くたばれ
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俺は、思った。そりゃあ生まれてこの方、一度たりともまともだったことなんざ、ありませんとも、ええ。この際常識人気取りの、ノット一般人だっつー事も認めてやろうじゃん。でもさあ、神様。少しは限度っつーもんがあんだろ、考えてくれよ、頼むから。男は秘密が多いほど、もてるのだ、が建前だったのに、どうしてくれる!
そりゃあ、初めっから気づいてましたとも。つーか、つかの間の宿り木にしよう、と直感的に決めたのも、初めは思いっきりそれが理由だったし。まさかドラゴンさんの息子だとまでは把握し切れてなかったから、マジでびっくりしたけどさ。同じファミリーネームを名乗ってたら、そりゃ誰だってもしかして、って思うだろ。でもまさか、孫に会いに直接乗り込んでくるなんて、誰もおもわねえって。背後から思いっきりドラム缶で殴られた気分だ、と密かに思う。親しげに話しかけてきてくれるのは、嬉しいんだけどさ、ガープさんよ。ホント今更だとは思ってんだけどさ、ガープさんよ。ついでの口上で、公然の秘密としてきた、世界政府の沈黙を破るんじゃねえよ、クソじじい!
「墓参りは、済んだみたいじゃのう、瓢風。底抜けに明るくなりおって」
「そりゃどーも。おかげさんで、元気でやってますよ」
「こりゃまた、長い反抗期じゃったな」
あっはっは、とぐりぐり俺の頭をなでながら、ガープさんが笑う。周りのみんなは、案の定、あんぐり口を開けている。そりゃあ、この人からすれば、俺もルフィもエースもみんな同じ扱いなんだろうけど。それにしても、エースがルフィの兄ちゃんを名乗り出たときには、マジでビビったな。
「そりゃあ、まる22年でしたから?」
「こっちからすれば、一生あのままでも良かったんじゃがな」
「冗談ぬかすんじゃねえよ、クソじじい!」
「・・・・・お前ワシのこと嫌いだろ」
「何いってんすか、今まで一度も好きだったことなんかありませんよ」
いや、なんでそこでショック受けるんだよ、おま。
「いままでも、これからも、ずっとね。あんたが世界政府の狗である限り、絶対に」
がーんがーんがーんってなんで、今更。まさか反抗期が終わったから、俺がツンデレに転身するとでも思ってたのか、この人は。どんだけアホなんだよ、おい。つんつんになることはあっても、でれでれになることは多分一生来ないから、安心してください。へっ、と軽蔑しきったまなざしを向けると、ガープさんがなんか泣き始めた。
「あいかわらず、可愛くないガキだな、お前」
「よくいわれますとも、ええ。何を今更」
双子岬の番人さんからも、桜王国の魔女さんからも、世界最悪の犯罪者さんからも、空島の騎士さんからもさんざん言われまくりましたが、なにか?ついでに入団を蹴った白ひげの旦那からも赤髪の旦那からもピエロの旦那からも、さんざんなじられましたが、なにか。すっかりスレちまって、あんときは可愛かったのにってなんだよそれ。なんか勝手に記憶捏造してねえ?ガープさんよ。
「結局お前が敬愛するのは、ロジャーだけか、カズー」
「そりゃあね」
俺の存在意義でしたから。なんかギャラリーがざわめいてきたし、もうお開きにしません?海軍の英雄さんよ。
「なんじゃ、お前ら。しらんのか?」
「いわんでいい、だまりやがれ、クソじじい」
「・・・・・いいもん。ネタバレしてやる」
「この場に及んでまだカミングアウトするつもりか!」
「冗談冗談。お前さんが海賊王の倅なんて誰が言っても信用しないじゃろうし」
「てめーがいったら意味ねえんだよ、バカ!」
えええええっ、となんだか周りが騒がしくなった。バカヤローって叫んで、とりあえず、殴っておいた。ああ、これからこいつらになんて説明しよう。
(ええと、頑張っちゃったんだよ、父さん)(そういう問題じゃねえだろうが!)
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