ニッ亀主
2015/04/29 02:33

尊敬してた先生が突然姿を消した。もう少しで免許皆伝だと微笑まれてすぐのことだった。まだ認められていないからと弟子だと名乗ることも出来ず、自分は捨てられたのだと、ひとりになったのだと目を閉じた。ある日、ほとんど誰とも関わりを持たない私の家に手紙が届いた。そこにはずっと探していた先生の筆跡で、しばらく身を隠すが案ずるなとあった。生きていた、それだけでも嬉しかったのに、私はどうしても自分の目で確かめたいと約束もなくただ毎日朝から晩まで先生との思い出の場所に通った。知らず知らずのうちに、私は強くなった。
先生は、ネズミだった。でもその視線の鋭さも穏やかな声も、私の技を全て弾き返す動きも何もかもあの先生のままだった。私はその場で崩れて泣いた。優しい手が頭を撫でてくれたのは一生忘れない。

先生は私にウサギのお面を渡した。先生は今、亀の弟子を4人もっているのだという。深くは聞けなかった。でも、日本に昔から伝わるウサギとカメの話を聞かせてくれた。私は、ウサギのようにその亀たちよりも前を進みいずれ追い付かれたときには黙って立ち去ればいいのだとそう考えた。先生は何も言わなかった。

「姉弟子って言ったら驚くかい?」
「姉、弟子?」
「そんなの聞いてないです先生!」
「お姉さん人間?僕たちのキョウダイなの?」
「どうやら僕たちの先輩みたいだよ。強そうだ」

亀たちはまだ若くて元気で無邪気だった。自分が先生の下で同じような顔をしていた頃を思い出して、少しだけないた。



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