!?

船番なんてするんじゃなかったと、後悔する数分前。


連日徹夜なその人は、目元にクマができていた。
壁にもたれかかったまま、足を放り出してうつらうつらとしていたが、
そのうちこくんと頭が動かなくなり、ぐう、という寝息が聞こえてくる。
強烈な赤髪長髪、かつ金の目は二重。黙っていてもそうでなくても人目を
ひくそのまなざしは、今は閉ざされている。火薬の匂いの染みついた
作業着姿で、彼は無防備にねこけていた。


するり、と手が花開く。


ぞっとするような南国育ちの肌に、生える白。
冷たく長く、すらりとしたほっそりとした指が、ぐっと力を込めて彼の首に
食い込んだ。次第に息苦しそうにうめきはじめた彼にお構いなく、力が込められて
いくと、かっと目が開き、ぱあんっと手が弾かれた。
げほげほごほごほ、激しく咳き込んだ彼は目を白黒させて、首筋に付いたアザをなぞる。
苦しそうに大きく息をしたカズは、(ち、ちょっ)と涙目でロビンを見上げた。



「何すんだよ、姐さん!」

「あら、ごめんなさいね」

「ったく、ホントに何がしたいのかなぁ、マジで」



少しかすれた声で、カズーは悪態を付いた。



「時々無性に泣かせてみたい衝動に駆られてしまうの、ふふふ」

「・・・・・サドにも程があんでしょーが」

「可愛い人」

「姐サンの中でのオレは一体何なのか覗いてみてぇわ、ホント」



あの頃はあんなに可愛かったのに・・・と涙ぐむカズに、くすくすとロビンは笑った。



「声のでない貴方も素敵かしらとおもって」

「・・・オレは何も聞いてないオレは何も聞いてない」



ふふふ、と笑うロビンを見上げて(もうやだ)とカズーは密かにめそりと泣いた。





(何があったのよ、カズ)(ご機嫌斜めな姐さんだあ。多分遊郭に入り浸るとこでも見られちまったのかしらん?)



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