第37話

いろちがいのポケモンが初めて導入されたのは、ゲームボーイカラーの金銀水晶時代にさかのぼる。このころはいろいろと今と仕様か違う関係で、おすがめすより個体値が強く設定されてたり、色違いはすごくいい能力をもったポケモンだった。いまはオスメスは関係ない。すべてがランダムだから、メスを捕まえたがる場合が多い気がする。俺はどっちでもいいけどな。むしろいろちがいは、大抵性格や個性が微妙なことが多いみたいだ。もちろん配色が今とは全然ちがう。たとえば、バタフリーだ。アニメでバイバイバタフリーをみたことある人ならわかると思うけど、昔のバタフリーは怒りの湖で見たひとがいるように、ピンク色だった。今は体は紫、てがピンクで、目は緑、かろうじて羽がピンクっぽい?サミットでツクシがいってたいろちがいの例だ。ピンクのバタフリーがいかにめずらしいかに花を添えてたなあ。ちなみに色違いは主要な色が黒と青が際立ってかっこいい。ギャロップは青色の炎、リザードンは黒。うらやましいぜちくしょう、めんどくさくて粘れねえとひがむ俺は赤いギャラドスしかもってない。まあ、緑色のエーフィみたくあんまり可愛くないやつもいるんだけどな、うらやましいのはかわんねえよちくしょうめ。ハートゴールドやソウルシルバーは、ダイヤモンド、パールにあったポケトレがないせいで遭遇する確率は8191分の1のままだ。





ポケトレっていうのは、歩くことで電池がたまる、ポケモンがいる草むらをゆらしてくれる機械のことだ。虫除けスプレーは忘れずに。なるべく遠くの草むらに飛び込むと同じポケモンが出やすくなり、それを連鎖という。連鎖が続くと珍しいポケモンやいろちがいが出やすくなるっていう画期的なアイテムだったのになあ。





ハートゴールドやソウルシルバーは、いろちがいと巡り合えないソフトでもある。遭遇するのはただ一つ、ひたすら草むらで野生がりをしまくることだけだ。ま、いろちがい自体は動画でいっぱい見たけどな。実際も、見たことはあんだよ?サファイヤで一度だけ。ラルトスのいろちがいのメスをな、こともあろうにミツルの捕獲イベントで!おかげで毎度毎度のバトルできらきらきら、と光るいろちがいを見るはめになったけどよ、ちくしょー。







だから、今、目の前に入る光景は俺のテンションをあげていく。早朝五時なんてなんのその!すっげえええ、ヘラクロスいっぱいいる!ガンテツさんとこで粘った日々はなんだったんだと虚しくなるくらい、だ。ツクシに教えてもらったそこは、大きなオレンの木がたっている。そこの樹液を求めてヘラクロスが集まっていた。いろちがいもまじっている光景は、壮観だった。大量発生してんじゃねーか!





ヘラクロスのいろちがいって、黒だとずっと勘違いしてたけど、えっと明るい紫?ピンクと紫の中間色だ。び、微妙だけど、黒がかったみどりよりはましだな。黒だとゴキブリだよな、あはは!ま、いいや、いろちがいつかまえりゃツクシがストライク図鑑にのせてくれるんだし。





「頼むぜ、ヨルノズク!」



俺はボールを繰り出した。



樹液に夢中なやつのなかではじっこにいるいろちがいを狙って指示を出す。いろちがいって俺からすればい珍しいしアドバンテージだけど、野生的には最悪だろうな。目立ちすぎるから天敵に食べられちまうし。アルビノの虎の特番を思い出した。やっぱり差別とかあんのかね?群れで生活してるわけではなさそうだけど。



こちらに気付いた一体がやってくる。お、いろちがい!同じポケモンでも、各地方にいる大きさ比べのおっさんがいるように微妙に大きさは違いがあるらしい。飛び掛かってきたやつはなんか小さい気がする。







「ヨルノズク、催眠術!」





もうヨルノズクの技はこれで確定だな。リフレクター、催眠術、エアスラッシュ、サイコキネシス。どうでもいいけど最近までサイコキネンシスと間違えてたぜ。



もはや十八番と化している催眠術を繰り出すヨルノズク。うし、あたった!たったまま眠りはじめてしまったヘラクロスをみて、ヨルノズクが攻撃態勢のままこちらに戻った。ありがとな、と俺はスピアーを繰り出す。





秘伝要員その2だ。フラッシュ覚えられるやついなかったから、ちょうどいい。あとはそろそろそらをとぶ要員がほしいなあ。タンバからアサギは遠いぜ。そーだ、ピジョンつかまえよう。さすがにポッポはかわいそうっつか怖いし。







スピアーがlv.10しかないヘラクロスと一番レベルがちかい。ちまちま削ろう。





「スピアー、どくばりだ!」





さすがに一撃じゃおちないよな?はらはらしつつ見守る。するどい針をとがらせてスピアーが眠りこけたヘラクロスに攻撃する。どくとねむりは重複しねえ。タイプ一致だけど威力低いし、いくら耐久力なくても大丈夫だよな?よかった。セーフセーフ!





俺は買い溜めしたハイパーボールを投げた。





















「冷静かあ、観賞用だなこりゃ」







これはひどい。とくこうが上がって素早さダウン、しかも個性はとくこうがたかいの表示。これはあれか、特殊型をつくれという暗示か?こいつ防御ほとんどない、無駄のない固体値だってのになあ。ま、いろちがいにそんだけ求めるのもあれだろう、と俺はボールを腰に据える。一度、エンジュシティにもどるか、







上りはじめた太陽に、眩しくなって目を逸らす。食事の時間を終えて、ヘラクロスたちは森の奥へと消えていった。もしかして、ヘラクロスの出現範囲は、金銀水晶なのかなあ?







「はらへったな、スピアー。いっぺんポケモンセンター戻ろうぜ」







ぶんぶん、と耳に残る羽音を立てて、スピアがニードルのついた手をあげた。知らなかったけどさ、スピアーってむし、どくでむし、ひこうじゃないんだぜ。まさかのコンパン系統。地震が当たるという。とんでんのになあ。











































「ねえねえ、そこのトレーナーさん!」











昼頃、声をかけられたのは、エンジュシティに程近いぼんぐりの密集区だった。元気なやつだなあ、と思ってた俺は振り返って絶句する。



ぜいぜい、と息を荒げているものの、水色の特徴的なツインテールに、白い帽子、は左手。今にもこぼれそうなくらいオレンの実をつめこんだリュックサックを背負い込んだ女の子。クリスじゃねーか!





「へ?」





「お願い、その木の実分けてほしいの!譲って!」





「え?あ、いや、まだまだぼんぐりはあっからさ、とったら?」





「ぼ、ぼんぐりなの?オレンじゃなくて?」





「ここの木の実は全部ぼんぐりだけど、どうかしたのか?」







そんなあ、と座り込んでしまった女の子の傍らで、ようやく追い付いたらしいマリルリがきょとんと首を傾げている。





「どうしよう、あたし、あたし、うう、っぐす」





「え、ちょ、大丈夫かあっ?!どうしたんだよ、おい!」







いきなりの遭遇でさえびっくりレベルなのに、こともあろうにクリスは泣きだしてしまった。おろおろ、とマリルリが狼狽する。







「ミルタンクがっ、アカネちゃんのミルタンクが!死んじゃうの!」





「はああっ?!」















クリスとアカネは友達らしい。ウバメの森で舞妓はんとあい、トゲピーが孵化したのをみてこれからもよろしくといわれたことで、本格的な冒険をすることになったクリスは、エンジュシティでアカネと再会した。秘伝マシンに関係がないとコガネジムをスキップしたことに気付いたアカネに怒られたクリスは、路上バトルをするはめになったらしい。アカネはブビィの逃がす場所の件でまだエンジュシティにとどまってるとマツバからはきいてたけど、サミットでみかけなかったのはこういうわけか。で、バトル中にミルタンクか倒れてしまったらしい。





「大丈夫だって、そりゃ風邪だ」





「でもっ、ジョーイさんはお薬はないっていってたわ!オレンの実をたくさん集めて煎じたのを飲ませないと死んじゃうって!」





「落ちつけって。風邪薬は風邪を治すんじゃなくて風邪の症状をおさえる薬なんだよ。もし治せるんなら、ノーベル賞もんだ。それに、オレンの実を煎じたって、それ木の実ジュースじゃねえか。風邪引いたら、からだあっためて栄養あるもん食って寝るのが一番だろ?風邪だって病気だ。こじらせたら死ぬことだってあんだよ?ジョーイさん軽い口調でいってたんだろ?いくらなんでもそんなひでえこといわねえさ。きっと旅の疲れと慣れないホテル生活のストレスに気付いてやれなかったアカネを咎めるつもりでいったんだよ」





「………そうかなあ」





「そうそう。とりあえず、オレンの実がいっぱいいるんだよな?」





「ええ。でもまだ足りないの。ポケモンセンターのひとも門下生の女の子たちも手分けしてさがしてるんだけどっ!」





「わかったわかった、そういうことなら、ほらちょっとだけだけどオレンの実やるよ。そのでっけえ木の実袋貸してくれ、オイラとってくっから」





「心当たりあるの?」





「おう!それまでに身支度整えといてくれよ。ポケモンセンターまで運んでやっから、おいらが泣かしたと思われちまう」





「ありがとう!」







俺たちは秘密の場所に引き返す。せっかく知ってるとっておきの場所を教えるのはなんかやだったのは秘密だ。





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