『もしもしナマエ?ああ丁度良かった。今お前ん家行こうとしてたんだけどさ』
「う……グリーン……」
『おい大丈夫か?死にそうな声してるぞ!』
「ほんとに死ぬ……」
『わかった待ってろ今すぐ行く!』
「グリーン……待って、お願い」
『うん、どうした?』
「ナプキン買ってきて……」
▲▽
「ったく、必要なもんくらいちゃんとストックしとけよな。ほら起きれるか?」
「うう〜グリーンありがとう、助かった……!そろそろ最後の砦も崩落しそうになってたんだよ」
「生々しいこと言うなって……。ああほら、はやくいって来いよ。これでよかったのか?」
多い日昼用スリム、羽根つき。おおお、流石グリーン。何も言ってなかったのに、怒涛の二日目の、絶妙なニーズにきちんと応えてくれている。気が利く男とはまさにこのことだ。
「うん、大満足大満足!こういうのがいいってよくわかったね!」
「ああ、お前あれトイレの見えるとこに置いてんだろ。見たことあるやつ買ってきただけだよ」
見られてたのかよ。いやグリーンが来てても見えないところに収納しない私が悪いんだけどね。グリーンに見られることを「人に見られる」ことと認識していなかった。今更だけど改めて言われるとちょっと恥ずかしいです。
「ありがとう。今度からちゃんとしまっておくよ」
「まあ、別にもう慣れっこだけどな」
これがこうなるまで放っておいた私が全面的に悪い。これがカップルのあいだから恥じらいが消失する瞬間なんだとしたらさびしい気もします。
「あー、落ち着いたらその辺座ってろよ。今日は色々俺がやっとく。つらいんだろ」
「えぇ……今日のグリーンすっごくやさしい」
「買いづらいもん持ってレジに並んだ時点で割り切ってるんだよ」
「ごめん」
「彼女想いの男をレジで対応してくれた女性の店員さんは温かかったぜ」
「というと」
「鎮痛剤とノンカフェインのアップルティーも買ったからな。店員さんに微笑まれたぜ」
察してくれたんですね。同じ女としてその気持ちはわからないでもない。お客さんがグリーンだったからかもしれないけど。しかし……。
「あの店さ、二人で行ったことあるよね」
「あるな」
「私、店員に顔割れてるじゃん」
「ああ。ジムリにナプキン頼む女」
「……そこまで考えてなかったなぁ」
トキワのドラッグストアでジムリーダーと一緒に歩いていて目立たないはずがない。もちろん、グリーンと親しげな様子の私は、良くも悪くも店員さんの印象にしっかりと残っていることだろう。困ったな。恥ずかしくて買い物行けなくなっちゃったかも。あそこの店、近いし品揃えもよくて便利だったのに。
「自業自得だろ。ほら、あったかいお茶」
「あ、うんありがと」
「おう」
「ねー、グリーン。ピンチなときはまた頼むね」
「やなこった。ここで了承したらお前毎回ピンチって言い張るだろ。一生のお願いを擦り切れるまで使い倒すタイプだもんな」
「……ちぇっ」