「電気くん、お茶どうぞ」
「おっ!悪いな」
にっと笑って人の部屋を占領して漫画を読みふける一応彼氏の電気くん。
私の部屋を漫画喫茶か何かと勘違いしているのか休みの度に遊びに来てはこうして漫画を読んで帰る。
付き合ったばかりの頃はよくご飯食べに行ったりデートプラン考えて連れ出してくれたりしてくれたんだけどな、と少し寂しく思う。
私もしかして飽きられてるのかな、なんて思ったりもする。
けれどこうして漫画読みにでも私の部屋に来てくれるのだからそんなことないはずだと自分自身を励ます。
今日は少し気合を入れて少し可愛いルームウェアを着たり、良い匂いのするボディクリームを塗ったりしてるけどあまり効果はないようだ。
がっくり、と肩を落としながら漫画を読む電気くんを背に勉強を始める。
試験まではまだ日にちがあるけど特にやることもないからだ。
苦手な数学の参考書を取り出して二次関数の応用に躓いていると、後ろで漫画を読んでいたはずの電気くんからすーすーと寝息が聞こえてきた。
振り向くとテーブルに突っ伏して電気くんが眠っていた。
「…しょうがないなあ」
私はブランケットを取り出して電気くんに掛けてあげると、もう一度机に向かって参考書に集中する。
どれだけ時間が経ったのか、キリのいいところまで終わらせるとぐいーと両腕を上げ背筋を伸ばす。
振り向くとまだ電気くんは夢の中のようで、私は電気くんの横に腰を下ろしてぷにと頬をつつく。
んん、とだけ声を漏らして電気くんはまだ起きない。
私は思わず彼の耳元に唇を寄せ、すき、と小さく呟いた。
聞こえてるわけじゃないし自分から言ったくせに恥ずかしくて一人で照れる。
「ホント?」
「…えっ!」
机に突っ伏したまま、悪戯な視線だけこちらに向ける電気くんに、聞かれたと一気に顔が熱くなる。
「で、で、電気くん、起きてたのっ?!」
「ほっぺ触ったろ。それで起きた。…んで、もっかい言ってくんね?さっきのめっちゃ嬉しいんだけど」
「わ、忘れて!恥ずかしいからっ」
「無理。なまえ可愛すぎでしょ」
ぎゅうと私ごとブランケットに包むように抱きしめる。
そしてちゅと優しくキス。
「なまえ今日可愛い格好してるし良い匂いするしさ。俺のこと誘ってんでしょ?」
「さ、誘ってなんか…」
「でも俺のこと好きだもんね?」
「うっ…」
また顔に熱が集まる。
ずるい。
電気くんは本当にずるい。
「ごめん、意地悪しすぎた?でも嬉しくてさ。いつも俺が遊びに来ても勉強ばっかしてるから俺のことどうでも良いのかと思ってて…」
「え…」
そんなことなかった。
凄く意識してたし、いつも嬉しかった。
むしろ私の方が私に興味ないんじゃないかと不安になってたくらいで。
「わ、私も不安だったよ…私の部屋に二人きりなのに電気くん漫画ばっかり読むから…」
「ごめん、それ読んでるふり。めっちゃ意識してたから!」
「ええっ…そうだったの?!」
「いっつもなまえの背中見てた。勉強してる顔も可愛いなーってニヤけてたり…って恥ずいな、コレ」
そっか、お互いにすれ違ってたんだ。
私は嬉しくて電気くんの頬にちゅとキスをする。
電気くんは目を大きく見開いて、少し頬を染めた。
「だから…可愛いすぎんだって」
「…だって…好きだから」
「俺もなまえが大好き」
二人ブランケットに包まれたまま笑い合って、見つめ合ってまたキスをした。
優しくて甘くて幸せだなあと思うと頬が緩んだ。