「痛むのか」
「うん……まあね」
「どれくらいだ」
「けっこう、かなり、かな」

 シルバーの形の良い眉ががひそめられる。あんまり痛くて床に転がっていたから、ちょっと引いちゃったかもしれないな。だけどいつもより甘く浅く刻まれた皺は、普段私を睨む時のような不機嫌を孕んだものではなく、それは柄にもなく彼が焦っているということを感じさせた。

 シルバーが、私を、心配してくれている。

 それはこの鈍痛に似つかわしくなく、ひどく場違いな感情かもしれないけど、私はいま確かめられた事実にひどく安心した。シルバーは確かに、他者に向ける優しい目を持っている。シルバーが来てくれてなかったらわからないままだっただろう。答え合わせの機会をもらえて良かった。こんなことを言ったら、きっと怒られてしまうだろうけど。

「なにか、手伝えることは」
「ううん、いらない。ここにいてくれたらそれが一番嬉しい」
「……そうか」

 ぎこちない手が近づいてきて、痛みでこわばった私の手を包んだ。きっとどうしたらいいのかわからないのだろう。てのひらに込められた力がぎゅっと強まる。

 痛みをのがす呼吸のさなか、ふと目に入った時計の針。今朝に飲んだ痛み止めのことを思いだす。いつのまにかあれから六時間が経っていた。薬の効果は切れてきた頃だろう。だけど、今朝と同じように棚の引き出しからそれを取り出す気にはならなかった。鈍く締め付けられるような重たい下半身。手のひらから伝わるぬるい体温。ふいに訪れたまどろみの中で、シルバーがいてくれたら痛み止めなんていらないかもしれないなあと、なんだか甘ったるいことを考えた。



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