お前なんか要らない。


親に吐き捨てられ、ある日知らない男たちが私の家にやってきた。

私の家は裕福ではなかったし、両親の仲も悪かった。
父は賭博が趣味でいつも稼いだ金を使い込んでいたし、母は自分のことにしか興味がないような人で、好きなことに金を使えないことで常に苛ついているようだった。


だから、金の掛かる子供の私は要らないのだと、父と母は言った。
私達を助ける為だと思ってとか稼いで帰ってこいだとか私に言い聞かせた。


男たちは私の顔を見るとふむと唸って幾らで買うと母に金を渡した。



その時、一人の老人がやって来た。
その子は売られるのか?幾らで?と聞いてきて、急に現れた老人に男たちは不満そうな顔をした。

幾らだ、と男たちが値段を言うと老人はその倍の金額を引き出して、私を買うと言った。


両親は大喜びで私を老人に託した。





その老人の名前は桑島 慈悟郎と言って、鬼殺隊という剣士を育てる"育手"なのだと教えられた。
既に二人育成しているが二人も三人も変わらないし、私に素質を感じたと言って私の手を握って彼の家へと連れて行かれた。


彼の家には年の近い男の子と、年上の青年がいた。
一緒に住み、剣の修行をする。
そして最終選抜で生き残り鬼殺隊になることが目標なのだと。


年上の人は少し怖かった。私ともう一人の男の子に先生がお前らに時間を割くのはもったいないとよく怒っていた。
だから彼が少し苦手だった。
彼が先に最終選抜に行った時は密かに喜んだものだった。


もう一人の男の子は女の子好きで一緒に街に出るとよく女の子を口説く。それを引っ剥がして帰宅するのには中々骨が折れた。
そして何故か私には一切口説いたりしなかった。それはそれで何だか寂しくもあった。



ある日その男の子と二人で桃のなる木の下で剣術の練習をしていた。
少し遅くなり、日が傾いてきてそろそろ帰ろうか何て話していた時。


それは現れた。


まだ日が残っていているから動きが鈍いそれは、私達を見ると嬉しそうに舌舐めずりをし、襲いかかってきた。
私は怖くて動けなかった。
男の子は、恐怖で失神していた。


もう終わりだ。
ここで死ぬんだ。


そう思ったとき、近くで雷鳴が轟いた。



「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃」



彼の呟くような声と共に目に見えない程の速さでそれの頸が落ち、砂のように崩れ去った。



私はその瞬間、雷の音と共に、恋に落ちたのだ。



01 その一瞬で
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