第十二話

なあ、グリーン、おれらってフジ老人助けに来たんだよな?

そうだな。

宝探しに来たんじゃないよな?

何を今さら。コウキはこういう奴だろう。

嘘だろ!

ジム戦、ロケット団戦、そしてロケット団によって記憶操作された被害者としての一面、成り行きで過ごした強化合宿、カスミとの公式試合のレフェリー役。徹底的にコウキのちゃんとした部分しか見る機会のなかったレッドは、いささか幻滅している。一方で、お月見山でさんざんロケット団への奇襲を二の次にしたアイテム回収に付き合わされ、沈黙は苦手だとばかりに聞いてもいないのに身の上話をえんえんを語られたグリーンは、相変わらずのコウキにあきれを含んだ冷ややかなまなざしだった。


な、何やってんだよ、コウキ。何ってアイテム回収してるに決まってんじゃん。お供え物リュックに入れるなよ!あははナチュラルにRPG全否定すんなよ。隠しアイテムはこういうとこって相場が決まって…よしボールかほら。いいってってーなあ、主人公のくせに。落としモンに決まってるじゃんこんなあからさまな場所に隠してあるなんて…おおポイントアップだラッキイ!考えてみろよお供えにきのみとか飲みモンならともかく道具とかポケモンは使い方わかんないのにあげてどーすんの。こういうマックスアップとかドーピング剤よ?レッド。だからって…。あはは甘いなあレッド。幽霊が怖くてダンジョンクリアできっか!



実は半ば自棄になっていることを、二人は知ろうはずもない。







フジ老人が誘拐された時点で、いやな予感はしてました、どーも、コウキです。キョウいわくロケット団のカントー地方乗っ取り大作戦の前線基地としてつかうはずだったポケモンタワー、本当に何に使うつもりだったんだ?3年後ならラジオ塔をハイジャックしてポケモンを狂わせる電波云々カンヌン、ってこれなんて金銀?な作戦できるだろうし、何をしても幽霊のせいなら仕方ないってことになることを利用すれば情報操作?あるいは研究所のみのがくれ?いやいやサカキの構想にここはいってないし、ひたすら上り続けてるけど、隠し部屋があるわけではなさそうだし、何より整備された気配なし。おかしくね?まあ三幹部の一人の考えなんて、ただのトレーナーのオレにはわかんないんだけどねえ。

普通なら、アーボックを立体映像で指示し、それをグリーンの機転で玉砕!な展開なわけだけど、フジ老人が誘拐されたってことは少なくても部下たちや下っ端たちが待ち構えていると考えてよさそうなわけです。まあ、大将がいるとは限らないけどな。

というわけで、やってきました最上階。慎重に、古びた扉を開ける。そうっとレッドたちと中をのぞきこめば、やっぱり下っ端たちが門番、幹部らしき男たちがフジ老人を囲んで何やら大人の話し合いをしてるらしい。数の暴力は脅迫だよ、協力のお願いもくそもないと思います先生。ああ、痛そう、首しまってるって、ああ、ご老体にはもっと優しくしたげなよ、あんたら!はらはらしてるオレに、ちょいちょい、とつつかれたので振り返る。



「どうする?」

「とりあえず、門番はおれにまかせといて。おれの手持ちじゃ、たぶんPP尽きちまう」

「ああ、じゃあそのすきにおれたちで突入だな。ぬかるなよ、レッド」

「お前こそ、邪魔すんなよな、グリーン」



あはは、二人ともいい笑顔!

オレがこの世界の生まれだったなら、躊躇なく後ろからポケモンで奇襲とかできたんだろうけど、ねえ。やっぱりゲームシステムがすべてなオレとしては、一度に二人相手としても、まだダブルバトルに近い形にできるなら遠慮なく後方支援に回るよ!ごめんな、ガラガラ。太い骨はガラガラ専用アイテムなんだよ、うん。進化したくなかった心中はご察ししますんで、とりあえずいうこと聞いてな?もし無視されちゃったら、なくよ、オレ。



「いってこい、ガラガラ、ヨノワール」



異様に太い骨を気に入ってるらしくて、バトレボのモーションして相手を威嚇してる。お母さんの敵だもんな、気持ちは分かる。でも勝手に暴走しないあたり、よくわかってきたなあ、お前も。オレはポケモントレーナーだからね、仕込み手、調教師、訓練士、どっちがヒエラルキーが上か徹底的に教え込んでから育成してるオレの場合、懐いてるかはともかく、指示に従うかどうかが絶対条件なわけだ。オレはオレだからね、レンジャーでも育て屋さんでもないからな、悪く思うなよ?つまり、いうこと聞かない子をバトルで出したげるほど、優しくない。異例なんだぜー、本当ならお母さんの一戦、モンスターボールに戻らなかった時点で普通なら切ってるかんな、うん。まあガラガラは預かってるだけだし、そういう扱いをするわけにもいかないから、ほんと特別だよ、異例待遇だよ、後でちゃんと説明するからどういうことだとばかりに一つ目でにらむのやめてヨノワール。

「ガラガラは守る、ヨノワールはトリックルームな」

堅実に堅実に!って、ガーディのかみつくとゴルバットの怪しいひかりが飛んできやがった!あーっ、ラムの実が!しまった、木の実変えとくの忘れてたよ、もったいねえええ!どうしよう、ラムの実あと1個しかねえよ、うわあ。とかいい加減なところでショックを受けてる間に何とか発動して、素早さの遅い順に活動が行われることになる。

「ヨノワールは挑発、ガラガラはホネブーメラン!」

なんで地震じゃないかって?意外と便利なんだよ、ホネブーメラン、命中率90って微妙だけど、一発目が当たれば二発目は確実にあたるからなー、行って帰ってくる意味で。それに、実は攻撃判定は二回攻撃した、ってことになるから、もし威力が上回れば身代わりをつぶしてダメージ与えられるし、襷もつぶせる。何よりスピードが遅いせいで滞りがちな機動力だって、トリックルーム化なら一気に化けるんだから驚き。だからこの子が物理相手以外で活躍しようと思うと、やっぱりダブルが主流になるけど、そうなると単体の地面攻撃って重宝するんだよな、意外に。特性がひらいしんだし、元の世界に戻ったらギャラドス相手にくませてみるのも面白いかもなー。・・・・・なんて御託並べてみたけど、実はまだガラガラのレベル32なんだ、あはは。

よっしゃ、ガーディ撃破。いかくうざいよ、いかく。剣の舞入れてないんだ、勘弁してくれ。って、ああ、まじかよ、また怪しい光とか・・・!仕方ないので、オレはヨノワールを引っ込めた。相手はゴローンを繰り出してくる。

「頼むぜ、ピクシー」

ああ、この子はダブル用の子だから、シングル用に育ててたあのピクシーとは違うんでそこんとこよろしくな!

「ガラガラ、まもれ」

ピクシーにゴローンのマグニチュードとゴルバットのかみつく攻撃が集中砲火。頼むからひるまないでくれ、ピクシー!いつぞやのひたすらスカーフメタグロスがサイコヘッドでひるませまくって、完封負けを喫したことを思い出す。あんなんだれも勝てねえよ、ずっとオレのターンなんて、それなんて運げ?

「おっし、重力!」

ずん、と一帯が重くなる。ゴルバットは飛んでられなくなってるのもわかるように、重力って技は、恐ろしいことに飛行タイプにとって、地面タイプが「等倍」扱いになる。と、いうことは。

「ホネブーメラン!」

ゴルバットに当たっちゃうというミラクルがおこる。ヒットした骨が帰ってくれば、目を回したように倒れるゴルバット。難点はこっちもゴローンのマグニチュードがドンカラスの交代とかで無力化できなくなることな、浮遊すら無効化されちゃうしな、おそろしや。
一発くらいは絶えてくれよ、とおもいつつ堪える。さすがはガラガラ、防御はお墨付き。ピクシーもHPふりのおかげか、わりと固い。結構削れちゃうけど。

「ピクシー、きあいだま!」

もう一つの利点は、命中率の上昇。全部100パーセントに補正とかやばい。さてと、今度はなんだ?ドガースに、レアコイル?よし、じゃあこっちもメンバー変えるかとガラガラを引っ込めて、ガルーラを繰り出した。トリックルームが、終わった。









あなぬけのひもで縛り上げた下っ端から賞金とアイテムをふんだくっていると、奥の方でレッドの大きな歓声が聞こえた。グリーンもレッドも見事勝利して、フジ老人を保護しているところ。オレはガラガラを出したまま、そちらに向かう。感動の再会、と言いたいところだけど、キョウがいないこと考えると、どっからか突然アーボックが出てくる可能性あるんだよなあ。グリーン平気で殺してたよな、うへえ、ゲームだとどんなにありえない攻撃方法(絶対零度とか普通生命生きられないしな!)でも瀕死もしくは倒した、だしな。元になったゲームがMATHERっつーことがわかる数少ないなごり。いくら主人公がバットでぶん殴ろうが、野生の動物、人間は正気に戻った、おとなしくなった、倒した。絶対に主人公パーティは殺さない。正直こっちの世界にきて、オレの手持ちたちがストレスたまるのもこれが原因だったりする。オレの世界だとポケモンは絶対に相手を殺すまで本気を出さないし、そうやって教えてるしな。うん、世界の壁は厚い。


「君がコウキくん、か。すまんかった、わしのせいで」



軽く説明を受ける。なるほど必要資料が盗まれたから本人に問いただしに来たというわけか案外追い詰められてんなとにんまりする分結果的にフジ老人を危険にさらしてしまった。ごめんなさいとおれは頭を下げる。いいんじゃよとやさしい声が降りてくる。ワシが為したことは一生消えず影が付きまとうことは覚悟しておるよ。それだけのことをしたのじゃ。この子にも…ひどいことを。うっすらと涙が浮かぶ。ガラガラは擦り寄った。おお大きくなったのう。オレとレッドたちは顔を見合せて笑った。

ちなみにやっぱりラスボスは出てきたんだけど、グリーンが見事粉砕してくれたよ

[ 13/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -