第50話

「ふん、お前はギャラドスの力を過小評価している。ギャラドス、ハイドロポンプだ!」

おーっと、ブラックのギャラドス、攻撃125を犠牲にして水の特殊技最高威力のハイドロポンプの体制に入ります。ちなみにギャラドスの特攻は80。大文字や破壊光線も覚えられるため、十分やっていけたりします。威嚇というギャラドス以外にも、攻撃力を下げてくる特性もちのポケモン対策なのでしょう。龍の舞で攻撃力素早さを上げたのに涙目はよくあることです。その強さはかのチャンピオンワタルも先発で愛用しているポケモンであることを考えれば明白でしょう。レベルアップで覚えられる龍の舞からの物理水技最高威力のアクアテールでも耐えてしまうハガネールに、いい意表をつきました!ブラックのギャラドスのレベルは、どうやら41以上なのは間違いない模様です。コイキングは、教え技はとびはねる以外、技マシンは一切覚えられないです、念のため。さあ、どうくる、ミカンちゃん!

「受けて立ちます!ネールちゃん、きょりをつめるのよ!」

なんと、ミカンちゃん、まさかの突撃命令!すばやさで劣るハガネールとはいえ、急所に当たらなければ、ハイドロポンプの一撃は耐えられることを考慮しての反撃目的の指示でしょうか?ハイドロポンプの命中率は難ありですが、ロマンより安定感を求めるなら特殊型はいりません。ハガネール、あえての正面突破をめざす!ギャラドスのハイドロポンプ!豪快な水撃がハガネールを襲う!かつて人々が争うたびに、辺りの村村を焦土と化しすために現われたといわれる破壊の面影を残します!効果はばつぐんだ!だが、やはり特防が低いとはいえ一撃でやられるほどやわではなかった模様。さすがはジムリーダーのエース!だがこのままの殴りあいでは、スピード負けしてハガネールはギャラドスに負けてしまう。ミカンちゃんの指示の意図はいかに?!

「もう一度、ハイドロポンプだ!」

「させません!ネールちゃん、アイアンテールで薙ぎ倒して!」

ミカンちゃんのハガネールもレベルは41以上か?こちらは技マシンがあるためはっきりとはいえませんが、同じくらいなのは間違いない模様。おーっと、ハガネールの鋭利なダイヤモンド並みの岩石でできた尻尾が容赦なく、ハイドロポンプの体制、溜めに入っていたギャラドスの巨体を薙ぎ倒す!ギャラドスが地面に倒れこんだ!鋼技は、水、飛行複合タイプのギャラドスには二分の一。しかもアイアンテールは、タイプ一致の補正がつくとはいえ物理技!ギャラドスの特性威嚇により、ダメージはさらに軽減されることを考えれば、牽制か?!いくらギャラドスが耐久面が低いとはいえ、威嚇により思いの外耐久性は高いのを考えるとありえますが……。普通に殴ったほうがいい気も…。

おーっと、豪快にハイドロポンプがはずれたあ!ハガネール、容赦なくギャラドスに襲い掛かる!さすがにただてさえ命中率の問題をはらむハイドロポンプ、こうも妨害されてはさすがに無理だったようです。ハガネールがギャラドスに急接近!がきん、がきん、がきんとハガネールの鋭い牙を打ち鳴らす音がする!これは完全に捕食者の目だ!ミカンちゃんの指示が待たれます!それてもブラックのギャラドスが体制を立て直すのが先なのか?!果たして結果は?

「ネールちゃん、雷の牙よ!」

「なんだとっ?!負けるな、ギャラドス、もう一度ハイドロポンプだ!」

なんと、ハガネールの雷の牙が襲い掛かる!ハガネールがレベル1で覚えるため、特殊アイテムと交換で思い出せる3色牙が牙を剥く!ギャラドス、ハイドロポンプで応戦しようとするが、やはり大技は繰り出すのに時間がかかる!間に合いません!ハガネールの雷の牙が炸裂!効果はばつぐんだ!こちらは物理技でしかも威力は65と低め。いくらギャラドスの弱点、四倍ダメージの電気技とはいえさすがにつらいか?いや、違う!決まったあああ!ハガネールの牙がギャラドスの喉元に噛み付いてハイドロポンプが出せない上に、これは急所に入ったようだ!これはさすがに耐え切れません、たまらずギャラドス、倒れます。ダウン!

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ゼロー!決りました!勝者ミカンちゃんのハガネール!堂々の勝利です。ただし、運良く急所に技が決りましたが、もし通常攻撃を仕掛けていたならどうなっていたかはわかりません。またハイドロポンプの命中も大きく行方を左右しました。どちらもバトルにいたるまでの過程はともかく、いい勝負でした。ギャラリーのみなさん、拍手をお願い致します。では、これにてミカンちゃんバーサスブラックは、ミカンちゃんの勝利ということでおわりたいと思います。実況はジャッジこと、ゴールドがお送りいたしました。

拍手が巻き起こる。さすがは主人公補正がかかってるだけはあるなあ、てっきりブラックがかつと思ってたんだけど。これがあるからバトルはやめられないんだよな!バトルしたわけでもないのに、変な高揚感がある。ほてったまま、俺は息を吐いた。え?一番目立ってた?いいじゃねーかよ、バトレボ実況大好きなんだ、うん。無駄にハガネールの発音をハガッ(↑)ネ(↓)ールとかすわくれつううう、とかいったしな。あー、おもしろかった。喉が渇いたなあ、と思いながらミカンちゃんに手を挙げる。

「ふん、運任せか、つまらん。今度はただじゃおかないからな、覚悟しておけ。いくぞ、ギャラドス。俺たちはまだまだ強くならねばならん」

ギャラドスをルアーボールに戻し、面白くなさそうに踵を返そうとしたブラック。ラプラスもってんだし、貸すくらいいいんじゃね?と言ってみると、うるさい、とにらまれちまう。あ、とこえをあげたミカンちゃんは、ぱたぱたっと駆け寄ってくると、手を差し出す。は?と瞬きするブラックに、ミカンちゃんはにっこりと笑った。

「いろいろありましたけど、その、バトル、ありがとうございました!」
「ーーーっ!!やってられるか!」

ミカンちゃん、あんた天才だ!恐るべし天然!よくもまあそんな恥ずかしいこと、平然と素でできるなあ。呆気にとられていたものの、ちょっと涙でてきた。ミカンちゃん、あんたいいひとすぎるよ!みるみるうちに顔が赤くなったブラックは、乱暴に手を振り払うと駆け足で立ち去ってしまう。あーあー、耳まで赤くしやがって照れてやんの。面と向かって誉められたことないのかね、あいつ。また忘れていた笑いがこみあげてきて、俺は吹き出してしまう。いっちゃいましたね、と首をかしげるミカンちゃんがまた拍車を掛ける。耐えきれなくて俺は大笑いした。あー、長生きできそうだ。大丈夫ですか?と心配そうにいわれ、俺はこくこくとうなずきながら、ちょっと待ってくれとひいひい言いながら手で待ったの合図を送る。疎らになったフィールドにて。俺がまともに動けたのは、すっかり日が暮れた一番星が輝くころだった。間違いなく今日は奴の厄日だな。



アカリちゃんのお見舞いに、特別に部屋に入らせてもらった。おかえりなさい、リーダーと世話をしていたらしい門下生の姉ちゃんが笑う。ポケモンは、うつったら迷惑が掛かるから、といわれたので俺一人だ。やっぱり高熱に、いやな夢でも見てるのかうなされてたけど、ミカンちゃんが来たと知らされると飛び起きた。なつかれてんのなあ。しばらくしてようやく眠りについたアカリちゃんをのこし、交替した門下生が俺たちを見送る。たまには休んでくださいと追い出されてしまったミカンちゃんは、途方にくれていた。すっかり暗くなったアサギの海を灯台がてらす。俺たちは帰路についた。

「本当ですか?!今は海賊が出るから危ないですよ!」

「大丈夫、大丈夫。ガキ一人に荷物横取りなんて大人気ないことしないって。渦巻き島にちかよらなきゃいいんだろ?心配いらないよ。さっき電話したけど41番水道までは送ってくれるっておっさんいってくれたし」

海の男をなめんなだってさ。事情を説明してくれたミカンちゃんに、俺は代わりに秘伝の薬を届けようかと提案した。できたらバトルしてくれと条件つけて。さっきのバトルみてたら、やっぱりジムリーダーと戦いたくなったと告げるとミカンちゃんは困った顔をした。ミカンちゃんがアサギの灯台を離れちゃダメなのはわかってるし、水タイプの大型ポケモンを俺が貸すよりもおつかいしたほうが早いだろう。さすがに我に返ったのか、待ちますから、と止めようとしてくる。どのみち渡る気だからさ、と俺はあしらった。

しっかし、俺がアサギの灯台攻略中に大変なことになってんな、おい。今度は海賊騒動かよ、しかも大型ポケモンつきの?いやな予感がすんなあ、ロケット団め。まだ決まったわけじゃないけど、なぞの大型ポケモンの出現と海賊が連動してるし、偶然の一致にしてはなあ。

「でも、ポケモンも奪われてるみたいですし」

はい、ロケット団確定!活動が活発化しすぎだよ、おまえら!そっか、と返した俺に、説得はあきらめたのかお気をつけて、とミカンは笑う。

「そういやさ、ネールちゃんだっけ?もしかしてアカリちゃんってつけたのもミカンちゃん?」

「ううん、違うんです。アカリちゃんは、私が生まれてくるずっと前から、受け継がれてきた名前なの。ネールちゃんは、その、私たくさんハガネールもってるから」

「そっかあ。そういや、うちのポケモンもニックネーム欲しがってたっけ。却下したけど」

「え?どうしてですか?」
「オイラネーミングセンスないからさあ、ねたに走っちまうんだ。それに、なんか恥ずかしくなんだよなあ、うん。ジムとかリーグとかって、やっぱりニックネームで呼ばれんじゃねーかなってさ」

「ニックネームがあると愛着湧きますし、バトルの時相手が混乱しやすくなりますよ?姓名判断師さんなら、いろいろアドバイスくれますから、一度いってみたらどうですか?」

せっかく自分だけの名前をポケモンが欲しがってるのにつけてあげないのは、はわいそうですよとミカンちゃんはいう。ネーミングセンスがないというか、考えるのが面倒というか、真面目につけると気恥ずかしさが先に来て指がとまっちまうんだよな。

「一番はゴールドさんの考えた名前ですよ」

「そうそう、オイラは呼び捨てでいいよ。なんか変だし」

「あ、すみません。私のくせなんです。なかなか抜けないとは思うんですけど、気を付けますね」

「キモクナイとかリョウツとか、ポワグチョとかプワワとかゴキブロスとかでも?きゅりりとかしょおおーとかぱるぱるうとかでも?」

「あ、あははっ、す、素敵な名前ですね?」
笑い始めてしまった。ぜひ姓名判断師さんにつけてもらってください!と念を押された。これはひどい。あー、やっぱり真面目に商売してんだね、姓名判断師のじいさん。あやしいとかいってごめん。たしかに、と俺はうなずいた。ダブルバトルだと顕著だよな、この混乱は。

「ニックネームが見られたくないんでしたら、フレンドパスを姓名判断師さんに発行してもらうのも手ですよ?」

「フレンドパス?」

「はい。電話番号を登録したお友達にしか、モンスターボールのニックネームがみられないっていう得点があるんです。でも6体固定だから、いちいち直さなきゃダメですけど。お友達同士でなら、ニックネームやポケモンのデータがみせあえるんです。リーグとかイベントみたいな、たくさんの参加者がいる場所だとよく使われてますよ。データベース化を楽にするためだって」

なんというバトレボ!

「いいな、それ!ありがとう、ミカンちゃん。いいこと聞いた!」

「いえ、とんでもないですよ。じゃあ、シジマさんにあなたのことを連絡しておきますね。そうだ、もしものことがあれば、ご連絡ください」

「わかった。んー、そうだ。シジマさんの電話番号教えてくれねえかな?ミカンちゃんに連絡はあっちについてからできるし、無駄に不安あおるのもあれだろ?ほいほい教えていいもんじゃないだろうし」

「え?いえ、むしろ全く連絡がないのも不安なんですけど」

「あ、そりゃそうか。待たされんのもあれか。わかった。はい」

電話番号を登録して、俺たちは別れた。あー、ねみい。


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