ねぇ、知ってる?
文化祭の後夜祭で行われるキャンプファイヤーの噂。
キャンプファイヤーの前で手を繋いで見つめ合い、愛を囁き合ったカップルは永遠に結ばれて幸せになれるんだって。


「…へえ」


私は興味なさげにクラスメイト達のキャーっという黄色い悲鳴混じりの噂話に相槌を打つ。


「えー、なまえは興味ないの?」


未だ興奮気味の彼女達がうっとりとした様子で言う。


「よくある噂だよね…信憑性のない…」
「なくないよ!去年先輩はそれで恋人ゲットして未だにラブラブなんだから!」
「うわあ…」


というか、手を繋いで見つめ合って愛を囁き合ってたらそりゃもうラブラブでしょうね。
というかキャンプファイヤーってそういう奴だったっけ。オクラホマミキサーとか踊るんじゃなかったっけ。


「なまえは我妻くんと踊らないの?」
「…踊らないよ。他の人と踊るんじゃない?」
「えーっ?」


女子達の非難の声。
私はそれからすり抜けて、ため息をついて文化祭が始まる最終準備に加わる。


今日は待ちに待った文化祭当日。


ゆるふわパーマちゃんの宣戦布告から何となく善逸とはあまり話をしていない。
善逸を見るとどうしても彼女の顔が脳裏にちらついて、あまり良い気分になれないからだ。


「… なまえ」
「カナヲ…どうしたの?」
「なまえ、元気ないから…心配」
「…!心配かけてごめんね、大丈夫だよ」


精一杯笑って見せるけど、少し顔が引きつってるような気がする。
カナヲは私の頭を優しく撫でる。


「困ってることがあるなら、力になる。言ってね」
「ありがとう、カナヲ…」


二人でにこりと笑い合う。
今度は少し自然に笑えた。
すごいなあ、親友の力って。
体の力が少しだけ抜けたのを感じる。


後10分で文化祭が始まります、と放送が告げて、私は気を引き締める。



いよいよ文化祭が始まる。







なまえと全然話をしていない。
そうこうしているうちに文化祭当日になってしまった。
俺何かしたのかな?
それとも何故か嘘をついた砂藤さんが?


…分からない。


だから聞きたいのに、なまえの雰囲気がそれを許してくれない。
長い間一緒にいたから分かる。

今は話したくないと、なまえがそういう音を出すから。
俺は宙ぶらりんのまま、何も出来ずにいる。


「善逸!」


ざらざらとポップコーンを作る機会に豆を入れていた俺は、炭治郎の声にハッとする。


「入れすぎだ、善逸」
「あ、ああ…悪い…」


クラス全員が同じTシャツを着て、周りをバタバタと忙しそうにしている。
あの伊之助は不服そうにお揃いのTシャツを着て、ポップコーンの屋台の前に看板を持って座らされている。
顔がいいので宣伝代わりだそうだ。


「なぁ炭治郎… なまえと話したか?」
「いや、最近は全然話してないな…文化祭の準備が本格化してからは昼も一緒に食べてないしな」
「そう、だよなあ…」


炭治郎が入れすぎだ豆を戻しながら、俺の様子を伺うようにチラチラと見る。
俺もまたハッとしてその作業を手伝う。


「なまえ、どうかしたのか?」
「…話してくれないんだ」
「喧嘩か?」
「いや、喧嘩とかじゃなくて…でも…拒絶されてるような…」


ふーむ、と炭治郎が唸る。
そして少しだけ眉を顰めてもしかしてと言葉を紡ぐ。


「あの…茶髪の髪ふわふわした女の子、関係あるんじゃないか?」
「え…」
「あの子のなまえに向ける匂い…何だろう、凄く嫌な匂いだったんだ。嫌悪を固めたようなそんな…あ、悪い…悪口とかのつもりではないんだが」


炭治郎はばつが悪そうにしながら、手元の作業を進める。


「いや…俺もあの子のなまえに向ける音、そんな感じな音を聞いた…」
「…そうか。でもまあ、ちゃんと話聞かないと分からないからな。善逸、午後から文化祭実行委員の方の仕事があるんだったな」
「ああ」


炭治郎はじゃあ今行ってこい、と俺の手元のポップコーンを受け取る。


「なまえに話を聞いて来い」
「え…炭治郎、だってそれじゃあ俺、全然クラスの仕事出来ないぞ?」
「良いぞ。俺が代わりにやるから。その代わりちゃんと話してこい。気になること全部聞いてくるんだ。なまえが嫌がっても」
「…!悪い、炭治郎!」


俺が屋台から駆け出すと、伊之助は「何で紋逸サボってんだよ俺にもサボらせろ!」と叫びながら走り出しそうになってる伊之助を後ろから全力で止めている炭治郎が見えた。


伊之助も悪いな!
…けどお前そこに座ってるだけじゃねーか!



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