パート15

なんとか帰還した俺たちを無理矢理追い出したロケット団は、さっさと退散してしまった。ラティアスはポケモンセンターに直行したけど、命に別状はないらしい。俺たちを待ち構えていたのは、ジュンサーさんの勝手に危ない真似をした罰と称したげんこつと説教。ついでに女性陣からのきっついビンタだった。でもラティ兄妹が救えたから、もうなんでもいいやと流してたら、反省しているのかとこっぴどく怒られた。でも無事を喜んでくれたし、お礼もいわれたし、感無量だ。

「自殺う?やーねえ、ボウヤ。ケジメはそういう意味じゃないわ。アタシたちは盗賊よ?ちゃーんと引き際は心得てるつもりよ」

ま、この子にはぜーんぶお見通しみたいだったけどねえ、と兄貴をみてほほえんだ警察に連行されていくザンナーはウインクした。リオンはこの世の終わりみたいな顔をしてたけど、姉にけしかけられて、二人あわせてラティ兄妹とカノン、ボンゴレさん、そして俺たちに頭を下げて謝った。じんときたオレは間違ってねえよな?やーだ、なんで坊やがないてるのよ、とザンナーに笑われちまったけど。うるせえ!あの場所に残った意味を聞いた俺とサトシは、ようやく二人が心の雫もどきの水晶体をもったままだったことに気付いた。忘れてた!そしたらこれのためよ、と沈みきっているリオンから渡されたのは、ぼろぼろに砕けきったガラスの破片。驚く俺たちにザンナーは笑い、リオンは泣いている。そもそもリオンがあそこまで執着したのは、古代兵器を実際にこの目でみて確かめて研究したかったからだそうだ。だから、このままではまた似たような自体を引き起こすと踏んだザンナーが最後まで残ったのは、リオンを叩き起こして、自らの手で破壊するよう荒療治を施すためだったらしい。復元方法もわかっているリオンだからこそ、二度とできない方法を知っているからとのことだ。なるほど。早く逃げなければ命の危険が迫る中、くらいの逼迫した状況下でなければ、リオンの悪癖の治療にはならない、だそうで。本物かどうか信用はできないので、ガラスの破片は研究所に回されている。二人を乗せたパトカーを見送った俺は、全部おわったんだと実感して、今まで張り詰めていた緊張感が全部全部吹き飛んでしまった。我慢できなくなって兄貴にだきついた。よっしゃあああ!よかった、よかったあああ!兄貴が生きてる!まじで生きてる!涙が止まらなくなって、オレはそのまま号泣してしまった。いきなりの俺の行動に仰天するみんなにサトシが説明してくれた。茫然としつつ、ぎこちなくほおずりされて、オレはもうたまらなくなってさらに抱き締めた。結局俺たちは一晩完徹してしまい、その日は疲れて死んだように寝てしまったのはいうまでもない。

次の日、俺たちは警察に説明するためジュンサーさんに呼ばれて、丸一日つぶれた。シークレットガーデンの秘密の関係で、この事件を公にするわけにもいかず、表彰することはできないけどとかわりにリボンをつけてもらった。すげえ!今まで集めてきた中で一番のレアさだ!モンスターボールにつけたリボンがまた一つ加わった。

さらに次の日の朝のことだ。ようやく起きたホテルのガラスを叩くやつがいて、驚いて窓を開けると兄貴がいた。はやくこい、といわれてあわてて身仕度をすませ、モンスターボールを腰に付けようとしたオレは、そのまま兄貴に拉致られてしまったのだった。まあいっか、もう危険はないわけだし。

つれてこられたのは、シークレットガーデン。あらいらっしゃい、とカノンが出迎えてくれた。ラティアスは今日の午後には退院できるそうで、いろいろ説明してくれた。シークレットガーデンの復旧作業が続いている。今回の騒ぎで判明した水のギミックは、リオンとザンナー立ち会いの実況見聞で判明次第、二度と発動することがないように破壊するとのこと。再び水に沈んだ古代兵器が日の目を見ることは二度とないと思いたいな。

「ねえ、サトシくんたちを午後にでも呼んできてくれないかしら?みんなで写真とりたいの」

「おう!もちろん!」

すると後ろからはやくこい、と急かされるように押されたオレは、カノンのあきれ顔に見送られてガーデンの先に進む。なんだよー、兄貴、どうしたよと聞いてもなにも教えてくれない。ただ進んだ先には、芝生のじゅうたんの広がる区画、風にゆれる木とブランコがあった。倒壊免れたんだこれとつぶやくと、ラティオスが木漏れ日のしたにいく。ゆっくりと進んだ。

ブランコに座って兄貴をみると、リュックが邪魔だとさされておろすと、うしろにまわって押してくる。あー、サトシとラティアスみてずっとやりたかったのかと聞いたら、うなずかれた。あっさりうなずかれた。照れながらうれしそうにたちのりしてくる。何この破壊力っ!うわあああ、でれた!兄貴がでれたっ!かわいすぎるよ、兄貴!オレは思わずだきついた。そうだ!オレはブランコから飛び降りるとリュックを探る。
「噴水、水晶体なくなったから、おくやつないだろ?これ、飾ったらよくね?」
ガラス細工の民芸品をならべてどっちがいいかとラティオスに押しつける。ひとつは水上レースのやつ、もうひとつはキャンペーンでもらった景品だ。もらったはいいけど、あっちの世界に帰ったら帰ったで置き場所困るんだよな。プレイヤーの目の届かないエリアなんて限られてるし。

いいのかと戸惑いがちに見上げてくるから、うなずいた。そしたら、心の雫を老夫妻にラティ兄妹が渡す場面が立体的に球体の中央にほりこまれたそれを受け取ってくれた。目を細めたラティオスが、おもいっきりだきついてきて、オレは後ろに引っ繰り返る。なんとか起き上がると、よしよしとせなかをなでた。あーあ、笑って別れるつもりだったってのに。こみあげてくるものがあって、肩を震わせる。オレだってさみしいよ、別れるのやだよ、でもな、仕方ないんだ。こればっかりはどうしようもねえさ。

オレは、ラティオスに額をくっつける。あはは、兄貴も泣いてんのかよ、おい。
「元気でな、ラティオス」
こくりとラティオスはうなずく。

「ラティアスやボンゴレさん、カノンたちと仲良くやれよ?」

こくりとうなずく。

「最後だしさ、ラティオスだけにははなしとこうかな。なんでオレがおまえらを探してたのかっていう、本当の理由」

オレは、話すことにした。アルトマーレを救うために自らを犠牲にした、水の都の守り神の話を。映画のラティオスの分だけ、兄貴には生きててほしいから。
まあ信じるかどうかはラティオス次第だけど。

「だからさ、一つ約束してくれねえかな?ぜったいに、なにがあってもさ、大切なやつを泣かせるような真似だけはしないでくれ」

つぶやいたオレに、力強くラティオスがうなずく。これなら大丈夫だよな!

「二度と会うことはな、いてててっ?!ごめん、ごめん、ラティオス。さっきのなしな、えっと、また会おうな」

うれしそうにラティオスはないた。



そしてラティアスを迎えにいったら、ここでサトシとラティアスのキスイベントが発生して、兄貴が無言でピカチュウを威圧し、気付かないサトシとラティオスに挟まれてピカチュウが悲鳴を上げたのは別の話。全員集合の写真を撮った俺たちは、翌日波止場にいた。行きと同じ船に乗り込み、ボンゴレさん、カノン、ラティオスとラティアスたちに見送られて、見えなくなるまで手を振った。そしてサトシたちに別れを告げたオレが一足先に船乗り場に一歩踏み出すと、いつものミオシティの船乗り場にたっていた。いつものプレイヤーの存在を感じる感覚が戻ってくる。オレはこっそりポケットを見て笑った。そこには、忘れようのない思い出が記録されている。

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