女の買い物怖いよね
買ってー買ってー!と駄々をこねる子供。買い物かごを抱えて、片手を引っ張られる若い母親は、困ったように顔をしかめている。涙目で、がんとして動かない、両足で踏ん張っている子供の先には、ガラスばりのショーウインドに飾られたおもちゃ。足を止めている男は、うらやましそうな顔を引っ込めて、息を荒げながら道行く人たちの中をすすむ滑車を引っ張るトナカイを認める。はよこい、と手まねきすると、憤りを伴った叫びが響く。
「カズ、ひどいぞ、置いてくなよ」
もう駄目だ、とうなだれた時、てっきり山積みのきれいにラッピングされた重責をいくつか取っ払ってくれると思っていたチョッパーは、ずんずん先を行くカズに悪魔を見た。ばーか言うなよ、こちとら両手がいっぱいでひーこら言ってんだ、と大げさに怒る。
「ドクトリーヌんとこでさんざん荷物引っ張ってただろー?何を今さら」
「それはそうだけどー」
チョッパーはほんの少し回想する。ドクトリーヌのもとで弟子修業時代、頼んでもいない病気の治療を強行し、治療と称してごっそり家財道具や食料を持っていくためにどんどん滑車にのせて、チョッパーは引いていた。だが実際はリフトで運んでいたため、実際の距離は短い。だが、とちらり、と振り返る。
「チョッパー、カズー!何やってるの?早く来なさいよ」
「早くしないと、時間が押してしまうわ。頑張って」
「うーい」
「ちょ、ちょっと待ってくれよー!」
それとなく滑車の後ろに腰をおろそうともくろんでいるカズに、重いって!、とどなり声をあげ、チョッパーは駆け出す。あ、とカズはいそいで追いかける。女性陣のショッピングにつきあう荷物持ち係の使命はまだまだ始まったばかりだ。
「際限ないのが怖いんだ」
「はははっ、地獄だな!」
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