のちの爆弾魔の由来である
「ルフィ、ルーフィーっ、どこだーっ、って、お、いたいた!おーい。今暇か?」
「何だよ、カズー、騒ぐなよー。おれは今釣りで忙しいんだっ!」
「釣りよりもっと楽しいことしねえか?」
「やだ」
「なんでだよ、わざわざオレがかまってやろうってのに、反抗期しやがって、おっちゃん悲しいぞー。 おれおれ、立った立った!」
今のところつれていないが。バケツの覗き込んでにやりと笑うカズに、これからだ!とにっしっし、とルフィは笑う。しかし、かまってほしいのかカズは竿をもつルフィの両手が空いてないことをいいことにちょっかいをかける。ぐりぐり麦藁帽子をこぶしでされて、さわるなよー、とルフィは怒る。いくら信頼おけるクルーであっても麦藁帽子を無断で触ろうとする輩には容赦なくルフィは怒る。無断で触れてほしくないナイーブな部分なのだろう、おそらくは。カズの知る限りではルフィが進んで他人に麦藁帽子を預けるのは修繕のためと帰ってくるという意思表示のときのみである。
うがーっと怒るルフィに誰かさんを重ねて、目を細め、くっくっく、と笑ったカズは素知らぬふりをして挑発する。
いくら単純なルフィでも、そうそう同じパターンを5回も繰り返されればいやでも学習するものである。やだ、と突っぱねた。
ノリが悪いねえ、とカズはぶーたれた。
片手にはライフル。しかもきっちりフランキーにより格段に改造性能や搭載弾丸数が向上したため、ここのところカズのご機嫌はいいばかりで不機嫌にはならない。要するに試したくてたまらないのである。どこぞの角刈りの迷彩服男見たくスコープ付きで遠距離から狙撃するのも狙う楽しみがあっていいが、今無性に試したいのはその威力である。至近距離から撃ちたいのだ、この男。よってもっぱら標的にされるのが、ゴムゴムの実の能力者であるがゆえにどんな物理攻撃も基本的には効かない我らが船長であるわけで。
前はハンドガン、次はマシンガン、そしてマイン、お手製の爆弾、と続けばいたくはないものの、体を突然突き抜け、そして跳ね返る弾丸はびっくりするものらしい。銃弾を浴びる衝撃が無効化されるわけではなく、ただ痛覚が異常に鈍く、そしてけがにならないだけ。もともとルフィはマゾヒズムに属しない、極めて通常の感性を持っているため、意味もなく攻撃されるのはやはりいやなのだ。
「おれは的じゃないぞ、カズ。それに、びっくりするだけで、おれはちっともおもしろくない!これは大きな問題だ!」
ずびし、と指をさされ、ああ、そら問題だ、とカズは納得する。だろー、と自慢げに笑うルフィに、カズは立ち上がると階段を上っていく。
「よし、じゃあ今度からスリリングに行こうか、クソガキ。昼間だけたあ、思うなよ?」
「うえっ?!」
「おやまあ、珍しい組み合わせだこと!」
「明日は雨が降るね、カズお兄さん」
ぱくぱくと口を動かすパペット人形に、(なあ、マーチャン)とカズは笑った。
(うん、そうだね!)と言った後で、すっかり沈黙してしまった緑の帽子がトレードマークの茶色い犬人形がくわえているのは、ガス爆弾。かちっと口で詮を引き抜いたカズは、裏声で(ラヴアターック)とふざけた笑みを浮かべてぽいっと、ケンカをしているゾロとサンジ圏内に投げ込む。そして、集まってきていた人々の視線に、(あっは、気をつけてね。あと十秒)と笑うと、全力で逃げた。
数秒後、すさまじい轟音と衝撃波が、あたりを震撼させることになる。
「まちやがれ、カズ!」
「てめえ、殺す気か!いい度胸だな、隠れてないで出てきやがれ!」
どうして奇襲を食らったのに、無傷なんですか、と聞いてはいけない。なんで髪の毛だけとってもおもしろいことになってるんですか、とも聞いてはいけない。とりあえず、鬼もびっくりして逃げ出すほどの形相で、カズを探すが、全く見あたらないので、二人はことさら殺気立ちはじめた。
「ラブコック、てめーはあっちを探せ。おれはこっちを探す」
「なんでマリモに指図されなきゃいけねーんだよ。ってか待て。お前そっちじゃなくて、 こっちに行くんじゃねーのかよ!方向音痴のくせに、人を捜すな、バカ!」
「いちいちうるせえな!オレがアイツをぶった切ればいいだろうが」
「ふざけんな、オレが蹴り殺してやる」
「上等だ。まずは、てめーを三枚おろしにして」
「オレの台詞をとんじゃねー!」
ぎゃーぎゃー胸ぐらをつかみ合ってわめき散らす二人に(見ちゃいけません)と通りすがりの親子が足早に過ぎていく。(そーだよ、もっと見ちゃいけないよ)とカズは、にんまりと笑った。
「オレのために争わないで、二人とも!」
「誰が!」
「むしろてめーのせいだ!」
「あは」
「男のくせに、へったくそなウインクとばすんじゃねーよ!ってたんまたんま、言ってるそばからその手にかざすのはなんだそれ!だいたいまーちゃんてなんだよそれ!」
「味方に爆弾ぶん投げるバカがどこにいるんだ!」
「いるじゃん、ここに」
どかーん。
(エンドレス)
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