第5話

ポケギアを見ると、もうすぐで12時。道路を避けて、いい感じで木陰がおりている場所を見つけて、何個か目立つ石ころを道路に投げる。で、俺はよいしょっとリュックをおろして、中からバスケットを探した。今日こそはポケモン爺さんのところにおつかいにいこうって出発するつもりだったんだけど、お母さんがお弁当持っていくでしょう?って朝っぱらから叩き起こされた。おかげで眠い眠い。あくびをかみ殺しつつ、包んでいたバンダナを広げた。きょとん、としているワニノコに、昼飯にしようぜ、と俺はホーホーも繰り出す。





あっ……ワニノコがかまってほしそうに、こちらを見ている。遊んであげますか?

はい いいえ←


あ!泣きだしそう!





うああああ、ごめんよワニノコ!いっつもかまってあげてばっかだから、たまには意地悪したくなっただけなんだよ、許してくれ!すぐに抱き上げてはがいじめにしてやると、じゃれついてきた。このやろーっとくすぐってやると、ばたばたと暴れる。やめろ、脇腹は勘弁してくれ、くすぐったいって、やめれ!あはははは!けたけた笑っていると、どーんと押されてしまってひっくり返ってしまう。ばさり、という衝撃が襲って、視界が反転する。腰いてえ。あー帽子がどっか行っちまった。手探りで探すけどどうも届く範囲にはないらしい。諦めて起き上がろうとする。



それにしても、気持ちいいなあ、草むらがつんつんしてくすぐったいけど、あったかいし眠い。あー、空が青いぜ。放り出されたワニノコが近寄ってきて、おなかの上にのってくる。ワニノコをなでてやると、気持ち良さそうに目を閉じていたけど、すぐに服の袖をあぐあぐとかまれる。こらこら伸びるって。離せ、と抵抗してもなかなか話してくれない。あーもー、といいつつにやけが止まらない。



すると、視界に影が落ちる。ん?と空を見上げると、ばさばさ、とはためきながらホーホーが帽子を持ってきてくれてた。おお、さんきゅ、と手をのばして受け取とろうとすると、ひょい、とすんでのところで舞い上がってしまう。こらこら、何やってんだ、と起き上がろうとしてもワニノコがしがみついててうまく起き上がれない。だーもーなんだよ、お前ら!するとホーホーまで俺の上にのってくる。重い!重いって、どけ!うわ!器用に俺の頭を飛び越して俺の頭を乗っけてくれるのはありがたいけど、俺がねっ転がっている関係でつばが邪魔して前が見えない。つばの部分だけどけると、ホーホーがじいっとこちらを覗きこんでくる。そして、すり寄ってきた。あ、もしかして撫でてほしいのか?あーもーお前らかわいいな!苦しいからやめろと二匹から嫌がられるまでかまい倒してやった。




お弁当の中身は、木イチゴのジャムが入ったサンドイッチとおにぎり5こ、リンゴ2個、みかん1個、そしてハンバーガー2個。ハンバーガーはお母さんの得意料理、グレンの火山風ハンバーグが入ってるから、ボリューム満点。なんという不謹慎なネーミング。でも俺の大好物だ。大きさでいえば、メガマックと考えたらいいと思う。すっげーでかい。いくら俺でもさすがに食べきれない。もちろんホーホーやワニノコの分も入ってる。俺はナイフを手にとった。ホーホーは俺の生活リズムに慣れてきたのか、うつらうつらしなくなってきている。ごめんな、夜行性なのに。一口サイズに林檎を切り分けて、差し出すとおいしそうにつつき始めた。涎を垂らしているワニノコに笑って、俺はサンドイッチを差し出すと一口で食べてしまう。我慢できないのかお弁当に突進してきたから、あわてて取り上げる。ばか落ち着け、ひっくり返す気かよ。手をめいっぱい伸ばしてくるワニノコをたしなめつつ、俺はようやく俺の膝の上でおとなしくなったのでおにぎりを渡してやった。さーて、俺はハンバーガー食べるか。ようやくありつけたと思ったら、反対側からぐあーっと噛みついてくる。だーもー飯ん時くらい落ち着いて喰わせろよ!すかさずハンバーガーを渡すとようやくおとなしくなる。ああ、ごめん、ホーホー、ほらサンドイッチ。ちぎって渡してやる。毎度毎度の食事風景がこんなんだ、ゆっくりしてんだかしてないんだか。



「ったくもー、すんごい食欲だな、おい」



ホーホーと俺が同じくらいで、ワニノコが弁当の大半を平らげてしまった。片づけてリュックに入れる。出費大丈夫かな、ちょい不安だぜ。こういうところがゲームとリアルの違いだろうな、ポケモンも俺も生き物だから、生活費がかかっちまう。お母さんにバトルのたびにたまった賞金の一部を送金するのは、不可欠っぽいな。節約は大事だ。スーパーのバーゲンセールは日課になりそうだ。なるべく自炊しなきゃなあ、あーもーあんま元の世界とやってること変わんねえ気がするぜ、くそう、メンドくせえ。え?作ってくれる人いないのかって?ほっとけ!





案内爺さんからポケギアの地図機能をもらって、ヨシノシティをぬける。ランニングシューズがもらえなかったぜ、なんてこったい!木の実いれもおっちゃん家から回収して、ポケモン爺さんの家に急いだ。





ポケモン爺さん宅



お茶飲んでいってね、と藤色の着物を着た老夫人から湯のみを受け取って、すする。俺を真似してワニノコが飲もうとするが、そもそもあつくて持てないらしく、じいっとみている。実は猫舌で冷めるまで待ちたいんだけど、意地はって飲んでみる。喉元すぎれば熱さ忘れるとかいうけど、今度は胸が熱くてけっこう辛い。あらあら、と夫人はワニノコにミックスジュースを渡してくれた。おいしいんだけど、やっぱり熱いのは勘弁だなあ。しばらくお邪魔させてもらった。ありがとうございました、と帽子を取って、会釈。いいえ、またいらしてね、と手を振る婦人が見えなくなったところで、ポケギアを鳴らす。



「ウツギ博士―っ!いったいどういうことだよ、ポケモン爺さん留守じゃないか!」

「ええっ?!本当かい?」

「若いころのお友達って人が来て、一緒にキキョウシティまで出かけたんだってさ。一応お使いの用件聞いてみたんだけど、奥さんは何にも話聞いてないってよ。やっぱ直接会わないとだめっぽい?」

「あちゃー。ごめんね、ゴールド君。僕から君のお母さんには伝えておくからさ、キキョウシティまでいってくれないかい?」

「えええっ?!うそでしょ?じゃあオイラ、キキョウシティからワカバタウンまで戻んなきゃなんないの?!勘弁してくれよー」

「本当にごめん!この通りだからさ、ポケモン爺さんには僕から連絡入れておくから、ポケモンセンターに行ってくれるかい?」

「わかったよー」

「よかった、じゃあ頼んだよ!」



いつまでも突っ込むと思うなよ。







とっぷりと日が暮れる。黄金色の空に、帰っていく人たちと明かりのついた民家。やっぱり和風な建築物が目立つ。どっかからかカレーのにおいがする。アー腹減った!かつての鈴の塔(現焼けた塔)を端に発したのエンジュの大火のために建てられた火の見櫓が、立っている。あのまちこのひと万歳。あーはやくラジオがほしいぜ。


だー!やっと突破したぜ、30番道路!疲れた、と思いっきり伸びをする俺の隣で、HPが黄色表示、しかも攻撃技のPPが尽きてるワニノコがこてん、と頭を預けてくる。抱っこをせがんできたから、最後の気力を振り絞って7キロを担ぎあげる。リュックをかみつかれたら壊れちまう。俺の後ろを必死でついてきているから、戻るか?ってモンスターボールを提示したんだけど、意地っ張りなのか首を振ったっきり。うーむ、やっぱり外に出てる方がいいのかねえ?まあ大義名分でも許されたんは一匹だけだし、ゲートのお兄さんにもくぎ刺されたし駄目だな。往復すること5回、少しずつ少しずつトレーナーをなぎ倒し、ちまちまと進めたかい合ったぜ!ゴロウで予想ついてたけど、トレーナー達みんな強化されすぎだっつーの、畜生!コラッタとかポッポとかイトマルどこ行った!ヘラクロスとかバタフリーとかもきつかったけど、この二匹じゃ電気タイプは非常に鬼門だって言うのに、平気でメリープ三体とかミニスカートのお姉さん繰り出してくるから、危うく全滅するところだったぜ。うーむ、先にフラッシュとりに行って、洞窟いった方がいいかね?3つめまではイシツブテ大活躍だし。まあ、もうすっかり日が落ちちまったし、もう今日はポケモンセンターでとまるかね。一度キキョウジムに顔出してから、観光とポケモン爺さんのおつかい済ませたら、今度こそワカバタウンに帰ろう。序番のトレーナー達があんだけ強いんなら、ハヤトどんだけ強いかおぞましい!





「こら、逃げんなワニノコ!」


脱走しようとするワニノコをひっとらえて、はがいじめにする。カレーうまかった。ホーホーはちゃんとおとなしくていいってのに、なんでお前は逃げるかね。風呂嫌いのガキかお前は!コトネのマリルみたいに雑巾のにおいがしたいのか!とシャワーを浴びせる。ついでに歯磨きも。どんどん世話焼きのおかんになってる気がするけど、気のせい、だよな?ってこら!ぶるぶるすんな!水滴がかかっちまうだろうが!あーもー寝巻替わりのジャージが・・・・・!


そうそう、母さんに連絡しないとまたおこられちまう!タオルでワニノコを拭きながら、ポケギアを鳴らした。



「もしもし、お母さん?オイラだよ、ゴールド」

「あら、今回はちゃんと連絡してきたわね。えらいわよ」

「あ、ははははは。えっと、ちゃんとキキョウシティについたよ。明日ポケモン爺さんのおつかい済ませたら、キキョウジムにでも挑戦してみようかって思ってんだ」

「こーら、ダメでしょう?」

「え?」

「ちゃーんと帰ってきてウツギ博士のおつかい済ませて、家に帰ってきてからにしなさい。人に頼まれたことはちゃんと済ませてから、自分のやりたいことをしなさい」

「そ、そりゃそうだけどさー、せっかくキキョウシティにきたのに・・・・・・」

「あら、残念。ランニングシューズ、選別に渡そうと思ってたのに、いらないのね?」

「帰ります帰ります!明日夕方くらいに帰るからさ、待っててくれよ!」

「うん、よろしい」



・・・・・・序番の門下生倒すくらいなら、いいよな。




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