その2


「オオスバメ、守れ!」


咄嗟の判断は、奇跡の連続だ。作られた透明の壁の完成度は、ぎりぎりだった。
先程とは違い、溜めなしで放ってきた光線。威力はおとるようだが、乱発されたら、
こちらのまもるの連続の成功率を考えると、やばいモノが有る。自分たちいがい、なぎ払われた先に見たのは、
ポケモン図鑑に乗っていなかったフォルムのデオキシスだった。
アタックフォルムよりもさらに細い体をしたデオキシスは、どうやらスピードに特化しているらしく、攻撃力はおとるらしい。
あれなら、防御力は低そうだ。だが、先制できなければわかっても意味はない。
後攻するにしても、もうタイプにあくタイプはおらず、しかも耐久に特化したポケモンなどいない。
ユウキの手持ちにきあいのハチマキもちのポケモンはいない。交換した瞬間、やられてしまう。
事実上、膠着状態だった。だが、それ以上に、いつも言葉を飲み込んでしまうはずのユウキは、怒りが理性を上回った。


「バカ!なんで戻ってきたんだよ、ミツル!」

「だ、だって……、うわああ!」


挟み撃ちと判断したデオキシスが襲いかかり、ミツルはチルタリスの機転でなんとか距離をとる、
全くポケモンに助けてもらってどうするのだ。なにはともあれ、どうにかできた隙をついて、再びオオスバメに乗って、
ユウキは追いかける。ダーテングがやられちゃったじゃないですか、と自らもう対等でいたいからとやめたはずの敬語が飛んでくる。
ポケモンを瀕死状態にさせることに抵抗を覚えるミツルは、まだ甘さが残っている。危なっかしくて仕方ない。


「何のためにオレが時間稼ぎしてると思ってるんだよ!台無しだ!」

「だ、だってユウキさんばっかり……」

「萌黄色のたまもって逃げるのが、お前の役目だろ!」

「う」

「まあ、今回ばかりは助かったけどな、さんきゅ」


一体二で、翻弄する。狙いを定めようとしたのを感じたので、ユウキは再び電光石火を命じて、喧嘩をふっかける。
かわされてしまったが、標的は決まったようで、再びフォルムがディフェンスに変わる。
すると、ぱぱぱぱぱ、という音を立てて、ヘリが舞い上がってきた。


「何やってんだい、デオキシス!あんたの標的は、そこの貧弱そうなガキだよ!」


ワインの怒号に、デオキシスの標的が変わる。フォルムチェンジしている隙を見計らい、ユウキは大きく旋回して、
再び雲に潜ろうと方向転換したチルタリスを追いかける。オオスバメと共に、急下降しながら、ユウキが叫ぶ。


「かせよ、萌黄色のたま。オレの方が早いんだ」

「いやです!」

「はあ?なんだよ、オレが頼りないのかよ」

「だって僕ばっかり迷惑かけてるじゃないですか!少しくらい、がんばらせてくださいよ!」

「ふうん。そんなにいうなら、今度こそ戻ってくるなよ?邪魔だから」

「………あ」


いくぞ、オオスバメ、と指示を転換し、ユウキは再び迫ってくるデオキシスに迎え撃つべく舞い上がった。
だが、迫り来るデオキシスは、ポケモン図鑑にはのっていないスピードに特化している代わりに、
攻撃力が低めのフォルムである。例の溜めなしの光線を乱発してくる。これは、まもるが何はつ成功するかに掛かりそうだ。
後ろを見れば、まだまだ雲の海には程遠い、ミツルとチルタリス。
足止めだけ考えているユウキは、それが終わったことは正直考えていなかった。いや、考えたくはなかったのだろう。
こんな高度から海に叩きつけられたら、絶対に死ぬ。


「オオスバメ、まもるだ!」


もはやパターンとかしてきた、絶対防御。かろうじて一発目は成功する。
あと何はつ、とモンスターボールを見たコウキは、絶句した。もうオオスバメが発動できるPPが残っていない。
しまった、とコウキは焦る。プレッシャーのせいで2回分の発動の気力を使わせていたことを忘れていたのである。
オオスバメは、初手でまもるをするのがパターンとかしており、ナルヴァ戦で1回。デオキシスとの戦いで3回使い、
しかも1回は無駄に使ってしまい、まもるのPPはオオスバメの限界だと10回が限度。つまり、絶望的である。
ポイントアップ使っとくんだったと後悔しても遅い。最後のあがきだとコウキは、攻撃を耐え切り、奇襲に転じた。


「電光石火!」


だが、デオキシスの学習能力は、それをさらに上回っていた。オオスバメの最後の気力を振り絞った先制は、
上空から落下するスピードと、備え持った反則級のスピードでさらに威力ある先制となったデオキシスに征されてしまう。
大ダメージをくらったオオスバメはカウンターするまもなく、叫び声を上げて撃墜された。放り出されたユウキは、
ボールにオオスバメを回収する。追撃で光を放とうと構えたデオキシスに、ユウキは目を閉じた。


「───!」


ミツルの絶叫が響いた気がした。










その瞬間、雲の海から放たれた緑の光が溢れ出す。どっかの映画の石のごとく青空にまっすぐのびた光を道標に、何かの咆哮が大空に響いた。

デオキシスは構わず落下していくユウキに、止めの光線を放つ。
だが、その緑の光はやがて青空の空間をどんどん歪めていく。どす黒くまるでブラックホールのように収束した光が、
禍々しいまでの球体となる。そして、それは白く激しい雷撃を伴いながら、その光線を打ち消すように豪快に
一直線の光線となり放たれる。雲の海が割れる。そしてはるか上空の海上すらも激しい水しぶきを上げさせて、広がっていった。
衝撃に飛ばされ、さらにダメージを受けたらしいユウキは意識を失ったらしく、そのまま落下していく。
ミツルは慌てて追いかけようとするが、チルタリスの飛行能力では追いつけない。デオキシスは空を見上げる。
すると、そこから現れたのは、緑の巨大な帯。咆哮をあげながら一直線に降りていく。
吠え猛る声に圧倒され、気圧されたデオキシスを置き去りに、それは雲の海を突破する。
追いかけようとしたデオキシスだったが、再びおおわれた厚い雲に見失い、あたりを遊泳していたが、
ロケット団のヘリを見つけるやいなや飛び去ってしまった。その雲の海の下はというと、とたんに、天候が急変していた。
雲の上は相変わらずの豪雨だったが、まるで切り離されたかのごとくぴたりと豪雨は止み、
曇っているにも関わらず雷轟や豪雨がよけていくという怪奇現象が起きている。
さらに落下して行くユウキを受け止めたそれは、ゆっくりと浮遊する。
突然の大型ポケモンの登場に絶句しつつ、光が溢れ続ける萌黄色のたまを抱えたまま、ミツルはチルタリスと共に走った。


「ユウキさん!」


無事だ、とでも言いたげに差し出された友人に、ミツルはほっとしてへたりこむ。
当の本人は気絶していて微動だにしない。すでに服はぼろぼろである。


「ありがとう、レックウザ。助けてくれたんだね」


泣きそうな顔をして、ミツルが笑う。うれしそうにチルタリスが鳴く。
無言のまま、緑色の体にユウキをのせたレックウザは、ゆっくりと浮上していく。


「待って!」


は、と思い出したミツルは、慌ててレックウザを静止させる。
そもそもミツルが萌黄色のたまをユウキから何が何でも守れといわれたのは、なんだったか思い出したのである。


「アクア団が、カイオーガを目覚めさせちゃったんだ。このままじゃシンオウ地方も、世界も大変なことになっちゃう。
カイオーガはハルカさんがなんとかするみたいなんだけど、早くこの天気をなんとかしなきゃいけないんだ。
ねえ、レックウザ、力を貸して」


これ、君の力なんでしょう?とミツルはいう。エアーズロック。
いかなる天気、およびその天気によって起こる有益性も不利益性もゼロにしてしまう。影響をなくしてしまうという力である。
ちなみに、ゴルダックがもつノーテンキと一緒なのは秘密である。レックウザは静かに顔をあげると、大きく息を吸い込む。
レックウザの咆哮が空を震わせる。この奇妙な空間が一気にホウエン地方を覆い尽くす。雨が降っているのに、
波が穏やかになっていく。雲が分厚いままなのに、雷が鳴っているのに、どんどん水位が通常に戻っていく。
どうやらカイオーガの力を上書きすることはできないが、力自体は抑えられるようだ。
ぐわんぐわんすると思われた咆哮も、どういうわけか全く影響はない。ふしぎな感覚である。
しかしながら、大きな衝撃であることに代わりはなく、ユウキは問答無用でたたき起こされた。
そして、超至近距離からのぞきこんでくる伝説のポケモンに、らしくなく動揺し、後ずさり、
落下しそうになって声を上げ、ミツルは声を上げて笑った。


2時間ご


今度はホウエン地方の森に雷が落ち、一部の天候に変化が生じ、炎天下が始まる。
レックウザは再び声を上げると、今度はまた土砂降りと炎天下のミックスが逆戻りしてしまい、
二人は慌てるが、その瞬間立ち上ったソーラービームが海に叩き込まれ、天候自体がただの穏やかな気候に戻った。
空の柱にまでユウキたちをレックウザは送り届けてくれた。ユウキはポケモンを回復させる。
あのポケモンなんだったのかな、と首を傾げるミツルに、ようやくユウキはポケモン図鑑の情報を伝えた。


「たった2匹しか見つかってないデオキシスを捕まえてるなんて……。
それに、なんでワインたちは、デオキシスをレックウザを狙ってたのかな?やっぱり、お金儲けのため?」

「さあな」

「この天気を変える力、すごいもんね」

「天気を変えるっていうより、一時的に空間を切り離して、安定させるって言った方が正しいだろうけどな」

おかしいな、とユウキはぼやいた。なにか気になることでもあるの?とミツルは聞く。ユウキは口を開いた。
レックウザとデオキシスの関連なんて4年前くらいなモノである。
あの事例自体、結構謎がおおく、研究者の好奇心を刺激したのか、
当時朝から晩まで父のそれ関連の話題を繰り返し聞かされたユウキはぐったりとしたものだが、今の今まで忘却の彼方だった。
興味のない詰め込みなど、こんなものである。デオキシスの生態なんてほとんどわかってはいないが、
デオキシス同士が争っていた理由が不明なことがひとつ。
縄張り争いにしては、必要以上の攻撃するなんて普通野生のポケモンはしない。そんなの人間だけだ。
二つ目が、レックウザがその争いに介入したという事実。もともと縄張りの侵入にはとても警戒心の強いレックウザだが、
場所が問題な上に、一体をかばったように見えたのが非常にまれな事例だ。
図鑑によれば、デオキシスは宇宙から来たウイルスが放射線浴びて生まれたポケモンで、オーロラと関係あるようである。
デオキシスの発見場所はべつに変ではない。だが、オーロラはオゾン層が薄い中で起こるため北極とか南極、
もしくは近辺区域でよく観測される。オゾン層に住んでいるレックウザが、いくら縄張りを犯されたとはいえ、
そもそも嫌うはずの地帯である観測場所に現れるなど、不自然きまわりない。
ましてや他のポケモンの縄張り争いを仲介するなど、本来するほど野生のポケモンは互いに干渉はしないのだ。
もしかしたら、ロケット団はその謎に気づいているもしくは、関わりがあるのかもしれないと邪推する。


「もー、サスペンスの見すぎだよ、ユウキさん」

「とりあえず、レックウザがねらわれたのは、なんか目的があんだろうな。レックウザ、心当たりは?」


レックウザは始終無表情だったが、否定も肯定もせず、そのまま長い尾を翻して空に帰ってしまった。
残されたのは、萌黄色のたま。二人は顔を見合わせていたが、ユウキがおもむろにリュックをあける。


「おくりび山に返しに行こう、ミツル」

「うん、そうだね」


そして後日、宝玉を返却したおくりび山にて、藍色と紅色のたまの驚異を思い知ったアクア団とマグマ団は解散、
それぞれのたまを返しに来たのだとユウキたちは知ることになる。





1ヶ月後





パワフルハーブ?命の玉?こだわり鉢巻き?見たことのないアイテムや木の実ばかりが並ぶ商品棚に
目移りしているユウキである。片手には籠が握られている。一つ一つ手にとって説明書と睨めっこしなければならない。
しかもこのエリアの棚はポケモンに持たせる道具の区分け。色分けされている隣のエリアはポケモンの育成に役立つ道具の区分け。
さらに奥には通常レベルアップや技マシン、卵技でしは覚えられないはずの技を教えてくれる、
もしくはここでしか手に入らない技マシンが置いてあるエリアが控えている。
どれも価格にすれば到底子供の手に届く代物ではないが、価格のそばには必ずポイントが表示されている。
ユウキは今まで全く知らなかった世界が広がったようで呆然とするしかなく、途方も無いとため息をつくしかない。
ショックすぎて涙すらでてくる。ハヅキが一足先に見た世界はユウキが考えているよりもずっとずっと長く険しいようだ。
まずはたまったばかりのポイントで、手持ちのポケモン達に合うアイテムに手が届くかどうかをまずは調べなくてはいけない。
メモ帳を広げてひたすら暗記しはじめたユウキは、アイテムの捜索に時間を潰した。気付けばもう一時間がたっている。
夢中だったので気付かなかったのだろう。籠の中はアイテムだらけで結構重く、ずしりとくる。
そろそろ昼飯にしようと大きくのびをしたユウキは商品棚の森をひたすら進む。広すぎてレジがどこにあるかさっぱり分からない。
そもそも棚が高すぎて客も賑わっていて見晴らしが良くない。ひたすら出会った常連客らしきトレーナーを捕まえて店員を探すしかない。
どうやらこの街は恐ろしいほどに自動化が進んでいるため、もしかしたら店員ではなくまた四方体がいくつも連結した
黄緑モニターの可愛い顔をしたロボットを呼んだ方が早いかもしれないが。
やがてエリアは一般人やポケモンバトルを見に来た観光客向けの限定商品やグッズ、
市販のフレンドリーショップで見かけるポケモン関連商品だらけの棚に差し掛かる。ユウキはいい加減疲れてきて歩みを止めた。
今は時間帯的に考えてマルチバトルの第一回戦が行われているころ。
だからバトルを観戦しているであろう観光客は当たり前だがいるはずもなく、このエリアはすっからかんで人が疎らだ。
ユウキの出場はマルチバトルではなく、ダブルバトルのみでしかももう終わったためまた明日だ。
ってことはだ。おもむろにキョロキョロと辺りを見渡したユウキは傍らにあった商品を食い入るように見つめるなり、
辺りの気配に過剰なほど慎重に気を配りながらそうっと手を伸ばした。


「ユウキくん、なにやってるの?」

「っ?!」


なんでよりにもよって今世界で一番会いたくない奴に名前を、しかも突然後ろから呼ばれなくてはならないのだろうか。
ユウキは凄まじいスピードで振り向くと、ぎょっとした様子で顔を引きつらせた。
しっかりと握り締めていたそれを後ろに隠してレジ籠をがさがさと乱雑に隙間をつくるとねじ込む。
そしてたまたま目についたでかい何かをろくに確認せず籠の上に置いた。動揺の余り声が出せずに棚に後退りするユウキを見て、
無論ユウキが挙動不審この上ない行動のうえにあからさまな拒絶とも取られかねない失礼すぎる反応をした真意を知るはずのない相手は、
ユウキとの間に横たわるややこしい問題からくる複雑な関係を勝手に脳内補完して謝罪してくる。
いや違うのだと訂正しようとしたが、その場合真意を話さなくてはならなくなる。
相手が持つ自分のイメージがまんざらでもないユウキにとってそれはいささか困る状況だ。ユウキの予想だと瓦解が目に見えている。
結局いつものごとく些細なすれ違いは片方が気付いたまま奇妙な形で進んでいく。
とりあえず、とユウキはぶっきらぼうに言葉を投げる。沈黙は苦手だ。


「なんでハルカがいるんだよ」

「あ、はは、ごめん」

「……父さん、また余計なことを……」

「私が頼んだんだ、オダマキ博士が悪いんじゃないよ」

「?」

「ユウキくん、最近エントリーコール出ないでしょ?」


ぎくりとユウキは肩を揺らす。やばい、最近ポケモンの育成に力を注ぐあまり充電すら忘れてカバンの中に放り込んであったのが
ばれたのだろうかと冷や汗が浮かぶ。
エントリーコールの存在自体すっかり忘れていたし、もしバトルの誘いがあっても適当に用事をでっち上げて誤魔化していたのが
ばれたのだろうか。ユウキは恐る恐るハルカを見ると、やはり怒っているようだった。


「酷いなあ、いくらわたしでもわかるよ。オダマキ博士が生放送に出てるのに手伝いしてるとか、うそつくんだもん。傷つくよ。
わたしとミツルくんを、そんなあからさまに避けなくてもいいでしょ?」

「……は?」

「またそうやって……はあ」


なんだかとんでもない事態になっている気配がしてユウキはいやな予感がした。このパターンだと大体がバトルになるのである。
ちなみにポケモンの育成に集中したくて嘘をついたのは事実だが、ハルカやミツルを意図的に避けたことはない。
それをいうならエントリーコールをかけてくるトレーナー、ジムリーダー、チャンピオン、元チャンピオンみんな平等に避けていた。


「ミナモシティで戦ったあとからだよ?」


あ、あ、あー、なるほどそういうこと。ユウキはようやく自分がポケモンの育成し直しに走ったのかを今更思い出した。
遡ることかれこれ1ヶ月ほど前のことである。


「ポケモン勝負してやろうか?俺がポケモントレーナーってやつを教えてやるよ」

「ちゃーんとポケモン育ててるか俺が確かめてやるよ」

「どっちがうまくポケモンをうまく育ててるか勝負してやろうか。まあ俺がミツル(ハルカ)に負けるわけないんだけど」


以上がミツルやハルカとのバトルの度に調子に乗って口がよく回った時に口走ったユウキの文言である。
今までは何だかんだで軍配はユウキに上がりそれなりにまあまあ、な感じだったのだが、問題は最後の発言の後、
初めてユウキは2人に負けている。完璧な作戦負けだった。
予想がことごとく読まれて先回りされ、なんとか盛り返そうしたが一歩及ばない。
もともとトレーナー歴ははるかに浅いはずのミツルやハルカの成長の早さに驚きと焦りを抱えていた日々を思えば、
抜かれたとはっきり自覚できた分漸く荷が降りたといったところだ。だがやはり悔しかったのである。
同時に中身はわりと冷静になり、口走ったセリフが無性に恥ずかしくなったのである。思春期だからと流せないのもまた思春期である。
おめでとう頑張れと言いながらうっかり悔しいとこぼしてしまい、しかもどっかのサングラスのおっさんに
悔しくて泣きながら立ち去るのを目撃され、ミツルやハルカにバラされるとか公開処刑にも程がある。どうやって会えと?
ユウキなりに考えたのが、いわゆる修行期間に強くなってみようというやつだ。
いつしか目標は手段にとって変わり、手段に夢中になっていたが。
ミツルやハルカからすれば後味悪い別れの後に音信不通、父に連絡をいれたら遠路遥々ここにいるとなれば仕方のないものである。
まさかホウエン地方を飛び出して、お隣の地方、ジョウト地方にいるなんて誰が思うだろうか。
もちろん、ユウキだってはじめはホウエンにあるバトルフロンティアにいくとつもりだった。
しかし、デオキシスとレックウザにあったことに目をつけた、デオキシス研究の第一人者に、
是非とも話を聞かせてほしいと直々に招待状が届いたのだ。ご丁寧に宿泊施設まで用意してくれている。
だからちょっとした観光のつもりで足を伸ばしたのだ。カントーリーグのチャンピオンがお忍びできていると
噂が立っていたこともあって、野次馬根性も若干あったことは否定できない。
でも、ハルカもミツルもこのことはしらない。内密に頼むってチームリーダーの人に言われているので仕方ないのだ。
よって、ユウキはいつものようにちょっと意地悪な言動に戻る。


「ちょっと頑張ればお前らにも負けないはずだからな、挑戦しようと思っただけだよ」

「ならなんで1ヶ月も音信不通なの?」

「育成してたら忘れてたんだよ」

「ほんとなの?」

「ほんとだよ」

「そっかあ、ならいいよ。ゆるしてあげる。でもミツル君にも連絡してあげてね」

「わるい」


ユウキくんが謝るなんてってハルカが驚いたので、さすがにユウキはちょっと怒った。


「ハルカはなんでここにいるんだよ」

「ユウキくんに突撃するついでに、久しぶりにコガネシティのお友達に会いに行こうって思ったの。
 ほら、わたし、お父さんの転勤でホウエン地方に来たけど、その前はコガネシティにいたっていったでしょ?
 今のジムリーダーやってるアカネちゃんに、トレーナーを始めたのって連絡したら、バトルしようって言われてね」

「ふうん」

「ところで何買ってるんですか?」

「……父さんに頼まれた買い物をしてただけだよ。別に俺はいらないんだけど」

「マルノームのぬいぐるみ?高そうだね」

「げ」


どけるとチルッコドールがばれてしまう。はあ、とユウキはため息をついた。三万五千円お買い上げである。

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