パート13

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ひと足早くラティオスと共に到着。シークレットガーデンの入り口を潜り抜けたオレがみたのは、ザンナーとリオンが逃走に使った白煙が立ちこめる庭園。サイレンが鳴り響き、物々しい雰囲気の憲兵さんたちがたくさんいて、警戒ランプがくらいはずの景色を明るくしている異常事態だった。火事と間違われてるのか?いいめくらましだな、くそ!ラティオスの優れた視覚を頼りにすすむ。カスミとサトシを探して奥にすすむと、ようやく白煙が薄れた地帯で、カスミとあった。何があったのかと聞くオレに、カスミは開口一番とんでもないことをいった。

「ロケット団が!?」

思わず声を上げたオレに、カスミがうなずく。大変よ!かけてきたので、息があがっている。まじかよ、完全ノーマークだったってのに!不意を突いた奇襲が成功してしまったみたいだ。やられた!ザンナーとリオンめ、手を組んでたのかよ、くそ!オレは舌打ちした。サトシとピカチュウがいない。何があったのかさっぱりだ。

「サトシとピカチュウがいないの!コウキ、みなかった?!」

「えっ、まじで?!ラティアスがガラス玉持って水路に突っ込んでくのが夢写しで見えたんだけど」

「ラティアスが?そんな……カレンたちに聞かなきゃ!急ぎましょ、コウキ」

「おう!」

ムクホークのはばたきで煙をなぎはらいながら進んでいくと、ようやく視界が晴れてくる。オレたちは息を呑んだ。ひどい!とカスミが憤りに震える。もういやな予感しかしねえ!

シークレットガーデンは、崩壊の極みを見せていた。無残にも掘り返された土に花壇が覆われ、蹂躙された水路はがたがた。あたり一面びしょぬれになっている。大木が押し倒され、通路すらままならない。

「ロケット団が、マシンにのってあらわれたの。それで噴水を破壊しちゃって!あのガラス玉を探してたみたいなんだけど、見つからないからって暴れまわりはじめてたのよ!」

説明をまとめるとこうだ。カスミとサトシはなんとか止めようとしたものの、やはり巨体の機械では太刀打ちできない。だから、わざとあおりたて、水路に脱輪させようとした。引っ繰り返った隙を狙って一気に叩く算段だった。だが、いきなりガーデン全体がゆれたかと思うと、満たされていたはずのみずかさが急激にさがり、人工池にはまったロケット団のマシンはそのままの勢いに任せて排水溝に飲まれるように消えてしまったらしい。そしたら、いきなりこの白煙がどこからともなくやってきて、あっという間にシークレットガーデン全体をおおいつくしてしまったとのこと。カスミに聞こえたのは、ピカチュウの悲鳴とサトシのあわてた声。そして横切ったくろいかげ。追い掛けようにも、視界はさえぎられたうえに、芝生すら見えないほどぼこぼこに耕されてしまった土地では足元すらおぼつかない。水路で戦闘を繰り広げていたポケモンたちをなんとか渦に呑まれるのを食い止めるしかできなかったらしい。アタシのせいだと落ち込むカスミをなんとか励ましつつ、オレはようやく追い付いたタケシとカレンたちと合流した。

カレンは青ざめていた。ふらふらなカレンの手を取りながら、ボンゴレさんが真剣さに焦りをにじませながら口を開く。

「ラティアスが一度カスミさんとサトシくんが心配で見に行ってしまったんだ」
「ラティオスが教えてくれたんだけど、白い煙につつまれたとき、ザンナーたちがピカチュウをつれていってしまったの!」

「ああ。どうやらラティアスに気付いていたらしい。助けたければガラス玉をもってこいと……」

「止めたの!でもラティアスいっちゃったわ!どうしよう、ラティオスはサトシくんと水路の奥にいっちゃうし、ラティアスはっ!ピカチュウはっ!」

水路は入り組んでいる。古代兵器までたどり着こうと思うと、たちまち迷子になってしまう。狼狽しきっているカレンに、ボンゴレさんが肩を抱いて落ち着きなさいと宥めるが、カレンは泣きはじめてしまった。無理もないわな、予想外のことがおこりすぎて頭がついていかないんだろう。サトシは主人公補正にプラスして無鉄砲だしまわり顧みないし、配慮が足るほど大人じゃない。ましてや親友のピカチュウの危機となれば、なりふりかまってられないだろう。カスミとタケシが宥める。オレはラティオスを繰り出した。

「オレいくよ!夢写しを辿れば迷子にならずいけるはず。ラティアスたちがあぶない!」

もういてもたってもいられず、オレはラティオスにいこうと指示して、後ろの静止を振り切って飛び乗る。
「カスミとタケシは、ポケモンたちをなんとか保護してくれよ!水路に逃げ遅れた水タイプがたくさんいたんだ!」

立ち止まるわけには行かなかったけど、いきなりなくなった水の流れに取り残された水タイプのポケモンたちが苦しがってるのを思い出してオレは叫ぶようにいった。警備員さんや憲兵さんたちがすでにパニック状態のポケモンたちの保護にあたっていた。

「ラティオス、兄貴たちを助けるぞ!死なせてたまるかよ!」

こくり、とうなずいたラティオスとともに、オレはすっかり水のなくなってしまった水路に飛び込んだ。
古代兵器が起動してしまったら、アルトマーレ中の海域や町並みはすべてザンナーたちの手に落ちる。窓やドアが鎖状のまがまがしい黒いオブジェに封じられる。大聖堂のプテラたちがよみがえって暴れる。水路のみちひきが自由自在にあやつれたり、竜巻や津波を起こしたりできる。でも、アシキものにココロの雫が触れると汚れるとされてるように、古代兵器が悪いのではなく、使う人間が左右する。リオンは破壊活動に魅入られて暴走。長らくアルトマーレの防衛本能を眠らせていた古代兵器が呼応する形で暴走。あとは、考えたくなかった。くそ、やっぱりこわしときゃよかったとつぶやいたオレに、ラティオスが首を振る。

再び始まる夢写し。ピカチュウと引き替えにガラス玉を渡したラティアスがつかまる。ピカチュウが助けようとするが、先に着いていたロケット団に邪魔されてうごけない。ラティオスとサトシが追い付いたが、ピカチュウを助けてロケット団と対決中。ラティアスが苦しんでる。リオンは古代兵器が起動しなくていじってるけど、ザンナーはラティアスをみた。ウインクされる。こっちが情報探ってんのばれてやがる!威嚇して吠えるラティオス。すぐ助けてやるからな、ラティアス!はやくおいでとほほえまれ、オレはくそ!と舌打ちした。

『すぐ宝石を頂くから、覚悟して頂戴な』

いつぞやの発言が脳裏をよぎる。まさかザンナーたち!思い当たるいやな予感に言葉を失う。いや、まてよ?オレはふと発言の違和感に気付いて、思い返す。そうだ!もしそうだとしたら、やれる!やれるぞ!待ってろよ、ザンナーたち、今までさんざん振り回されたつけ、一気にはらってやる!

もし失敗したら、今度こそココロの雫壊すからなとオレはラティオスにつぶやいた。









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「アリアドス、どくびしで退路を塞いでちょうだい!」



ザンナーの命令にしたがって、ロケット団の巨大なマシンが迫りくる中、アリアドスがどくに蝕まれるまきびしをふりまく。じわじわと逃げ道をふさがれていくピカチュウの目の前には、とうとう先ほどの二倍のどくびしが行く手を阻む。どくびしは一度目はどくにするが、二度目からはどくどく効果に上書きされてしまう。どくどくは時間が経過するにつれてダメージが倍増する。ロケット団のマシンに万全の電気対策されてしまっているピカチュウは、消耗戦を強いられており、相性は最悪。奥で捕まっているラティアスを助けるにはここで全力をだすわけにはいかない。力のセーブを強いられ、ピカチュウはぜいぜいと息があがる。アリアドスの動きを封じることはかなわない。



「かげぶんしんよ!」



ようしゃない追い打ち。放たれた電撃が倒したアリアドスはゆらりと消えてしまう。重ねられたかげぶんしんに、蓄積する疲労。頬にびりびりとしているはずの静電気は威力が弱まりつつあった。



「なーっはっはっは!いいぞいいぞ!やっとピカチュウが捕まえられる!」

「おとなしく捕まるにゃ!」



ピカチュウはいやだとばかりににらみつけて、声を上げる。だが四方はピカチュウのジャンプ力では突破できないどくびし。思う壺だとわかっていながら、ピカチュウはせまりくるマシンから逃れるために、どくびしの広がる瓦礫に飛び込んだ。



「つかまえ」

「ピカチューっ!!」



大好きなサトシの声だ。ピカピ!とピカチュウがうれしそうに声を上げる。暗やみの落ちる通路から、聞こえるサトシの叫び声。その音すら置き去りにして飛び込んだ青い塊が、よこからピカチュウをかっさらう。ラティオスの特性は浮遊。浮いているポケモンに、どくびしは通用しない。ラティオスのうえでしっかりと抱き締めたサトシは、大丈夫か?とピカチュウにきく。頬摺りしたピカチュウは、奥で囚われのみとなっているラティアスを指差す。ラティオスの方向転換。振り落とされないようしっかりと捕まったサトシたちの前に、ロケット団のマシンが立ちはだかる。



「あらん、妹思いね。ちょーっとだけあなたの妹さん借りてるだけなの。すぐ返すからみててくれないかしら」



アリアドス、バトンタッチよ!と命じて、能力を引き継いだエーフィがあらわれる。もちもの袋を下げているエーフィは一目散にピカチュウたちのところに駆けていく。あ、とサトシは声を上げた。なんと自らどくびしに突っ込んでいくではないか。エーフィは毒状態になってしまう。しかし、エーフィの額がひかる。突然、ラティオスが苦しみはじめた。ラティオス!?とサトシとピカチュウが動揺する。



「あら、坊や知らないの?エーフィはね、毒を相手に移し替える力があるの」



エーフィは木の実を食べて回復してしまう。ラティオスの飛行能力が落ちる。サトシは、ラティオスに一度距離をとってくれと訴えるがラティオスは首を振った。



「ラティオスもラティアスが苦しんでるじゃないか!今すぐやめろよ!」

サトシは叫ぶ。ピカチュウも叫ぶ。ザンナーはかたをすくめた。



「リオン、そうはいってるけどまだなの?」

「まだ交渉の席についてくれるこがきてないわ」

「だって。悪いけどぼーやたちはお呼びじゃないわ。ごめんね、先は行かせないわよ!」



ピカチュウとラティオスが一網打尽にできれば、幹部昇進の道が広がるとムサシたちの気合いも向かい風。マシンから繰り出される重い一撃を掻い潜ってラティアスに行こうとするが、エーフィの分身たちが行く手を阻む。



「エーフィ、シャドーボール!」



せまりくる攻撃。かわすので精一杯のラティオスは避けられない。ピカチュウは十万ボルトを浴びせるが、弾かれてしまう。サトシはボールをかざした。



「ヨルノズク、つつく攻撃だ!」



イロチガイのヨルノズクが激しい羽ばたきでシャドーボールに突っ込んでいき、ばあん、と攻撃を無効化する。ヨルノズクはノーマル、飛行。ゴーストは無効だ。ヨルノズクの奇襲でシャドーボールを放った本体に攻撃が命中する。ふるふる、としたエーフィは攻撃態勢だ。すかさずピカチュウの十万ボルトをがヒット。集中攻撃にエーフィは倒れてしまう。やった!ラティオスはすかさず奥に行こうとする。すると、おもむろに突っ込んできた鋼のこぶしが襲い掛かった。ヨルノズクが弾き飛ばされ、あわててサトシはボールに戻す。



「おれたちを忘れてもらっちゃ困るなあ」

「今度はアタシたちが相手よ!ザンナーはひっこんでなさい!」

「これでラティオスとピカチュウはいただきにゃ!」

勝手なこといっちゃってまあ、とザンナーは笑う。ラティオスはじわじわとどくどくに蝕まれ、苦しそうだ。サトシとピカチュウは、戦うのは自分たちだからおろしてくれ、待っててくれと説得するがラティオスは頑なに首を振る。ならばロケット団を倒すしかない、とサトシは前を見た。



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