第十四話

コウキお兄さんのポケモン育成講座、はっじまるよー。なんちゃって。ごめん調子に乗った。プレイヤー仕込みのネット知識をほんの上滑り実行している程度のにわかが、言っても説得力ないよな。そう、ひけらかしたいだけ!あはは。黙ればいいとか言わないで。



ポケモンを育てるうえで大切なステータスが3つほどある。

種族値、個体値、努力値っていうんだ。


種族値っていうのは、いわゆるHP,こうげき、ぼうぎょ、とくこう、とくぼう、すばやさのこと。それぞれのポケモンという種族によって数値化された能力のこと。いわば才能。ちなみに剣の舞とかして、ステータスがあがったってのは、ここの部分が反映したことになる。ポケモンの性格は、ここのパロメータの上下に関わっていて、たとえばゆうかんなら、素早さが上がりにくくて攻撃が上がりやすかったりする。伝説のポケモンが強いのは、この数値がとんでもなく高いから。でも高けりゃいいってもんでもないんだ、とくこう、とくぼうが高くても、HPが低いと一撃で沈んじゃうことなんて多々あるし。これを補っていくのが、ポケモンの育成だったり、バトルでのトレーナーの力量だったりする。奥が深いよな。


次に個体値っていうのは、いわば個性って項目で記されている隠しパロメータの一つ。これは同じ種族でもそれぞれ違う。各種族値の項目に、0から31までランダムに与えられてる。基本的にバトルタワーなんかのリーダーは全部の個体値が31のポケモンを持っていることが当たり前。種族値に上乗せされるラッキーポイントと考えていい。ポケモンを極めようとする人の中には、性格を考慮しつつ、ネット上である個体値計算をにらめっこしながら、懸命に孵化作業と厳選に躍起になってる人達がいる。種族値と個体値はいじれないからね、どこぞの無法な機械に手を出さない限り。こういう人たちが全国大会に出てきたりするんだ。


最後に、努力値という項目がある。これは文字通り、がんばった分だけポケモンが強くなるよっていうパロメータ。トレーナーが唯一いじれるポケモンのステータスでもある。コラッタは素早い、ワンリキーは力が強い、といったようにポケモンにはそれぞれ抜きんでた能力をもつ者がいて、それを倒した経験がたまった分、その能力をポケモンも挙げられる、というステータス。ほら、経験ない?序番でポッポばっかり倒してたら、素早さだけ以上に上がっちゃった的な。まさにそれのこと。1体のポケモンにつき、500の努力値を振れる。ただし各個体値には最高で250(実際反映されるのは252)。性格と個性しか考慮しないオレが唯一してることといえば、せいぜいこれくらい。タウリンなどのドーピング剤が底上げしてくれるのがこれで、1つにつき10上げてくれる。ちなみにポケルスはその努力値を2倍くれるという育成する人からすればとても楽チンなウイルスだったりする。

まああくまでこれは、全国制覇後のやりこみ要素だ。ストーリーモードでこんなこといちいち考慮して、旅してるやつなんていないんだけど。




なんでこんなことわざわざ長ったらしく語ったのかというと、今まさに(なんでピジョンばっか倒さなくてはいけないんだ)とばかりに飽きた様子で見上げてくるピカがいるからで。





はあ、とオレはため息をついた。





すっかり入れ替わってしまったモンスターボール。いつ入れ替わったんだろう、まいったな。まあもうすでにグレンジムのバッチもってるから問題ない(70以下ならポケモンは言うことを聞いてくれる効果がある)んだけど。

でも努力値振り、中途半端で終わらせるのも、なんかむずむずする!
というわけで、オレはシオンタウンからいける地下通路の前で、せっせこ草むらを歩いていた。ニョロはガーディ倒してもらわねば。せっかく入れ替わったんだし、1つのパロメータくらい強化してあげないとな。


「ピカ、電気ショック!」


冒険中に気にしなきゃいけないのは、PP。なぜなら回復アイテムは非売品、ポケセンでしか回復不可能。だから電気ショックに10マンボルトを上書きしないレッドは正しい。PP15ってすぐにつくからねえ、PP30はありがたいって。グリーンみたくどくどく仕込むのもありかもしれないけど、技構成をいじる気はないからなあ。オレにできるのは、アンクルつけてひたすらピジョン・ポッポを倒してあげること。ドーピング剤奮発したんだ、感謝しろよー。数少ない努力値マイナスにする木の実あげて、わざわざ調整し直してんだから。

言わずもがな一撃。さすがは相棒補正かかってるピカ、レベル差なんて何ともないぜ!





「おーい、コウキ―っ!!」

「あ、レッドじゃねーか、どうしたよ?」

「どうしたよ、じゃないって!何でポケモン入れ替わってんのに、探しに来ないんだよ、コウキ!」

「あー、悪い悪い、忘れてた」

「忘れてたって……何言ってるんだよ、コウキー」


ぜえはあ言いながら、すんげえ怒ってるレッドに、オレはごめんごめん、と謝った。何体倒したからあと努力値はどれくらいだ、って永遠とカウントしなきゃいけないから、つい他の用事忘れちゃうんだよな。オレのポケモンならボックスに預けて休憩とかできるけど、レッドのポケモンだし。ちょうど一区切りついたところだったから、シオンタウンにもどろーぜ、といえば、レッドは言いたいけど体がついていかないのか複雑そうな顔でうなずいた。


「せっかくだから素早さと攻撃力強化したげようと思ってさ」

「ピカ達いうこと聞いたんだ、ラグラージ達ちっとも聞いてくれなかったのに」


シオンタウンまでの道中で、しょんぼりしてしまうレッド。でも、バトル中いうことは聞かないけど、オレを傷つけようとしたことはなかったし、むしろおとなしかったし、なんかコウキって変わった育て方してるのか?と言われた。いやそれは単なる仕様です、なんて言えるわけもないから、うなずいといた。世界が変わったくらいで変えられるほど単純じゃないのよ、すり込みってのは、と心の中で思う。そっかあ、ってよく分からない納得された。レッドの中で俺ってどんな扱いなんだろう。


「バッジがものをいうよな、こればっかりは」

「ってことはコウキ、もうハナダジムのバッジ持ってんのか?早いなあ」


ああそっか、普通グレンジムって最後らへんだっけ。なんという逆走。通りで追いかけてこないわけだ、とレッドは納得した。ああ、なるほど。レッドはオレとイレ違ってしまったと気づいてから、オレがあとから追いかけてくると思って待っててくれたらしい。それなんて待ち伏せ?いつまでたっても待ち人き足らずだから、逆走してきたのか、お疲れさん。レッドが暴走族つぶしてくれてたおかげで、オレは楽チンで怪獣マニアとかエリートトレーナーくらいしか相手しなくてよかった。


「いやー、ハナダジムはまだよ?」

「じゃあなんでいうこと聞くんだろ?」

「まだレベル超えてないからじゃね?」

「コウキはこいつらしかつれてないから、レベルが高くなりすぎてるだけだろ!これが普通なんだよ!」


たしかにポケモン図鑑埋めようと草むらを片っぱしから散策して、目星がついたやつをそこそこレベル上げして、トレーナーは最終パーティを決定する。まあおれみたいに図鑑無視して始めっからパーティ固定で捕まえといて、全国制覇時点で捕獲数10未満なんてまれだろうな。ちょっと傷ついたらしいレッドに、グレンジム先に突破したんだよ、と言っておいた。何はともあれ、モンスターボールを交換する。


「あ、ピカの素早さ上がってる」

「ただでさえめちゃくちゃ強いのに、さらに強化したんだ、感謝しろよー」

「ありがとな、コウキ」


ようやくついたポケモンセンター。タマムシまでのお誘いは丁重にお断りした。ブルーとのフラグはおるもんじゃないぞ、レッド。それにオレはお嬢に用があるしな。


[ 15/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -