第80話

バトルフロンティアのフロントを潜り抜けた先でオレたちを待っていたのは、
凄まじい熱気に包まれたバトルアリーナを実況してる大型スクリーンが目立つ広場だった。
万国博覧会さながらのテント施設やカラフルな色合いの建物で目がちかちかしてくる。
大歓声のスタジアムで鍛え上げられたポケモンたちが全力で戦ってる。
実況中継をしてるお兄さんの横には、解説を担当している人がいて、
オレとは比べ物にならないくらいの知識量で高度な戦術と心理戦を即興で伝えている。
すげー、と圧倒されながら見上げているのはオレたちだけで、
行き交う人たちは興味もなさそうに通り過ぎていく辺り実力者ばっかりなんだろう。
たまに聞こえる話といえば、俺だったらあそこでああした、僕ならこうだよ、って
聞いてるだけでも楽しくなってくる討論とか、戦ってるポケモンたちを予想してる話。
きっと観客としてみるだけでもバトルの勉強になるんだろうなあ。
楽しみだなって横を見れば、緊張してるのか持ち物袋を握り締めてるオーダイルがいた。
少し興奮した様子で体が震えてる。
目の前で繰り広げられる大迫力に、身体を震わせてやる気を高めている相棒がいる。
こっちの顔をじっと見つめてから、やるきいっぱいの鳴き声がした。


「こいつらを送り届けたら、早速挑戦しようぜ、スイト」


色違いのポケモンたちが入ってる白いリュックを見て、オーダイルは大きく頷いた。
ぶっちゃけストーリー攻略組で挑戦するのは無謀以外の何ものでもないんだけど、
完膚なきまでに叩きのめされるのもこいつ等にはいい経験だと思うんだよ。
レベル補正によるごり押しが効かない恐怖をオーダイルたちは知らないからなあ。
オレがポケモンの育成に本腰入れ始めたのは、エメラルドのバトルフロンティアで
ぼっこぼこにされる荒療治の洗礼を受けたあとからだ。
上には上がいるってことを知るのは、上を目指すうえではとっても大事だ。
フロンティアクオリティみたいに理不尽な状況に心が折れないようにする意味でも。

フロントでもらった地図のカードをポケギアに登録すると、マップ画面が追加される。
現在地はフロントを潜り抜けた中央の広場だ。いきたい施設はたくさんあるけど、
まずフロンティアの事務所が併設されてる施設にいかないと。


「バトルタワーは……あっちか。地図見なくても分かるよな、あれだよ」


さすがはフロンティアの外からでも見える高層ビルだ。
屋上は雲の向こう側にあるのか天に届かんばかりの塔は、
流れていく雲を鏡のように映してそびえ立っている。
いつかここにいるやつらと戦いたいもんだ、とオレはオーダイルと空を仰いだ。
つーかいつまで広場で待ち人来たらずな待ちぼうけをやってればいいんだよ、と
いつまで経っても来ない同行者が来るはずのフロントゲートを見つめていたら、
大急ぎでこっちに走ってくるクリスがいた。おせーよ、クリス、とブーイングを飛ばすと、
ごめんなさーい、と息を切らせながら両手を合わせて謝ってくる。
後ろから走ってきたマリルリが忘れ物だとちょっと怒り気味でクリスにカードを差し出した。
あー、ごめんねマリルリ、ありがとう、と笑ったクリスは、新品のカードを見せてくれた。


「ごめんね、ゴールド。フレンドパス発行してたら時間かかっちゃったの。
 ここに入るには絶対に必要だからってフロントのお姉さんに止められちゃって」

「あー、なるほどな。そう言うことなら仕方ねえか。でもさ、連絡ぐらいしてくれよ」

「ごめん、ごめん。すっかり忘れてた」

「気を付けろよな」

「ごめんなさーい、きをつけまーす」


あはは、と笑いながらクリスは全然反省してない言葉を口にした。オレは目を細めた。
カメラ目線でばっちり写っている写真をみるあたり、相当気合が入っているのが分かる。


「なー、クリス。まさかとは思うけど写真映りが気に入らないからって
 何回も取り直したんじゃないだろーな?」

「…ばれた?」

「あたりまえだろ。トレーナーカードの写真映りが悪いって散々愚痴ってたじゃねーか」


あはははは、とクリスはから笑いする。ダメだこりゃ。
ゴールドってバトルフロンティアに行ったことあるの?え、ない?うそ、ホントに?!
それなのにあれだけ詳しいの?じゃあじゃあ、案内してよ、迷子になりそうだから!
って強引に頼んできたのはクリスなのにこれだ。ホントいい度胸してるぜ、この野郎。
はあ、とため息をついたオレはポケットに突っこんである財布から
フレンドパスを抜き取ると、クリスに差し出した。


「せっかくだから交換しようぜ、クリス。
ともだちコードがあれば、遠くに離れてても直接通信で対戦できるみたいだしさ」

「へー、そうなんだ。おっけい、わかったわ。またゴールドと戦いたいし、交換しましょ」


はいこれって受け取ったフレンドカードをポケギアにスラッシュして電話帳に登録すると、
オレの動作を見よう見まねでクリスが登録してくれた。
この調子でジョウトの主要キャラとのともだちコードも集めた方がいいかもしれない。
今みたいにいちいち電話でお伺いたてるより、ともだちコードで気軽にチャットしたり、
メールしたりする方がずっと楽だ。電話じゃないから時間帯の制約もないしな。
長文が送れないのが残念だけど、意外と32文字でも何とかなるぜ。


「じゃあ、準備もすんだことだし、そろそろ行きますか。
バトルタワーにある事務所に行けばいいんだってよ。行こうぜ、クリス」


オレたちはバトルタワーを目指して、雑踏の中に進むことにしたのだった。
自動ドアの先に流れてきたのは、無性に懐かしい廃人養成所のBGMだ。
耳にこびり付いているせいかテンションがあがって仕方ない。
なんか嬉しそうねってクリスに言われて、ようやくオレはにやけてるのに気が付いた。
ダメだ、重症だなオレ。だってそうだろ、仕方ないって、ここバトルフロンティアだぜ?
新規の参加者は珍しいらしく、待機しているトレーナーたちはこっちをみてる。
初めての方ですか?って受付のお姉さんが説明を始めようとするので、
オレはフロンティアパスとフレンドパスを提示して、違いますって首を振った。
どうやら事前の連絡はあったらしい。ああ、あの、ともう一人のお姉さんが反応してくれた。


「ワカバタウンからいらしたゴールド様ですね」

「そうだよ」


クリスもあわててパスを受け付けのお姉さんに渡した。


「コガネシティからお越しのクリス様ですね。
カードをお預かりいたします。受付ルームでしばらくお待ちくださいませ」


営業スマイルに促されて、オレ達は受け付けの奥の通路に通された。
警備員のおじさんと傍らにいるガーディに挨拶してから、突き当りのドアを開ける。
応接室があって、革張りのソファで待っているよう言われて、
オレたちは思い思いの場所で待つことにした。
クリスは落ち着かないのか、お茶を用意してくれるお姉さんに許可を取って、
目の前に鎮座している大型テレビを付けて、ついさっき見たバトルの続きを見始めた。
最初こそ横からちゃちゃ入れてたんだけど、集中したいからゴールドは黙ってて!
と怒られてしまい、仕方ないから別のことにでも思案を巡らせることにする。
バトルフロンティアにきたとなればやることは一つだ。オレはモンスターボールを手に取った。


ヨルノズク♂ 特性ふみん LV.54 おとなしい性格 ひるねをよくする
今の技構成はリフレクター・さいみんじゅつ・エアスラッシュ・はねやすめ。
エンジュジム対策で入れてたサイキネはこれにてお役御免てことでさっくり削除。
ホントは大枚はたいて買った技マシンを思うと名残り惜しかったんだけど、
特性のせいで眠るが使えないこいつの貴重な回復手段ってことで採用だ。
ホントはエアスラッシュの代わりにナイトヘッドを入れたいんだけど、
タマゴ技だから覚えられない。どくどくもいいけど挑発されたら終わるのはご愛嬌。
こっちの技構成丸わかりのブラックの手持ちに挑発要員がいる以上、リスクは冒せない。
モンスターボールのパロメータを見てると、特殊受け向きの能力値なのに、
無理やり物理受けにしたせいで特防が残念なことになってるのが泣けてくる。
タイプ不一致なら冷凍ビームや10万ボルトを余裕で耐えられるはずなのになあ。
ハヤトのせいだ。最初のジムでガチガチの耐久型ピジョットなんか出しやがって!
物理耐久型にする以外に、催眠術以外でどうやって突破しろっつーんだよ、ったく。
モンスターボール越しに思案顔なオレを見て、不思議そうにオーダイルが覗き込んでくる。
ちょっと静かにしてくれ、スイト、今大事な考え事してんだからって言えば、
不機嫌そうに短く鳴いた相棒は、むすっとした様子でちょっと待ってくれた。


ゴローニャ♂ 特性がんじょう LV.55 まじめな性格 考え事が多い
今の技構成はじしん・だいばくはつ・ストーンエッジ・だいもんじ
やっぱり特殊攻撃無振りなのに、火力重視の特殊技でもダメージたかが知れてるなあ、
ミカンちゃん突破したことだし、この際別の物理技に切り替えてもいいかもしれない。
もともと炎のパンチがないから泣く泣く代用品として入れてただけだしなあ、大文字。
やっぱり広範囲のタイプ一致技と攻撃力の技補正のかかった物理技で
ごり押すスタイルがあってる。というかそれしかないのは言わないお約束だ。
もったいないけどなあ、大文字。高かったのになあ、大文字。
まさかこんなに早くお役御免になっちまうとは思わなかったぜ。まあいっか。
せっかくバトルフロンティアに入れたんだから、教え技を伝授してもらわない手はない。
不意打ちとか炎のパンチとかに変更するのもありだ。
問題はバトルポイントが足りるかどうかって話で。他に強化したい奴は一杯いるしなあ。
そう思いながら残りのモンスターボールをチェックする。


ピカチュウ♂ 特性せいでんき LV.50 せっかちな性格 好奇心がつよい
今の技構成はボルテッカー・でんこうせっか・かげぶんしん・でんじは
今のところレベル補正で先制してからマヒのふりまき要因になってるのは否定できない。
戦うとなると影分身を積みまくってから、ごりごり削れるHPと相談してる状態だ。
レッドさんもピカチュウのまま使って欲しいんだったら、電気玉くれたってよかったのに。
というわけで今のところかみなりのいしが手に入り次第、ライチュウにする予定だけど、
ジョウト地方では異様に入手しにくいんだよな、進化の石。
ミニスカートのリカちゃん、早くボーイフレンドからの貢物を横流ししてくれよ!
さりげなくもらえないかって期待しながら、木曜日の夜に電話するときもあるんだけど
相変わらず音沙汰なしだ。さすがに毎週木曜日の夜に電話を掛けるとまずいしな。
彼氏持ちの女の子の長電話に付き合うこっちの身にもなってくれよ、リカちゃんめ。
やっぱりロケット団撃破後っていうフラグが立たないとだめなのかなあ。
ライチュウになったら、かわらわりは欲しいなあ。せっかくボルテッカー覚えてるし。
くっそー、なんでアンコールはタマゴ技なんだよ。
防御が壊滅的なこいつを補助できる数少ない縛り技だってのに!
もしあったらきあいパンチも検討する余地がでてくるってのにさ!
ないものねだりは仕方ないか、しばらくこいつにはこのまま頑張ってもらわないと。
今のままかわらわりや身代わり、きあいパンチを覚えさせてもぶっちゃけ微妙だ。


カポエラー♀ いかく LV.50 てれやな性格 ちからがじまん
今の技構成はとびひざげり・ねこだまし・マッハパンチ・みきり
優秀な遺伝技を持ってるあたり、育て屋さん生まれなだけはある。さすがだ。
おかげで貴重な技マシンをつかわなくてすむし、せっかくの耐久力を犠牲にする
インファイトあたりを覚えさせなきゃいけないってこともなくなって何よりだ。
反動が怖いけど能力が下がっちまうよりはずっといい。
でも、こいつを出したら間違いなく飛んでくるであろうゴーストタイプや飛行タイプに
手も足も出ない技構成なのがやばいなあ、と思ってたところにバトルフロンティアだ。
ホントに助かる。これで真っ赤なギャラドスにピカチュウをぶつけなくて済むもんな。
唯一の問題はオレがこいつらに覚えさせたい教え技がどれもこれも高いバトルポイント
ばっかり割り振られてるってことだ。フロンティアパスに表示されてる数字をみると、
間違いなく足りない。ちょっと頑張ればなんとかなるけど、やっぱたりない。
どうしよう、せっかく来たのになあ!


うんうん唸っているオレに待ちかねたのか、上の方からずしっと降りてくる影がある。
ぐぐぐ、と肩から背中にかけて抱っこをせがむような体制でくっついてきたオーダイルが、
いい加減放置プレイは嫌だから構ってくれと低いうなりをあげてきた。
おもいおもいって言いながら顔を上げれば、勝手にあご置き場にしてきた相棒は
ちょっとどいてくれた。うれしそうに尻尾がゆれている。
わかった、わかった、わかったから離れてくれよ、といってもまた考え事する気満々の
オレにお見通しの相棒は一向におんぶもどきの体制から変わってくれない。仕方ねえな。
寝るときとジム戦に挑む以外は無人のモンスターボールをオーダイルが
見えるような位置にかざして見せてやると、オレの右後ろから覗き込んでくる。


「オイラ達、バトルフロンティアにきたんだよ、スイト。
せっかくだからここでしか覚えられない技を教えてもらうのもありじゃねーかな」


オーダイルの目が輝いた。


オーダイル♀ 特性げきりゅう LV.55 やんちゃな性格 ねばりづよい。
今の技構成は高速移動・冷凍ビーム・かみくだく・なみのりだ。
序盤のハヤトを突破するために、素早さに全振り、残りは防御力、HPにっていう
意味の分からない育成を強いられたせいで、素早い耐久型になっちまってる。
どこのマリルリだよ。積み技前提の努力値ふりだよ。カスタマイズしにくいなあ。
せめてアクアジェットや剣の舞があればありだとは思うんだよ。
カイリューからの教え技限定で無けりゃ速攻で覚えさせてんのに!
その上中途半端な火力なのに、二刀流な技構成なもんだから、破壊力が足りないせいで、
思わぬところで相手から返り討ちを食らってしまうことが多くなってきた。
この旅を終えたら努力値をリセットしてからまたふり直せばいいか。
どうしたもんかと考えながら、オレはモンスターボールの情報とにらめっこする。
出来ることなら波乗りを消して、アクアテールや滝登りに切り替えていきたいけど、
秘伝技を忘れさせてくれる爺さんがカント―に行かないといないんだよなあ。
せめて火力だけでも補っていかないと。よし、決めた。この際技構成をガラッと変えるか。
でもそうするとバトルポイントがなー。


「ゴールド、さっきからぶつぶつ言ってるけどどうしたの?」

「うえ?あー、バトルポイントが足りねえなあって思ってさ」

「えっ、こんなにポイントもらえたのにまだ足りないの?」

「こんなのすぐ無くなっちまうって。どう考えても足りないんだよ。
 ここでしか教えてもらえない技の中でも、オレが欲しいのは高いやつばっかりなんだ。
 今度いつこれるか分からねえもん、どうしよっかなあ」

「ふうん、そうなんだ」

「ここでしか手に入らないアイテムもあるからなあ。うーん……あ、そうだ」

「なんかいい方法でもみつかった?」

「なあなあ、クリス。せっかくバトルフロンティアにきたんだからさ、
 一緒にどっかの施設に参加しようぜ」

「えっ、でもみんな50レベルまでいってないから参加は難しいって
教えてくれたのゴールドじゃない。」

「オイラのポケモン貸してやるからさ」

「無茶言わないでよ、まだタンバジムにも挑んでないってこと、
ゴールドも知ってるでしょ?いうこと聞いてくれないわよ」

「だってダブルバトルで参加すればポイントが多くたまるんだよ。そっちの方がいいじゃん。
大丈夫だって、オイラが教えてやるからさ。
心配すんなって。クリスはポケモンバトルのセンスあるしさ、大丈夫だよ」

「ホントにそう思う?もし負けちゃっても文句言わないでよ?」

「ポケモンのことなら大丈夫だって。レンタルバトルができる施設もあるからさ、そこ行こうぜ。
 ポケモン屋さんがやってるコンテストとほとんどルールは変わらないからさ。
 もてるポケモンが2体になって、オイラ達が一緒にバトルするだけだから」

「ねえ、ゴールド、それって全然違わない?」

「気のせい、気のせい。やってみれば分かるって、な?」

「もう、調子いいんだから。わかったわ、そんなに言うんだったらやってみる。
 普通ならこれない所にきたんだし、参加できるんならしてみたいけど…」

「なら決まったようなもんじゃねえか。用事が終わったらいこうぜ、バトルファクトリー」

「レンタルできる施設なのね?」

「おうよ」


運がよければレッドさんが戦ってるところを見れるかもしれない。
また会えるかもしれないことは、逢えた時のサプライズまで取っとくことにした。
どういう施設なの?って聞かれたから、覚えている限りのことを教えてやる。
バトルファクトリーはレンタルしたポケモンで戦う施設だから、
バトルフロンティアの中で最も運の要素が強いから、一番難易度が高い施設でもある。
最初に施設中で使用されてる流用ポケモン6体から3体選んで、戦うのがルールだ。
レベルが50のと100レベルのやつがあるけど、普通はレベル100のオープン一択。
だってレベル50のランクは技の威力とか能力が低いポケモンたちから始まる。
周回プレイすることでポケモンの強さが変化してくもんだから、1週目のオレ達では無理げーだ。
タイプの相性と能力差を覆すだけのポテンシャルが無いから、きつい。
レベル100のだったら、運がよければ最初から強力なポケモンが使えるし、
相性が悪くても技の攻勢次第で押し切れることもあるし。
今回はポイントを集めるだけだから、対戦後に相手のポケモンと交換するイベントを
繰り返した方が有利ってことくらいしかクリスには教えなかった。
繰り返すことで使えるポケモンの種類が増えていくシステムだからな。
クリスの目が輝いた。
今まで使ったことのないポケモンたちと会えるとなればドキドキするのも無理はない。
かわりにオレたちがバトルファクトリー挑戦中はお留守番が確定するオーダイルたちは、
えー、と顔を合わせて不満顔だ。
レベルが足りないマリルリはともかく、なんで自分は使ってくれないんだとオーダイルは不機嫌気味に鳴いた。
バトルフロンティア舐めんなよ、オーダイル。ここはそんなに楽な施設じゃないんだよ。


「バトルポイントがたまったら、バトルタワーに挑もうぜ、スイト。
 今のお前の技構成だとぶっちゃけ不安しかないんだよ」


1週目からフルボッコにされるのはさすがに嫌だと言えば、
直球で剛速球を分投げられたオーダイルはちょっとだけ涙目になる。
欲を言えば努力値を振り直したうえで技構成を整えてから挑みたいけど
高望みをし始めたらきりがないからやめとく。これは冒険が終わったらのお楽しみだ。
ゴールドがそこまでいうなんて、とクリスはちょっと笑みを張り付けている。


「どれだけ凄い所なの、バトルフロンティア」

「入場資格の最低条件が地区リーグ制覇なくらいだな」

「ホントに私達場違いなのね」

「ホントだよ。入れるのが奇跡レベルだぜ」


マリルリとクリスは顔を見合わせて瞬き数回、言葉を失っているのか二の句がつげない。
オーダイルもオレの言いたいことがなんとなく分かったようで、窓の向こうから見える
カラフルな施設に思いをはせていた。
そしたら、こんこんとノックするお姉さんの声がして、返事をすればお待たせいたしましたと顔を出す。


「ゴールド様、クリス様。これからお連れくださったポケモンたちを引き受けてくださる
施設の責任者でもあるロンド博士のところにご案内いたしますので、こちらへどうぞ」


はーい、と立ち上がったクリスがマリルリと一緒にお姉さんのところに駆け寄る。
オレも白いリュック片手にオーダイルと後に続いた。ロンド博士?どっかで聞いたことがあるような?

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