第18話

モンスターボールが返ってくる。受け取った俺は、早速開いた。ばしゅっという音で開かれた音とともに、出てくるのは聞きなれた声じゃなくって、より凛々しくなった重低音。かっけええ。思わずつぶやくと、満更でもないのかしぐさがかわいい。ゴツイ癖にかわいく見えてくるのは、きっと気のせいじゃない。なぜなら俺は親バカだから。現れた姿は、一回りもふた回りも大きくなって帰ってきた、手持ちの一匹。なつき度はこれでリセットか、寂しいもんだな。出会ったばかりのころに戻ってしまっているはずだから、仕切り直しってところだろう。いいかけた名前を訂正して、俺は手をだした。



「改めてよろしくな、ゴローニャ」



ごつごつした岩の手と握手する。つぶれそうだ。ちょい、と袖を引っ張ってくることがまたなくなると思うと、ちょっとさみしくなるけど、ちっとの辛抱だし、我慢我慢。ぶっちゃけこいつをストーリー中にここまで進化させたの初めてだったりするんだけど、ラッキーだ。覚える技がレベル変化なしってのはありがたいよなあ。まさか別ロムの主人公以外と通信交換できるなんて夢にも思ってなかったし、儲けもんだ。もともとライチュウやオ―ダイルのストッパー役なこいつは、あんまり進んでスキンシップを取ってくることは少ない分、そういうサインを見せたらかまってやんないと駄目だったりする。なかなか難しいんだけどな。生真面目で頭固いから、他のやつを察するとすぐに引っ込んじまうし。



改めて思うけど、お前らでけーよ。俺よりでかいやつばっかじゃねーか、畜生。肩車でもしてもらうか、上に乗っけてもらうかなあ、とアカネとミルタンクを思い出して考える。でもこいつって移動方法は転がるだから、俺つぶれるじゃねーか。相も変わらずスキンシップ過多のツートップのせいで俺は満身創痍だ。



ぐいぐい、と腕を引っ張られる。どーした?と振り返ると、何やらアイテムを持ってることに気付く。あれ、なんでもちものなんか。受け取った俺は、絶句した。




「え、ちょ、ゴロウ、マックスアップじゃん!どうしたんだよ、え?なんの風の吹きまわし?」

「取っといてくれよ。ゴールドのおかげでこっちも進化できたんだし」

「へ?」

「あはは、なんだよー、ゴールド。君、俺が送ったニョロゾのステータス見てなかったのか?」

「ニョロトノって、あああ!まさか王者のしるし?!しまった、とっときゃよかった!」

「おいおいおい!」

「へへっ、冗談だって」

「ゴールドが言うと冗談に聞こえないんだよ!」

「失礼だなあ、オイラガソンナコトスルワケナイダロー」

「棒読み!棒読み!すっごい棒読みだって、ゴールド!」



あははははっ、と俺は笑った。ただ今コガネシティのポケモンセンターにある、ワイヤレス通信のユニオンルームにいる。デパートの安売りを教えてくれるキャンプボーイの登録中に、ゴロウから電話があった。俺のポケギアにある電話帳は、思いっきり偏りを見せている。アイテム(木の実は特に貴重品だから、かかってきた日のうちに取りに戻ったりした)をくれたり、ポケモンの大量発生などの有益な情報を教えてくれたり、面白い話が聞けたりする人間に偏ってる。銀の時代からそうだったから、別に近況とか愚痴、世間話だらけのトレーナーの名前は削除に戸惑いはない。うぜえだけだし。夜中に電話とか自重しろよ、短パン小僧。電話に出た俺は、そういや対戦の約束してたっけ、と思いだすようなやつだったりする。今さらだけどな。で、今コガネだって話したら、こうして誘われたわけだ。ゲームでもこのシステム導入してくれさえすれば、こういう通信進化のポケモンももうちっと使われたんじゃねーかなあ、と思うわけで。にしてもラッキー、臨時収入だ、臨時収入。早速あとでデパート行こう。明日は午後からゲームセンターで大会だし、それまでゆっくり観光済ませたい。今、ちょうど4時を回ってる。



「あーあ、また負けた。相変わらず、強いなあゴールド」

「へっへー、オイラに勝とうなんて10年早いぜ!なんてな。でも結構危なかったぜ、正直前歯は怖かったしなあ。プレッシャー半端ないって。なあ?」



ゴローニャは深く深くうなずく。久しぶりに対戦したゴロウのコラッタは、まだジョウト制覇してないってのに強化されてラッタになってやんの。HPを問答無用で半分削る技はやっぱり怖い。しかも後続がニョロゾだしな。いつの間に捕まえたんだよおいって話だ。ゴロウいわく、戦う前から手持ちがばれてるって面白くない、と俺が言ったのをそれもそうか、と思ったらしい。え、俺そんなこといったっけ?と心の中で必死に考えたのは秘密だ。未だにさっぱり思い出せない。たぶんどうでもいい電話がいらねえから、かけてくんなって遠まわしに言うべく、適当なこと言って丸めこんだ時だな、きっと。確かに水辺付近の草むらじゃ、夜にはニョロモも出たけど、ありゃ金銀クリスタルの話であって、HGSSはどうかは知らねえ。幸いオ―ダイルで押しきれた。レベル差はやっぱ偉大だな。



「本当はちゃんと会って戦いたかったけど、仕方ないよな。相変わらず、エンジュの方の道路は変な木で道ふさがれてるし」

「そうだよなあ」



ぶっちゃけあそこは秘伝マシン回収を優先して、実際にウソっキーを見に行ったことはなかったりする。ジョウロで水かけりゃいいだけとはいえ、そんときのパーティのレベルはウソッキーより下だしきついだろうなと思ったから、放置したまんまだ。つくづく思うんだけど、せいぜいポケモン一匹にふさがれる道路ってどんだけ狭いんだって話になる。キキョウ側と自然公園側とに分かれるY字の交通の要所だろうに。



「でもさ、一本の木でふさがれる道路って狭すぎるよな」

「そうだよな。でもさ、俺も実際みたことはないんだけど、あっちまでレベル上げに出かける虫取り少年がいうには、すっげーでっかい木らしいんだよ」

「どれくらい?」

「えーっと、20メートルくらい?」

「はあ?縦が?」

「それがさ、横がっていうんだ。絶対うそだろ、って言ったら、本当だって力説されちゃて。しかもどんどんでっかくなりつつあるらしいぜ?」

「いやそれ、木じゃないって、ゴロウ」

「だよなあ」



通信対戦の弊害は、経験値が入らないことだ。前電話したときには、例のピジョットにボッコボコにされたゴロウは、近いうちにキキョウジムに再戦するらしい。がんばれー。










オ―ダイル、わかるか?と振り返ってみるけど、首を傾げられ、首を振られてしまった。だよな、そもそもこのパネルのポケモンたち、まだあったことすらねーよな、わかるわけねーか。はあ、とため息一つ。さあ、レッツ現実逃避タイム。


あー、懐かしいなあ。ハートゴールドを買ったの、発売日当日だったっけ。完徹でストーリーを終わらせて、レッドさんに勝利した時点でのプレイ時間は48時間ちょいだったなあ。手持ちはオ―ダイル、レアコイル、ヨルノズク、ガーディだけどガーディは途中でスタメン落ちしてたっけ。ダイヤから持ってきたラグラージはリーグが心配で連れてきたけど、結局いらなかったんだよな、壊滅的に電気に弱いパーティの補強役だったっけ。秘伝要員はラプラスとサンド。ストーリー中はボックスン中入れるのがかわいそうで、ラグラージ以外は一切スタメンと秘伝要員以外捕まえる気〇だったから、最後までオーキド博士には怒られてたっけなあ。銀時代は確かジョウトまではオ―ダイル以外育てなくてもクリアできたから、あとでウィンディとライチュウ、カイリュウ、バタフリーって固定メンバーだったし、ハートゴールドはかぶらないよう心がけてたんだよな。図鑑はたったの25匹。あのあとは仕事で忙しくて、ジムリーダーの電話番号をちまちま集めながら、なかなか手が出せなくっていらいらしてて、やっとこさ迎えた久々の休暇だったのになあ。さーてパーティメンバーともどもメスは固定だったから、孵化作業を始めよう、と思った矢先に気付いたら、ゴールドになってたんだもんなあ、あーくそ泣けてきた。



「ボク、そんなに難しいかな?」

「うん、すっげーむずかしいと思うよ」



現実逃避もろくにさせてくれないってか、ひでーな、おい。オ―ダイルががんばれ、と肩を叩いてくる。いくら俺でもさすがにこれは笑える自信ないわ、あはは。はあ、とため息をついて、もう一度、俺はラジオ塔の受付のお姉さんにクイズを聞いてみる。ただ今、ポケギアのラジオ機能を無料で配布しているというクイズに挑戦中。ゆっくり考えてね、とニコニコ笑う彼女はなかなかかわいいけど、口にされたクイズは耳を疑うくらい、えげつないものだった。やっぱりゲームの世界じゃねーぞ、ここ。絶対子供に解かせる気ないだろ。しかもなんだよ、一度間違えたら別の問題とか、暗記回答も不可ってか、ふざけんな。早くラジオほしいってのに、なんだよこのいじめ!聞き間違いかもしれない、と思って、耳を澄ましてみる。



「では、もう一度。第一問、ラプラス、ジュゴン、パルシェン、トドゼルガ、さて重い順に並べてみてね?」



はい、無理!すっかりお手あげ状態の俺に、オ―ダイルが残念そうに鳴く。これどこのスカイタワーだよ、無理だっつの!俺はめまいがした。ヒントは?と聞いてみるけど、だーめ、うふふ、と却下されてしまう。ちなみにスカイタワーってのは、どこぞの大手検索サイトのポケモン公式サイトにある鬼畜クイズのことだ。こういった問題が制限時間つきの問題群だってのに、普通に出てくるようなやつ。俺こういうの疎いからさっぱりわかんねえよ、えええ、明らかにレベルちがわね?本当のクイズって、二ドリーノにはメスしかいない?○か×か、ってレベルじゃなかったっけ?



俺は必死に考える。ジュゴンは一番軽そうだから固定として、パルシェンとラプラスってどっちが重いんだ?トドゼルガってなんか重そうなイメージあんなあ、ジュゴンよりは重いだろうけど、パルシェンより軽いのか?重いような気がするなあ、つか、ラプラスより重い気がする。何となく。うーん、さっぱりわかんねえ。うんうん唸っている俺を見て、あら?とお姉さんが声をかけた。



「そういえば、ボク、親御さんは一緒じゃないの?一緒に調べてもいいのよ?」

「へ?」

「ふふ、もともと親子連れ向けのイベントなの。もしかして、ボク、トレーナーのようだけど、一人でコガネに来たのかな?」

「うん、オイラ、ワカバタウンから来たトレーナーでさ、バッジを集めて回ってんだ。お母さんは家でオイラがチャンピオンになんの待ってっから、へへ、いないよ。ちなみにポケギアはあっけど、携帯電話はもってない!」

「あらら、そうなの?じゃあ、特別ね。お姉さんの携帯電話かしてあげるわ、がんばって」

「おおお!サンキュー、お姉さん!よっしゃ、オ―ダイル、がんばろうぜ!」



ほとんど考えるの俺だけどな!よかった、と抱きついてくるオ―ダイルにかみつかれないよう注意しつつ、イタイイタイ、せめて帽子とか体じゃないとこ噛んでくれ、さすがに死ぬって、痛い痛い痛い!振り払うわけにもいかず、俺は自重しろ、と指示を出す。たっぷり1時間近くかかって、俺は無事にラジオを入手することができたのだった。あーよかった、一時はどうなるかと思ったぜ、くそう。びっくりさせやがって。





そのあと、俺は公開放送をしているラジオの中を見学させてもらった。オ―ダイルみたいな大型のポケモンって大丈夫なのかと思ったけど、あっさり許可がおりて驚いたぜ。曰く、クルミちゃんがペルシアン連れてるから、問題ないらしい。そりゃそうか。さすがにゲームみたいにアオイの合言葉に飛び入り参加できるほど勇気はないから、収録現場を見せてもらうくらいだ。つかあの局長の息子さん、ぶっちゃけあんまりしゃべり上手じゃないよな、コネで入ったの丸わかりすぎて笑った。やっぱり局長室にはだめだって警備員さんに止められちまった。もうロケット団の幹部さんたちがコスプレでもしてなり済ましてんだろうなあ、と思うとちょっと笑える。さすがに黒ずくめのままだと目立つのか、ラジオ塔の周囲をそれとなく探索してみたけど、あやしい人は見かけない。



ついでに相も変わらずリニアは止まったままだ。フレンドリーショップで買ったイヤホンでラジオを聴きながら、買い物を済ませる。聞かせろとせがんでくるオ―ダイルを説き伏せる。だーもー、寝る前に嫌ってほど聞かせてやっから、引っ張るなよ、壊れるだろうが!ミラクルサイクルはやっぱりスルーしようかと迷ってたら、宣伝してくれと無理やり渡されちまった。どこにもかしこもミラクルサイクルミラクルサイクルってロゴが埋め尽くしてある。すっげー恥ずかしい。もっとまともなデザインないのかよ!仕方ないからさっさと町中走って有名にしてから、返そうと思ってのりまわした。後ろをポケモンが付いてこないってやっぱりさみしいな。いらねーわ、自転車。



ちなみに一番時間がかかったのは、自販機でのミックスオレ買いだめだったりする。「はかいこうせん」と「ふぶき」は迷ったけど、ゲームセンターで「サイコキネンシス」と「冷凍ビーム」がほしかったから泣く泣く我慢した。今までためてた換金アイテムを全部売り払って、金にものを言わせて買いました。あーしばらく贅沢はできねえなあ。









「どーだ、ヨルノズク?」

「♪」

「そっか」



地下通路の美容師の兄弟は、今日の担当は腕の立つ兄らしい。気持ち良さそうに喉を鳴らすヨルノズクは、ばささ、と整えられた羽毛をふるい落とそうとする。だめだよ、ととがめられ、おとなしくなったヨルノズクはシャンプーに進んでいく。うわあああ、すっげーあんなにおっきい図体だったくせに、ぬるま湯かけただけでここまでちっちゃくなっちまうのか、誰だお前。驚く俺に、たまにはポケモンたちの手入れもしてあげてねと指摘する兄ちゃんがイケメンで困る。椅子に座って待っている俺の横で、うらやましそうにオ―ダイルが見ていた。いや、お前がメスだから気持ちはわかるけどよ、肉眼でわかるレベルで毛が生えてるやつって俺の手持ちじゃこいつしかいない。そういう問題でもないんだよ、と兄ちゃんに言われた。へー。正直ペットのおしゃれや健康に金をかける人たちの気持ちが全く分からない俺は、こういう分野は無頓着で、さっぱりだ。だからだろうな、コンテスト?何それ美味しいの?状態で、ホウエン時代からさっぱり手をつけなかったのは。なにせ実家では雑種しか飼ったことないし、番犬扱いで室内でなんて考えたことないわけで。そもそも死んだ爺ちゃんがそういうのにうるさいたちだったから、爺ちゃん子だった俺は思いっきり影響受けて今に至るから仕方ないかもしれない。この際いろいろ教えてもらって、手の届く範囲でこいつらの身だしなみとか気をつけてみるかな、と思ったはいいけど、兄ちゃんが思いっきり乗り気で高そうな物品ばかり進めてくるからやっぱり萎えてやめた。すっかりきれいになったヨルノズク。こころなしつやがある気がする。ま、どうせすぐ路上戦闘で泥だらけになるんだけどな。今日くらいはひかえてやっか。



「そーかい?残念だな。まあ、こうして通ってくれるだけでも違うと思うよ?弟のこともよろしくね」

「はーい。あー、わかった、わかった。今度はお前やってもらおうな」



恨めしげにこちらをにらんでくるオ―ダイルをあしらって、俺達は先に進んだ。



「はあい、そこのボク!どう?今はなきロケット団のコスプレ、してみなーい?」



明らかにビジュアル的には山男なおじさんが声をかけてきた。ぎょっとして俺の後ろに下がったオ―ダイルをよそに、おっしゃー、きた!とばかりに即答する。ええっ?!と後ろで動揺が走ると同時に、やめよう、と肩を引っ張ってくる手があるけどまるっと無視する。なんでか知らないけど、ウバメノ森で写真屋のおっちゃん見かけなかったんだよな。楽しみにしてたってのに、もしかしてこっちは金銀か?と一抹の不安を覚えてたけど、そんなことはなかったぜ!だよなー、この時点ではまさかあんな面白イベントがあるとは思わなかったんだよなーと俺はにやけてしまう。



「あらん、ノリノリね!んー、じゃあこれかな?はい、どーぞ、あっちに更衣室があるから着替えてらっしゃい!」

「はーい」

「そこのポケモンちゃんはここでお留守番!」



いぎゃああ、とオ―ダイルの悲鳴が聞こえた気がしたけど、気のせいだよな。ばたん、と扉を閉めて、俺はさっさと着替える。まさかここから潜入イベントにもつれ込むとは思わなかった、といえばウソになる。いやむしろ最後までばれずに進んで、裏切り者め!といわれながら組織を壊滅して、最後の最後に正体がばれるっていうかっこいい展開を予想してただけに、最初の階段でまさかライバルに身ぐるみはがされるとは思わなかったんだよなあ。しかもそれだけでさっさと帰っちまうし。譲るとかどうでもいいよ、何しに来たんだオマエ!とDS越しに叫んだのは俺だけじゃないと信じたい。「人に迷惑かけるんじゃねー」ってお前がいうな!なにいい子ぶってんだよ、窃盗犯!あんときは笑った笑った。叫んだ涙出るまで笑い転げた。あの時ほど隣の部屋の住人に笑い声が聞こえちまうんじゃないか、イン、丑三つ時、って心配した日はなかったな。ねーよ、ねーよ、これはねーよ、ライバルキャラ崩壊しすぎだろ!「なんのことだかわかんない」っていうセリフ以上にねーよ。いじられすぎだろ、遊びすぎだろ、スタッフー!って本気で呼吸困難になったからな。あーもー駄目だ。俺の理性がもう駄目だ。思い出し笑いを通り越して、にやけが止まんねえ。この世界が金銀よりかHGSSよりで進むかは知らないけど、もしブラックの野郎があのイベントを踏襲したら最後、俺は笑死できる自信がある。





10分後、ぜいぜい言いながら出てきた俺に、そんなに着るの大変だった?とおじさんが不思議そうにつぶやいた。オ―ダイルが俺の格好を見て、唸っている。まーそう硬い顔すんなよ、記念だ記念。写真を撮るだけだ、と説明して説き伏せてもいぶかしげ。しぶしぶカメラの前に立ったオ―ダイル。あはは。





「はーい!いつでもどこでも現れる!天才写真家でーす!さ、記念に一枚撮りましょう!」



ん?どっかで聞いたことがあるような。やたらテンション高いカメラマンだな。あきらかにどこにでもいそうなポケモン大好きクラブ会員のはげなおっさんなのに。ま、いっか。さあさあ、とポケモンたちを出すように勧められるけど俺は断った。さすがにベイリーフの前でこの格好はまずいよな。オ―ダイルさえこの反応となると、懐き度は確実に下がりそうだし、せっかくのプラス補正を〇にするのももったいない。でもせっかく着替えたし。腕を組もうとすると、ロケット団なんだから、こう、もっといーって、悪い顔で!ボク、ちょっと覇気がないのよねえ、と言われた。見よう見まねでやってみる。うし、オ―ダイル、こわい顔だ!



「チーズ、サンドウィッチ!」



かしゃ。変わった掛け声だなあ。まあいいけど。現像された写真はパソコンで見られるらしい。ポケモンを今度は飾ってみない?とおっさんに誘われて、着替えた俺はたまっているアクセサリー入れでオ―ダイルに好きなようにさせてみた。これでなんとか機嫌が直ったらしいオ―ダイルをなでる。背伸びしなきゃいけねえのが屈辱だ。あーもう!かがむな、オ―ダイル!



「んー、いい写真が撮れました!これはきっと旅の思い出になりますよ!では、しーゆー!」

「って、ええっ?!」



おっさんが回転しながら消えてしまった。テレポートか?穴ぬけのひもか?穴を掘るか?今度こそぎょっとした俺達をしり目に、おねえなおっさんが笑っていた。



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