第二十四話

「えええっ、コウキ、ポケモンリーグ出ないのかっ?!楽しみにしてたのに!」
「あはは、ごめんな。もともとお嬢に頼まれてカントーにいたけどさ、いつまでもいるわけにはいかないんだ。シンオウ地方に帰らなきゃ」

「そっかあ……なら仕方ないよな。あっちについたら連絡してくれよ!」

「うん、無理。オレ忙しいんだ」

「ちょっ、ひどいぞ!コウキ!なんだよその扱い!」


むがーっと怒るレッドにオレは舌を出して笑った。


ブルーやレッドといった、オレが新米のタマムシジムの門下生、もしくはロケット団対抗組織に感銘を受けてはるばるシンオウ地方のフタバタウンからやってきたトレーナーだと知る人間にはこうしてお別れの挨拶に回っていた。空手大王と門下生のみんな、ものまね娘一家はもう済ませた。

薄情だけど、わざわざあるかもしれない未来からきましたなんていちいち説明するのもめんどくさいし、必要もない。いつかえれるかわからないけど、ポケスペだってたちいちオレのキャラはいつか出るはずで、レッドとあうひがきたら、その時点でオレの不自然さに気付く日がくる。おもしろいじゃん、黙っといたほうが。のちにグリーンに全部説明聞いたときの二人の顔が浮かんできて、オレはこっそり笑った。何笑ってんだよ!とレッドに追い掛け回され、オレはベランダに逃げ込む。



「随分さわがしいな。食事くらい、静かにできないのか?」

「いいじゃん、別にさ」

「………コウキ、チャンピオンリーグに出ないって本当か?」

「盗み聞きは犯罪だぜ、兄ちゃんよ。へへ、まあ、な。明日にはカントーをたつよ」

「そうか。まあ、なにか有力な手がかりでもあれば、あの女経由で教えてやる。…元気でな」

「ぐ、グリーンがでれたっ?!明日雪か、やめとこっかなあ」

「おい」



冗談は冗談だって受けとめてくれってば、とあわてて諫めにはいる。


グリーンみたいに、オレがあるかもしれない未来、平行世界の人間だと知る一部の人たちには、ジョウト地方にいくと伝えてある。さすがにシンオウ地方にいくには渡航費旅行費、考えただけでも頭が痛くなるくらいのお金がいる。報償金やもともとの所持金あわせても、草なし根の旅に路銀は事欠かないし。サカキの言葉を信用すれば、オレをこの世界に止めるなぞの力が働いてるらしい。だから突き止めないと帰れないらしい。考えれば、該当するのは時渡りの力を持つセレビィ、あるいはシンオウ地方の伝説しかいない。調べてみる価値はある。単に行きたいってのもあるけど、さすがに帰還したらすでにデータ消されてましたなバットエンドはごめんだから、もうポケスペにかかわる気はない。


今までのよしみで、お嬢たちは協力してくれるらしいし。このコネをつくるために今までの走り頑張ったってのはあるからな、あはは。


「グリーンも元気でな」


さて、そろそろ挨拶まわりもすませたし、パーティーのディナーでも堪能しますか!オレはグリーンに会釈して、テーブルに戻った。


「こーんな美女ほっといて、挨拶まわり完了?随分ひどいのね」

「あ、ブルー、そんなとこにいたのかよ。探したぜ」

「うふふ、そういうわけだから、ごめんなさい」


しつこい男性陣からのアピールをウイングひとつでさらりとかわし、ブルーがやってくる。話をあわせてくれといわれて、オレは窓際まで追い掛けた。つか、そのドレスはどこからとってきたんだよといぶかるオレに、失礼ね!お断わりしようと思ったら、あなたのお嬢さまにご好意でいただいたのよ!とドレスをつかんでまわった。いやべつにサービスいらないから。


「ジョウトになんのようかしら?まさか、ロケット団の情報でも?」

「ん、まあ、そんなとこだな」

「面白そうじゃない、アタシにも協力させなさいよ」
「だか断る」

「ほーんとつれないわね!」



中途半端に盗み聞きは勘弁してほしいぜ、説明にごすのめんどいし。

ブルーが頭の回る子でよかった。勝手に邪推してくれたらしく、本気で話は聞く気はないのかあっさりひいてくれた。



「コウキがでないなら、アタシが代わりに出ようかしら?ポケモンリーグ」

「あ、まじで?がんばれよ」

「ええ。じゃあね、コウキ。アタシの弟に会ったらよろしく」



は?ブルーって弟いたのか?3巻までしかしらないオレは、生返事して、いい金ずるを見つけたらしいブルーが人込みに消えていくのを見届けた。


「コウキさん」

「あ、お嬢」

「パーティーお楽しみいただけてるようで、嬉しいですわ。どうぞ、最後のカントーの夜をご堪能くださいな」

「ありがとな、エリカ。今までいろいろありがとう」
「いえいえ、コウキさんのご助力には幾度も助けられましたもの。これからは私どもがコウキさんに協力する番ですわ。もし困ったことがありましたら、こちらまで連絡くださいな」



差し出されたのは、一度もジムの門下生としてジムで草タイプを使ってないのに、便利だからと作ってくれたオレの名刺。オレが動きやすいように、ジムの門下生の登録はそのままにしてくれるらしい。ホントありがとう!


「お時間、よろしいかしら?」

「ん?」

「コウキさん、ポケモンリーグには参加なさらないのでしょう?おそらく戦えるのも最後ですし、最後のバトルと行きたいのですけれど」

「お、いいね!じゃ、いくか!」

「ええ、では、まいりましょう?」

「りょーかい!ま、だからって容赦はしないんでよろしく!」

「あらあら、私もですわ。それに、コウキさん、私どもはいつでもあなたをお出迎えいたしますわ。もし、またこの世界、この時代にきたら、遠慮なく連絡してくださいね」

「へへ、わかった。ありがとう!一生忘れないよ!」

握手をかわす。


オレたちはこっそりパーティー会場を抜け出し、ジムにむかったのだった。


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