな気遣いできる奴だと思ってんのか?」
「ふふっ、そっか…それもそうだね。じゃあ、僕の瞳を潰したジュダルくんにお世話になろうかな」


ああ、任せろ。これからは俺の瞳はお前のもんだ。
お前もこの紅い瞳も、全部お前の、エニシの為に全力で守ってるやる。



−−−−−−
なんかlove的な感じではないような…。
紅炎さんの実力知らないけどきっとジュダル>紅炎だよね。
20120906

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