!?
船番なんてするんじゃなかったと、後悔する数分前。
連日徹夜なその人は、目元にクマができていた。
壁にもたれかかったまま、足を放り出してうつらうつらとしていたが、
そのうちこくんと頭が動かなくなり、ぐう、という寝息が聞こえてくる。
強烈な赤髪長髪、かつ金の目は二重。黙っていてもそうでなくても人目を
ひくそのまなざしは、今は閉ざされている。火薬の匂いの染みついた
作業着姿で、彼は無防備にねこけていた。
するり、と手が花開く。
ぞっとするような南国育ちの肌に、生える白。
冷たく長く、すらりとしたほっそりとした指が、ぐっと力を込めて彼の首に
食い込んだ。次第に息苦しそうにうめきはじめた彼にお構いなく、力が込められて
いくと、かっと目が開き、ぱあんっと手が弾かれた。
げほげほごほごほ、激しく咳き込んだ彼は目を白黒させて、首筋に付いたアザをなぞる。
苦しそうに大きく息をしたカズは、(ち、ちょっ)と涙目でロビンを見上げた。
「何すんだよ、姐さん!」
「あら、ごめんなさいね」
「ったく、ホントに何がしたいのかなぁ、マジで」
少しかすれた声で、カズーは悪態を付いた。
「時々無性に泣かせてみたい衝動に駆られてしまうの、ふふふ」
「・・・・・サドにも程があんでしょーが」
「可愛い人」
「姐サンの中でのオレは一体何なのか覗いてみてぇわ、ホント」
あの頃はあんなに可愛かったのに・・・と涙ぐむカズに、くすくすとロビンは笑った。
「声のでない貴方も素敵かしらとおもって」
「・・・オレは何も聞いてないオレは何も聞いてない」
ふふふ、と笑うロビンを見上げて(もうやだ)とカズーは密かにめそりと泣いた。
(何があったのよ、カズ)(ご機嫌斜めな姐さんだあ。多分遊郭に入り浸るとこでも見られちまったのかしらん?)
[ 23/32 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]