コーラ無理マジ無理
「ぶはっ」
思わず吹いたフランキーに(やだ、ちょっと何してんのよ、フランキー!)とナミが叫んで慌てて海図を片づける。テーブル一面にひっくり返ったガラスのコップを受け止めたロビンは、それをたてると咳き込むフランキー
に(大丈夫?)と声を掛ける。ナミの声に反応して飛んできた蹴りに、ごはっとフランキーは何かを吐いて床にひれ伏した。サンジが慌てて布巾でコーラを拭き取る。
「何してんだ、おめー!テーブルクロスが台無しじゃねえか!」
「わっ、わりい。すまねえ、サンジ」
「謝って済んだら、海軍はいらねえんだよ!あーもう、カズ!ちょっと来てくれ!」
「何でカズを呼ぶんだ?」
「洗濯はアイツの専門なのよ。むしろ掃除とか掃除とか掃除とか全部?」
「おい」
あいつ狙撃手その2なんじゃねーのかよ、というと、雑用のが本業なのよ、とロビンはケロリと言い放つ。口元をぬぐったフランキーは、へえ、とつぶやいた。
「うっわ、きったねー。どーしたんだよ、兄さん」
年上だから、という何とも単純明快な理由で「兄貴」呼びするカズがちゃちゃをいれる。
「どうしたもこうしたもねえ。こいつが突然吹きやがったんだ」
「あららァ、大丈夫かよ、兄さーん。困るねえ、俺が全部引き受けてんですよ?雑用は。これから毛布まとめて洗うとこだったのに」
「カズー、女部屋のは全部あそこにまとめてあるからよろしくね」
「ほいほい、了解。じゃあ、もってくな、これ」
くるくるとテーブルクロスをまとめてカズは受け取った。
「何か家政婦みてえだな、おめえ」
「そしていろんな奴らの秘密を握ってるのさ」
にこりと笑ったカズに(は?)とフランキーは聞き返すが、答えないので周りを見ると、素晴らしいくらいにナミ達が視線を逸らす。むしろ(気をつけろよ)と肩をたたかれたので、沈黙した。
「それより、なんで吹いたんだよ、兄さん」
「コーラがコーラじゃねえ」
「はあ?何言ってんだ。ちゃんとコーラのボトルから入れたぜ?」
「コックさん、もしかして銀のパッケージのを出したの?」
「へ、ああ、そんな気がする」
「銀のパッケージィ?普通コーラは赤だろ」
「そうなのか?」
「世界の常識だろ!」
「ええ、銀のパッケージはカロリーゼロの女性用よ」
「はああああっ?んなもんコーラじゃねえだろうがよ!」
「わりい、フランキー。今度からは、気をつけるわ」
「頼むぜ、コックの兄ちゃん」
「お取り込み中のとこ悪いんだけどさ、行ってもい?」
「おう、わりい。頼むわ、カズ」
「おう、任された。じゃあな」
カズはキッチンの扉を開ける。
「コーラかあ、俺無理。あんなの人間の飲むもんじゃねーよ。うっわ、薬品の匂い。 だいたいこれ、もとは腹痛用の薬だろ?よく飲めるな、兄さん」
「おいまて、こら。さりげなく大胆にコーラをけなすんじゃねえ!だいたいお前三十路じゃねーか!いつまでガキの味覚持ってんだよ」
「飲めないとはいってないっしょ、飲まないだけで」
「待て待て待て、一緒だろうが!この野郎、コーラがどんだけうまいか思い知らせてやる」
「え、無理」
「即答かよ!」
まちやがれ、とフランキーも足早にキッチンを去った。
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