この時間が終わったらお昼休み。
そして毎週この時間は…。


ちらりと窓の外に目を移す。


グラウンドで善逸がサッカーをしているのが見えた。
あんなヘタレでも運動神経は良くて炭治郎、伊之助とパスを出し合いながら軽々とゴールを決める。
遠目で見ても格好良くてきゅんとしてしまう。


毎週この時間は私の至福の時なのだ。


私は昔から善逸を見つけるのが物凄く得意だ。
それは彼の髪が金色だからという単純な理由だけではもちろんなくって。


…あ、伊之助と揉めてる。
伊之助がサッカーボールを鷲掴みにした。
善逸が慌てている。
炭治郎が止めに入る。
伊之助がボールを振りかぶって見事善逸の顔面に当たってばいんと跳ねた。

…なにやってるんだか…。







「なまえ、私ちょっと炭治郎に用があるの」


お昼休みになり、お弁当を手にカナヲの席まで行くとカナヲが申し訳なさそうに言った。


「そうなんだ」
「一緒に来てくれる…?」
「うん、いいよ」


カナヲもお弁当持って炭治郎たちの教室に行く。
カナヲは何やら炭治郎に本を借りていたらしくそれを返しに行くついでにお弁当を食べる約束もしたらしい。

カナヲは炭治郎に片思いをしているけれどかなり奥手なのでお弁当を自分から誘うとは考えにくい。恐らく炭治郎が誘ったのだろう。カナヲは照れ隠しに私も連れて行くと言ったのだろうと予想した。


「炭治郎、これ…」
「ああ!どうだった?」
「うん、面白かった」


そうか、と炭治郎が嬉しそうに笑った。
お似合いの二人だなあと微笑ましくなって笑う。


「…あれ、なまえなにしてんの」
「ぜんい…って大丈夫?その顔!」


頬に湿布を貼って、鼻にティッシュを詰め込んでいる。


「大丈夫じゃない…ったく伊之助の奴本気でかったいサッカーボール投げてきやがって!!」


ぷんすかと怒る善逸に、伊之助はふふんと笑った。


「見てたよ、何かあったの?」
「見てたのかよ…伊之助の奴、自分がゴール決めたかったらしくて俺がゴール決めちゃったから理不尽にキレられたんだよ」
「なるほど…」


痛そうな頬に手を触れると、善逸はびくりと肩を揺らして顔を赤くする。


「平気?」
「っ、平気、だから!」


さっと避けられてしまった。
少し悲しいな。


「ほら机くっつけてくれ善逸、カナヲとなまえの分の椅子持ってくるから」
「…一緒に食べんの?」
「そういう約束だからな」
「ナイス炭治郎!」
「あ?いいから早く食おうぜ腹減った」
「お前は早弁してただろうが…」


カナヲは気まずそうに三人の様子を見ていた。
私たちはたまにこうして一緒にお昼を食べたり一緒に帰ったりする。

つまり仲が良い男女グループだ。

「さ、座ってくれカナヲ、なまえ」
「ありがとう、炭治郎」
「ありがと」


みんなでいただきますと手を合わせてお昼ご飯を食べる。
私の隣に座り、私とお揃いのお弁当に舌鼓を打つ善逸をちらりと横目で見ると、善逸も同じように横目で見てきて目が合った。

っ!とお互い聞こえない声が漏れて目を逸らす。
何となく、気まずい。


「そうだ、今朝は家に寄らなかっただろう?放課後寄ってくか?弟たちと遊んでやってくれないか」


炭治郎が私と善逸に話しかける。
私は善逸と目を合わせてどうする?と訴えかける。
善逸はどっちでもいいよと目で答える。


「じゃあ明日の朝ごはん用に食パンも欲しいし顔出そうか?」
「本当か?禰豆子も喜ぶぞ!」
「禰豆子ちゃん!?」


禰豆子ちゃんの名前が出た瞬間に善逸が反応する。
私は少し面白くなくて上手く焼けた卵焼きを箸でつつきながらもやもやとする。


「禰豆子ちゃん最近見かけないからなあ〜」
「忙しいみたいだ。テストも近いしな」
「そっかぁ〜禰豆子ちゃん忙しいのかぁ〜」


ニヤニヤとしながら禰豆子ちゃんのことでも考えてるのか少し上の空気味になる善逸。

胸がちくとした。
私のことなんてただの家族としか見てないんだろうな、と思うと切なくなる。


そんな様子を見ていたカナヲが私にタコさんウインナーを差し出した。
ありがとう、とお礼を言って代わりに卵焼きをあげた。


優しいな、カナヲは。


私は思わず頬が緩んで差し出してくれたタコさんウインナーをぱくと頬張った。


善逸が私のことをちらと見てまた何事もなかったかのようお弁当を食べ始める。


…何見てんの。
少しムッとしてぷいと善逸からわざと目を逸らした。



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