「美味しいお団子のお店があるの。食べに行かない?」
束の間の休日。
最近指令続きで会うことが少なかった為、明日は出来るなら一日中善逸と一緒にいたい。
でも本当に最近任務ばっかりだったからなあ…善逸疲れてるかな?
そんなことを思いながら善逸の顔を見ると、私の心配は杞憂だったようで嬉しそうな顔をして私の手を取った。
「行こう!久しぶりに二人で!」
「うっ、うん!」
何だか嬉しそうなので良かった。
明日は少しおしゃれして行こう。
▽
久しぶりの私服を手に取る。
善逸とは一緒に住んでたのでほとんどの服は見たことあるだろうから思い切って新調してしまった。
女の子らしく、今時な所謂ハイカラな格好。
善逸にもらった大切なリボンを着けて、鏡の前で一回転。
「…あら、お出掛けですかなまえさん」
ニコニコとしのぶさんがやって来る。
私の装いを見てお出掛けと判断したのか少しからかうような口調だった。
「は、はい。少し街に」
「そうですか。たまの休日ですものね。…そうだ、少し髪をいじってお化粧をしてみませんか?なまえさんならきっと映えると思うのですよ。カナヲー!」
しのぶさんは私の承諾を得る前にカナヲを呼んで化粧道具を持ってこさせた。
そしてしのぶさんとカナヲに髪をいじられ、顔に薄くお化粧を施された。
「…うん、似合ってます。見てみますか?」
「え、あ…」
カナヲがニコニコと鏡を私に向けた。
…自分じゃないみたい。
「なまえ、似合ってる」
「…ありがと、カナヲ」
私は気恥ずかしくなって視線を落とす。
カナヲとは最近少しずつ仲良くなってきて、こうしてお喋りする時間が増えた。
カナヲは前よりもたくさん喋るし、表情も豊かになった。
炭治郎には二人は少し似てるな、なんて言われたことがあった。
そういえば境遇も少し似ているようなのでカナヲには親近感が湧いている。
っていけない、もう時間だ。早く行かないと
「ありがとうございます、しのぶさん、カナヲ!行ってきますっ」
私は慌てて屋敷を飛び出した。
二人はにこやかに手を振って見送りをしてくれた。
▽
「善逸、お待たせ!」
「遅いよなまえ…」
なまえの音が近付いて来たのは気付いていたし、時間が少し遅れたことにちょっとだけむっとしていた。
しかしなまえの姿を見たらそんな気持ちは吹っ飛んでいた。
白地に赤の花模様の着物、紺の袴にブーツ。
いつもは下ろしている髪が綺麗に纏められて黄色のリボンで結ばれている。
良く見ると少し化粧をしているのか普段から可愛らしい顔が更に整えられて少し大人びている。
えーーっ!?何何何!?俺の為に可愛い格好して、お化粧までして来たってこと!?
なにそれ!可愛い!好き!!!
「…善逸?」
なまえが不安そうに俺を見上げてくいと俺の袖を軽く引っ張る。
うわその顔可愛すぎるんですけど…!
「似合ってる?」
「うっ、うん!似合ってる!すんごい可愛い!」
「っ」
なまえが恥ずかしそうにしながら俺の隣に立つ。
「いこっか?」
「…うん」
お互い少しギクシャクしながら、躊躇いがちに手を繋ぐ。
幸せだなあと思わず頬が緩んだ。
▽
しばらく歩いて街に着く。
街には思ったより人が多く栄えていた。
今日はたまたま古本市をやっていたようで、出店がたくさん出ている。二人で見ながら会話を楽しむ。
いろんなお店を他愛もない話をしながら回ると、良い時間になって来た。
「ちょっと疲れたね、私が言ってたお団子屋さん、あそこなんだ。休憩しようか」
「確かに小腹空いたな…」
二人でお団子屋さんに入る。
善逸はみたらし団子を頼み、私はあん団子を頼んだ。
頼んで長椅子に腰をかけると、すぐにお団子とお茶が運ばれて来た。
お茶は抹茶のいい香りがするし、お団子はやわやわと柔らかくあんこの甘さに合う。
「善逸、こっち食べる?」
「ん」
私が串を傾けるとはむ、と善逸が私のお団子に食いつく。
「なまえもこっち食えよ」
「うん」
同じように私に傾けてくれて善逸のお団子をいただく。
んん、みたらし団子も美味しい!
「美味しいねえ、お団子」
「そうだな」
善逸が優しく笑う。
お団子を食べ終えるとお茶をずずと啜る。
「なんかすごい穏やかだな」
「そうだね」
善逸の手が、私の手に触れる。
そしてそのまま指を絡ませる。
昔じゃあこんな風に当たり前のように触れ合えるなんて考えもしなかったな。
「じいちゃんばあちゃんになってもこうしてんだろーな」
「…ふふっ」
それはとても幸せなことだろうなと想像しただけで頬が緩んだ。
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