第十八話

ヤマブキシティは四方を関所に囲まれているので、そこに勤めているオレンジ色の制服を着た警備員が買収されているとなると、一般人の立ち入りは不可能となる。しかもどれだけのポケモンを使っているのか謎な、バリアが張ってある。物理攻撃も特殊攻撃も無効とか、どこのヌケニンだよ、しかも改造のミカルゲかヤミラミが持ってるに違いない。ポケスペはどうやらオレの世界いじょうなテクノロジーを持ってるらしい。すごいなあ。さすがはシルフカンパニーってとこか。一応試したんだよ、かわらわり。だめだったか、ルカリオ。ありがとな。ボールに戻して、一応関所のなかに特攻をかけてみる。


「ああ、ありがとう」


さしいれですよとさしだした「おいしいみず」。あっさり受け取るのはどうかと思います。一応確認したみたいだけど、何もしてないし疑われるいわれはないんだけどな、たかが16のクソガキがおっそろしい子と考えてるとは思うまい。さりげなくいこうとしてみた。


「あー、だめだめ。立ち入り禁止だよ」


制止された。ですよねー。レッドやグリーン、そしてブルーがだめだったわけだから、いくらゲームイベント踏襲したところで無理だよな。まあダメでもともとだったから、あっさり引き揚げた。ブルーのお色気でも無理だったんだし、女装しようかとかあほなことを考えたんだけど、お嬢にぶん殴られそうだったからやめた。どうかしてるな。まあ11歳の女の子にくらり、とくるとかぶっちゃけロリコ(げふんげふん)はだめだめ犯罪だ。ある意味安心した。


「物まね娘さんに、お届けものなんだけどさ、仲介ってできないの?」


わざわざトキワのレターフレンドが郵送したいけどできないって依頼されたんだけどさ、とジム所属を明かす名刺を渡してみた。ピッピ人形と携えた手紙。良心がとがめるのか、一瞬ゲートの人は顔を曇らせ、迷いが生まれるものの、首を振った。結局イエローは忠告どおり有名なニューラ宅急便に頼んだみたいだけど、ダメで送り返されてきたらしい。で、連絡先に転送されてきたので、お嬢を経由してオレはもってるわけでね。たしかものまね娘の親御さんはシルフカンパニーの技術者だったはずだ、ロケット団に買収されたのかそれともヤマブキの住人みたいに軟禁されて、脅されているのかはわからないけれど、正直厄介さが予測できる。まー仕方ないか。お嬢に相談してみよう。オレはハナダシティに逆戻りするはめになった。













ラグラージが嬉しそうだ。イワークにイシツブテにワンリキー、ズバットだ、相性的に考えて無双できるので、楽勝だろう。それに加えて、オツキミ山とちがってこの洞窟はパラスがいない。ひんやりとした涼しい気候ながら水脈がちかいのか、こんこんとわき出した水が道を作り、ときどき足もとの地盤すら緩くしている。足場が悪く、ときどき躓くので、オレはひたすら整備された観光向けの手すりやロープをたよりに進むしかない。あいにくフラッシュはもっていないので、今にもきれそうな電光が設置されている中を歩いていくしかない。もっと整備すれば観光地にできそうなのにもったいない。



ただいま、イワヤマトンネル攻略中。アイテムが回収されてないってのはいいな!それにしても、ながかった。地下通路通って、トラウマのシオンタウンを一泊して、トレーナーをなぎ倒しながら登山して一泊。イエローと会った時に大量にアイテム購入したのは、お嬢に案内された地図の目的地がイワヤマトンネルの結構な奥深くの地下水脈と合流する、トレーナー達が抜ける時に一度休憩する地点だったからだ。シルバースプレーこれで34本目。消費はえー。50本もあったのに、もうリュックが軽い。ゴールドスプレーより、大量購入する時にはお得になるからさ、試してみるといいよ。オレは疑問だった。イワヤマトンネルの先は発電所だが、ポケスペではスルーされてた場所だ。この世界ではたぶん時期的に考えてマスターボールの開発は終了していて、ロケット団によって占拠され、しかもとっくにサンダーは捕獲されていたはずだ。だって捕獲時にでんじはしか覚えてないサンダーが、レッドの前に現れた時には10万とかかみなりとかするんだ、レベル上げも技マシン利用も終わってる。まーた裏イベント?オレはとりあえず先を急いだ。オツキミ山いらいだ。





「なにしておるんだ、この先は危険だぞ?」





山男のおっさんが声をかけてきた。は?なんで?たしかにトレーナーを見かけなかったけど、おっさんがいるんなら別におかしなことはないだろうに。もしかしてがけ崩れで封鎖されてるとかロケット団が占拠しているとか?とオレは考えるけど、お嬢に指示されたのはポケモンセンターだ。行くしかないっての。オレは山男に聞いた。


「この先は発電所しかないが、ロケット団が占拠している。ポケモンセンターは警察が陣を張っていて、封鎖しているんだ」

「いや、警察に合流したいんで」

「やめておけ、子供じゃなにもできんよ」

「困りますって。オレに指示しできるのは、オレとお嬢だけって決めてるんで」

「強情だなあ。無理にでもとめるぞ!」





立派に大人をしてくれるのはうれしいが、余計な御世話だ。おっさんはいいのかと聞いてみると、お前さんのようなやつを止めるのがっさんの役目だろう、と笑われた。なるほど警察の人か。関係者の人か。まーたお嬢が事前情報を教えずにいってこいって任務を課してきたな、こりゃ。オレは頭が痛くなった。まあいいや、ようするにおっさんをぶった押せばいいわけで。簡単だな。と思いつつモンスターボールを構える。ラグラージは雑魚いなしでPPが死んでるから、他のやつをだすか。いってこい、とモンスターボールを投げる。おっさんもくりだしてきた。サワムラーか。




「ゴウカザル、みがわり!」


まずは様子見だよな。久々に参戦できてうれしいのかやる気満々のゴウカザルはみがわりをくりだしながらも、はやく攻撃させろとアピールしてくる。おちつけよ。


「カウンター・・・・・・うぬぬ、ふはつか。いいだろう、マッハパンチ!」


蹴れよ!と思うのは無粋なのか。


「ゴウカザル、大文字!」


さすがは初代組、とくぼうたけえ。あー、判断みすったな、ここまで減らないとは思わなかったな。素直に2発うっときゃよかった。焼けるものの、ふりはらったサワムラーがファイティングポーズ。


しばらくこう着状態が続く。身代わり連発とマッハの繰り返す。よっしゃ、これで実が発動できるぞ!マッハパンチに踏みとどまったゴウカザルが木の実をたべ、とくこうが一時的に上昇する。ああもったいない、でもまた増やせばいいんだし、我慢我慢。


「これで、堕ちてくれ!大文字!」


もうかとタイプ一致と大技と実の効果で、すさまじい炎がおそいかかる。


「甘いわ!マッハパンチ!」

「まじかよ、急所とか・・・・・・!」


あーもー!本来なら耐えられるはずのマッハパンチが急所を貫いた。倒れたゴウカザルを戻す。ごめんよ。




「たのむ、ルカリオ!」


波動の勇者らしいけど、未だかつて声を聞いたことはない。


「飛びひざ蹴りだ!」

「よっしゃ、外れた!ルカリオ、インファイト!」   



とびひざげりが失敗し、豪快に石壁に激突したサワムラーに追撃する。だいもんじのダメージと相まって、立ち上がることはなかった。ぼうぎょりょくととくぼうがさがる。       
                 

     
「いけ!ニョロボン、ビルドアップ」

「ルカリオ、しねんのずつき!」


うげ、同足か。こうげきとぼうぎょが上昇したせいで、思ったよりダメージが効果抜群なのに与えられない。タイプ不一致は痛いな、インファイトの方が良かったか。うーん、つっこんでくるか?それとも、さいみんじゅつ絡めてくる?一か八か、オレはかけに出た。


「ルカリオ、先取り!」


何が出るかな。何が出るかな。モーションが見覚えのない構え。おっさんは驚きの声。ニョロボンは繰り出そうとした技を盗みとられて驚いている。

ルカリオは集中させると、勢いよくニョロボンに突っ込んでいく。攻撃技だったのか、さいみんじゅつかと思った。そして、一気に腕をニョロボンのぐるぐる巻きの模様めがけて叩き込む。ばき、と擬音が聞こえてきそうな音だ。さすがにし止められなかったが、ニョロボンの様子がおかしい。足取りがふらつき、おぼつかない。もしかして、爆裂パンチか?!命中すると100パーセントこんらんする、命中率50パーセントのカイリキー御用達の技!こええ、もし当たってたら耐久紙なルカリオじゃ堕ちてた。はずれてくれ!と祈っていると、振りあげられた拳は、自分に落ちていく。らっきー!よく当てたな、ルカリオ!出番が放置されてたのそんなに恨んでたんか、ごめんよ。ほめると、まんざらじゃなさそうに鳴いて、モンスターボールに戻って行った。ゲンさん、あんたのくれた娘はすっげー負けず嫌いです。


「オレの勝ちだから、先行かせてもらうよおっさん」

「仕方ない。だが、このまま行ってもまた追い返されてしまうから、これをあげよう。おじさんも引き返すから、ついてきなさい」

「はーい。許可証?って・・・・・・・ちょっと待て、おっさん」


なんでセキチクと刻まれたバッジをおっさんがもってんだよ!とあわててレは背を向けて歩きだしたおっさんを追いかける。


「なんだ、エリカから何も聞いていないのか?おっさんはこれでも元ジムリーダーなんだぞ?はっはっは。まあずいぶん前にジムリーダー抗争で敗れてからは、道場をやっているがな」

「・・・・・・・もしかして、カラテカ大王?」

「ああ、いかにも。ヤマブキを封鎖されたときに、門下生ともども追い出されてしまってな、エリカに声をかけられたというわけだ。あいにくジムは非公認だから、持っていても公式バッジではない。ポケモンリーグに挑戦しようとはするなよ?ポケモン協会に怒られるからな。だが、今は非常事態だ。バッジの効力、すなわちレベル70以下のポケモンの使役とすばやさの補正は変わらんそのバッジは、同志たちに持たせているというわけだ」


おっさんは振り向いて、肩をたたいた。


「ようこそ、コウキ。仲間として歓迎しよう。我々の任務は、主に救出と警護。ヤマブキに残された人々を一日でも早く救出するために動いている。エリカに代わって、君にはこの任務にあたってもらいたい」


渡されたのは、写真。イエローに聞いていた少女がそこにいた。


「シルフカンパニーの研究者たちは人質を取られている。各地に分散して監禁されているのだ。そのうち、この子を救出してもらいたい」

「場所は?」

「わからんのだ。彼女の父親はシルフの重役。おそらく別の場所に単独、という可能性が高い。まずは、発電所に捕らえられてる人達を、明日の早朝、作戦を開始して救出する。そこでなにか情報がつかめるはずだ。協力してくれ」

「了解」
                 



















翌日、ただちに任務が決行され、女性3人子供4人が保護された。だが、そこにサンダーはいなかった。
物まね娘は、ひっとらえた下っ端いわく、タマムシシティのどこか。わかるかな、と挑発したしたっぱに、ゲームセンターだってよ、お嬢に連絡、とおっさんに進言したオレに、したっぱはあんぐりと口を開けた。ざまあみろ。


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