おかえり!

前略。カズが、口を利いてくれません。

「なあ、カズ。まだ怒ってんのかよ、いい加減機嫌直してくれってば」
「・・・・・」

どっかのだれかさん直伝の、極上笑顔で愛連打。
あっちにもこっちもお愛想を振りまいてばかりのカズが、素晴らしいくらいに
存在否定しまくるので、ウソップは困り果てていた。いつもなら、(なんで俺だけ!)
とマジ切れするところだが、いかんせん10人が10人誰に聞いても、お前が悪い
と即答されそうな事をしでかしたばかり。その上、俺も悪かったよな、と良心が
己の非をもろに自供してしまったので、どうしようもないのだ、正直。


実は、麦わら海賊団に、カズが入団したのは、ウソップと同時期。
ローグタウンにいくため、グランドラインを逆走し、イーストブルーに突入した
カズは、とある客船に乗っけてもらっていた。
だがある時、船が座礁したところを、嵐が直撃、そして転覆。
そのうち、釣りをしていたウソップ海賊団が発見、という出会い方をした。
そして、ウソップの家にやっかいになっていたところ、ルフィ達に出会ったのだ。
カズがウソップのことを「キャプテン」と呼ぶのも、ウソップ海賊団の名残。
だから、自然とカズが最も親密なのは、他ならぬウソップだったりする。


「どっかいけよ、お前なんか知らねえ!」


そんなウソップが、例の事件で離脱した後、メリー号に残っていたとき、
カズはウソップに顔を出した。責めるわけでもなく、戻ってこいと説得するわけ
でもなく、ただ純粋に心配して話を聞きに来ただけだったのだが、いかんせん
タイミングが悪すぎた。
ちょうどフランキーがメリー号を解体しようとし、それをウソップが必死で阻止しよう
としたときで、カズはもちろんウソップの肩を持った。だが、そのとき頭に血の上って
いたウソップは、本来言ってはいけないような言葉を連発して、なだめようとしたカズの
手を振り払ってしまったのだ。それでもカズはその場にいて、事件に巻き込まれて
行くことになる。だが、結局最後まで怒らなかったカズの優しさに少々甘えすぎた
ウソップは謝るのが遅れ、今に至るのである。


カズが引っ込んでしまった、武器庫に向かう。


『ごめーーーーーん!!!』

特大の叫び声に、どんがらがっしゃーんとウソップはこけた。

『意地張ってごめーん!!!俺が悪かったァーーーーー!!!』

(ぷくくくく)とダイヤル片手に忍び笑いしているカズに、一世一代の大謝罪を
思い出したのか、ウソップはこっぱずかしくなってのぼせそうなくらい赤くなる。

「なななななっ何してんだっ!つーかいつの間にっ」
「いいじゃねえか、若かりし日の思い出、プライスレス」
「俺はまだ十七だぞ、おい!」

『ダメかなぁーーーーーっ!!!頼むからよ、お前らと一緒にいさせてくれぇ!!!』

「だああああっ、もう勘弁してくれ、カズっ!」
「なんで?」
「なんでってそりゃあ・・・・・」

『もう一度・・・・・!!!俺を仲間に入れてくれェ!!!』

「恥ずかしいからだよ、ちくしょーっ」

ぽち、とようやくカズーは、ダイヤルを止めた。(恥ずかしいだあ?)カズはつぶやく。

「こちとら、突き放された悲しみから、やっと途方もネエ時間掛けて立ち上がった
 ばっかなんだ。それを「ごめん」の一つもなく、無かったことにしやがって。」
「ごめん」
「その場の勢いとはいえ、俺をどん底に突き落とすつもりだったのかよ、薄情者」

うっとウソップの言葉が詰まる。まっすぐ見下ろされて、自然と頭が下がった。

「ホントに、ごめん。もう二度と、あんなこと、いわねえから」
「ならいい。さて、じゃあラウンド2だな」
「は?」

ふう、とカズは息を付いて、いつものようなふざけた笑みを浮かべた。

『ごめーーーーーん!!!』

「だああああっ、ラウンド2って何だよ、カズ!何の仕返しだ、お前俺を憤死させる気か!」
「せいぜい苦しめ、バカ野郎。こっちは柄にもなくつっこみ要員として駆り出されてたんだ、
 職務怠慢いいかげんにしろ!」
「お前がいい加減にしろ!」

『意地張ってごめーーーーーん!!!』

「うあああああああっ」





(がんばれ、ウソップ。そして、お帰り!・・・・・素晴らしく歪んだ帰還祝いこの上ないが)


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