「なまえさん!守って!俺を守ってよぉおお」
「ちょ、善逸くん!そうくっつかれるといざって言う時に戦えないんだけど」
「だってだってだって〜!!」


後輩に当たる善逸くんとの合同任務に着いた私は、鬼が出ると言う林道にやってきた。
視界が林で遮られて良くない中、善逸くんが後ろから私にくっついてきて離れないので動きづらくて仕方ない。


「なまえさんは俺より一年も早く鬼殺隊になったんでしょ?!ってことは強いんだよね!?ね?!」
「いや、私そんなに強くないよ…」
「ええええ!?いや、でも俺よりは強いでしょ!?ねえ、ねえー!!」
「ちょっと、煩い…鬼が来てもわからないでしょそんな大声出されちゃあ」
「ごめんなさいねぇ!!でも怖いの!分かって!」
「わかった、わかったから離れて…」


半ば無理やり彼を引き剥がすと、ひええんと情けない声を出して四つん這いになり私に手を伸ばしながらわなわなと震えている。
十二鬼月が来たわけでもないのにそこまで怖がれるのも凄いよ。
よく鬼殺隊になれたなと思ってしまう。


「ひっ…なまえさん…っ!」


急に真っ青で引き立った顔をした彼が私の羽織の裾を掴んだ。


「来てる、鬼が来てる!!」
「…っ!」


空気の振動する気配を感じて刀を抜いてその方向に構えた。途端にキン!と私の刀と鋭い何かが交わる。


「ひひ、美味そうな女だぁ…」
「ひええっ!爪!長っ!!」


私の刀とぶつかったのは鬼の爪のようだった。
長い爪を振り回す鬼の攻撃を及び腰になっている善逸くんを庇いながら攻撃を受け流す。
攻撃をしながら、相手の攻撃をかわしていると善逸くんと距離が空いてしまった。
彼はがくがく震えながら一応は戦おうとしているのか刀に手を伸ばしている。


「善逸くんっ!」


鬼がビビっている善逸くんに絞って向かっていく。
やばい。離れ過ぎてしまった。助けられないかもしれない。

私は呼吸を使い素早く彼の元へ走り出す。
そして思いっきり飛び跳ねて、手を伸ばして彼を庇い抱き締める。

少し間に合わず、太ももの肉が三重に切られ、じゅわりと血が溢れ出てくる嫌な感触。


「いっ…」


思わず声を漏らす。
やばい、早く立ち上がらないと。
こんな傷で立ち止まってる場合じゃない…。


「なまえ…さん…?け、怪我したの…?」
「だい、じょうぶ…善逸くんはまだ戦える?」
「え、いや…大丈夫、って…」


私の太ももに目をやる善逸くんは、顔が青から白に変わっていく。


「ぜん、いつくん…?」


がくり、と彼の身体の力が抜ける。

…え?

私は慌てて彼を抱き起こす。
ぐぅ、と鼻ちょうちんまでこさえて寝ていた。

…なんで!?

驚いていると、す、と善逸くんが立ち上がる。


「え、え?善逸くん、起きた…の?」


混乱している私を他所に、私を守るように前に立ち、彼が自身の刀に手をかけ独特の構えをする。


「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」


風が突き抜けた。
私の髪がぶわりと舞って、雷の音がした。

目にも留まらぬ速さ鬼に向かって行った彼が、カチンと刀を鞘に戻す。
と同時にごとんと鬼の頸が落ちた。


ああ、なんてことだろう。


あれだけ怖い怖いと泣き喚いていたはずの彼がこんなに強く頼もしいとは。


「ふがっ…え…?し、死んでるぅ!!?鬼、死んでるよ!!…はっ!なまえさんが!?その怪我で?!」


座り込んでいる私に飛びついてきて、わんわんと泣き出す。

「ごめんねぇええ!俺のせいでこんな怪我させて!うわあああん!!」


心配そうな瞳でぼろぼろ涙を流し私を見上げながら、彼は手拭いを取り出して私の太ももの怪我に手拭いを巻く。


「俺が弱いから…本当に、ごめんなさい、なまえさ…」
「善逸くん」


ちゅ、とその頬に口付けを落とす。
善逸くんはぱちくりと目を瞬かせた後、ぼんっと音がしそうなくらい一瞬で真っ赤になって、私の唇が触れた箇所に手をやりぱくぱくと口を開閉させる。



「私、善逸くんのこと好きになっちゃったみたい」


そんな彼にくすりと笑いながらそう告げると、彼はひええと鼻血を吹き出して倒れてしまった。

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