黙示



「どうして海賊になったか、だァ?けったいなこと聞くなあ、お前。 んなこと普通、酒盛りんときには聞かねえだろ、ビビ」


チョッパーの歓迎パーティ真っ最中。

カズはジョッキ片手に、(興ざめだ、興ざめ)とつぶやいたので、ビビは
(ごめんなさい)と謝った。(あやまんなくてもいいよ、癖なのか?)とカズは
苦笑して、大騒ぎしている野郎どもの輪から外れて隅の方による。
どさっ、とちゃっかりゾロからふんだくった酒を乱暴において、親父座りをした
カズは(まあ、すわれや)とビビに向けて甲板をたたいた。
酔っているわけでは無いらしい。明らかに、ゾロと同じくらいの量の酒が、カズの
身体に消えているはずなのだが。ビビが近寄る前に、絶妙なタイミングで横やりを
入れることも忘れない。指笛をとばしながら、カズはにかっと笑った。
ちゃっかりつまみまで用意しているカズから、(食うか?)と言われたので、
堅焼きせんべい片手にビビは話しかけた。


「どうして、貴方みたいな人が、海賊になったのかなって思ってたんです、ずっと」
「オレは、海賊に向いてねえと?」
「はい、正直。黙示の貴方は、海賊時代を終わらせることが夢だと、父から聞いていたもので」
「おお、懐かしい。大海賊って呼ばれてやがった奴らを片っ端から潰してった時代もあったなあ」
「瓢風は、世界政府の味方だと」
「いやいやいや、それはねえ。さすがはおてんば皇女だねえ。余計なことをべらべらと。
 船を下りるって決めてるくせに、余計な火種は勘弁してくれよ」
「ごめんなさい」
「いんや、だから別にかまやしねえさ。でもなあ、ビビ。一応修正しとくけど、オレが大海賊時代
 を終わらせようって思ったのは、海賊王にふさわしいヤツがいなかったからだ。間違っても
 三大勢力なんかの為じゃねえ。だから、今は違うんだ」


どこか羨望のまなざしでカズは、口に割り箸、というヨサクとジョニーの伝統をしっかり
と受け継いだ、船長の横顔を眺める。


「もし、アイツが死ぬようなことがあったら、オレは間違いなく最終手段にでるだろうよ。
 アイツ以外の海賊王は、認めないつもりだからな」
「そうですか」


ビビは(そうですか)ともう一度繰り返す。
(ああ、知らないのか。だからこの子は、んな野暮な質問かませるんだな)
とカズーが思っていたことは、知るはずもない。


「ビビ、覚悟はできてるんだろ?どんな正義を掲げても血は流れるもんだ。
 いつだって正しいのは勝った方っつーのが、世界の定理っつーもんだ。
 勝つ覚悟がなけりゃ、生き残っていけねえんだ、人も国も」
「はい」
「でもな、お前の考え方はぜってー嫌いじゃねえんだよな。むしろ大好きだ。
 だから、のってやってるんだよ、オレらは。だから、もっと頼れ」
「ごめんなさい」
「ここは、ありがとう、だろ?」
「はい、ありがとうございます!」


ビビは元気よく、頭を下げた。





(まあ、酔っぱらいの戯言だ。聞き流しとけ)(あ、照れてます?)(いわなくていいって、バカ)


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