※学パロ







 別に私は、少女漫画の主人公のような青春を送りたいと高望みするつもりもなければ、クラスのキラキラした人達と釣り合いたいなどという大逸れた願望も持ち合わせていない。平穏で平和な日常、ただそれさえあれば満足で、それ以上は何も望まない。身の丈にあわないものはかえって不幸を招くだけだし、何より地味な私が何かに奮起したところで、悪目立ちに終わるのが関の山だ。私はあくまでチキンな小市民。地味で一向に構わないから、せめて余計な反感だけは買わずに生きていきたい。

 そんな思惑をもって遠慮がちな呼吸をしてきた私は、普段の生活の中でキラキラなオーラをもった人達と積極的に関わることはしなかったし、残りの高校生活についても同様の方針で過ごすつもりだった。このやり方を、最後まで貫くつもりだったのだ。

 学校という共同体に属する以上は集団行動の必要を迫られることも少なくない。余計な波を立てず生きるには、泣いても笑っても制度には巻かれておくほかない。テンションの上がり切らない月曜日、例によって私に課せられた任務は、クラスの週番であった。

(学校休みたい)

 週番といえば、週替わりに黒板消し・日誌記録その他諸々を担う実質上のクラスの雑用係だ。担任教師の小間使いともいう。クラス全員の持ち回りだから雑務が割り当てられるのは仕方がないとして……問題は、男女二人一組というペアの組み方にある。

(ソネザキくんか……)

 私がこんなにもブルーになる原因を作り出した張本人は、同じく今週の週番を担当することになった彼にほかならない。何を隠そう彼は、私が避けて通りたかった道、まさにキラキラした人種のひとりというやつであった。

 彼の出身はジョウトであり、そのことばもジョウト由来のもので、入学当初は教室に響く抑揚のあるイントネーションに違和感を覚えたものだ。クラスに私同様の印象を受けた人達も少なからず居たと思う。しかし彼の顔・性格はいずれも憎めないと周囲に思わせるもので、おまけに成績も優秀ときた。彼の周りには自然と人が集まるようになり、私は数日と待たず彼に「そういう人種」とレッテルを貼ることになる。そこで私の観察眼は絶えた。差別と書いて省エネと読んで欲しい。先に言ったように、関わるつもりはなかったのだ。

 そんな彼と一緒に週番を組むことになると、平凡一般人の私にはひたすらに荷が重いと言わざるを得ない。別に彼が悪いというわけではないけれど、実際私はみずからの平穏な生活にさっそく危機を感じている。とは言えペアは席次順で回ってきてしまうものだし、不可抗力だから仕方ないと自分に言い聞かせはするけれど。

 結局のところ、周りからしたら「あーあ、マサキくんと週番組みたかったのになあ」ということのようだ。はた目から見れば甘く可愛らしい声も、とげとげと突き刺さるように思えてならない。口々に言った彼女らは身だしなみを整えるため恐らく手洗い場へと連れ出ったのだろう。教室を離れた途端に、そのカワイイ言葉たちが矛先を私に向けた陰口に変わることなどよく知っている。ほうら、はじまった。世間がこれを理不尽と呼んでくれないから、私は閉鎖的に生きようと決めていたのだ。


(過去形のことばがむなしい)



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